第6話

ようやく家に入れるようになった俺は、家の中に入るとすぐに紬の部屋へと行った。

「ん?これは......」

紬の部屋に行くと、朝置いておいたご飯とは別に、一枚の紙が置いてあった。

とりあえず俺は、その食べ終わった食器をキッチンまで持って行き、そのまま流しの方に置いといた。

「さてと......」

リビングのソファーに座り、俺はその紙を開いて読んでみた。

「お菓子持ってきて......?うん?」

その紙に書かれていたのは『お菓子持ってきて』という一文だった。

なんというか、紬にしては珍しい、お菓子の注文だった。

「お菓子ねぇ......どういうのだったらいいんだろうか」

一応戸棚の方にはお菓子はあるが......紬がどんなお菓子が好きかは分からない。

だから、あてずっぽ的な感じでスナック菓子を手に取った。

それとついでに、さっき商店街で買ってきたウサギのぬいぐるみも持って、今一度紬の部屋へと向かった。


「わっ......こ、こんなおっきいぬいぐるみどうしたの?」

「いや、さっき商店街に行ってきたから、紬が喜びそうなものを買ってこようとしたんだけど、そもそもお前が何が好きなのか分からなくてさ。それで、女の子らしいと言えば失礼だけど、女の子だったらぬいぐるみが好きかなって思って買ってきたんだ」

「あ......私のために買ってきたんだ......ふぅん......」

紬の部屋にて。

パジャマ姿の紬の体からは、少し湯気が立っているのが見えた。

さっき風呂に入ってたという事だろう。

俺はウサギのぬいぐるみを紬に見せて買ってきた経緯を説明すると、なぜかジト目で見られという始末。

「どう、かな?このぬいぐるみ。お前が、喜ぶと思って買ってきたんだけど......」

「............」

紬はしばらくの間、そのぬいぐるみを見ていた。

「......ほら、お前っていつも一人だし、寂しいかなって思って......」

「よ、余計なお世話しないでよ......べ、別にお兄ちゃんといるから寂しくないんだけど......」

またジト目で見られた。しかも、ちょっと威圧的に。嫌われてんのかな俺。

「なんか、ごめん......」

「あ!い、いや、そういうつもりじゃ......!」

紬はなにやら弁解しているようだが、俺としてはちょっと悲しくなったかな......。

「え、えと、あり......がと......」

紬は少し顔を赤くして何か言っている。

俺には全然聞こえなかった。

「ま、まあ......そのぬいぐるをもらってどう思っているかは分かんないけど、とりあえず、大事にしてくれるなら俺としては嬉しいよ」

「う、うん......!大事にするよ」

なんか、紬と仲が深まった気がするのは気のせいか?

「それじゃあ、この後お菓子食べるから、また後でね......?」

「お、おう......?」

紬はそう言って、俺を部屋から出そうと少し押してくる。

というか、お菓子食べている所を見られたくないから俺を部屋の外に出した......という訳じゃないよな多分。

とりあえず俺は、紬の言うとおり部屋の外に出て、自分の部屋で過ごす事にした。



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