第3話

「......」

「......」

紬に言われた通り部屋に入ると、第一印象はすごく綺麗に整えられていた。

若干の変な緊張もありつつ、丸いテーブルを挟んで座り数分。

一向に何も言えないままの状態で時間だけが過ぎていく。

俺としては、紬が何か言うまで待ってようと思っているのだが......。

「あ、あのさ!」

「わっ......あ、あんまりおっきな声出さないでよ......」

おっと......ちょっと興奮のあまり大きな声を出してしまいました。

「えっと......お前大丈夫か?」

いくら待っても紬が何も言わずに目を泳がせているだけなので、ここは思い切って俺が最初に話題を切り出すことにした。

「な、なにが?」

「何がって......その、お前引きこもりだろ?」

「あ......ごめんね、心配かけて」

「いやいや、そんなこと......というより、お前の元気でかわいい顔が見れて俺としてはものすごく嬉しいよ」

俺は何気なくそんなことを言うと、紬の顔が徐々に赤くなっていくのが分かった。

「か、かわいいって......そ、そんな事ない......っ」

なんかモゴモゴ言ってるので俺には全然聞こえない。

「と、とにかくっ!お兄ちゃん、これ見て!」

テーブルを軽く叩いて前のめりになる紬。

ちなみに紬の今の服装は、ちょっとレースっぽい服で、下手したら色々と見えてしまうような服装なので、この体勢はちょっと危ないかもしれない。

「え、えっと......これはなんだ?」

そんな服装はいったん忘れて、紬が取り出したアイパッドを見ると、そこにはかわいらしい女の子の絵が描いてあった。

「えへへ、これ、私が描いたの。どう......かな」

紬のイラストだと?

「すっげぇー、めちゃくちゃかわいいんだけど!」

かわいいと言いつつも、実際は紬の方がもっとかわいい。

「そ、そう......」

「というかなぜにイラストを?この引きこもり中に描いたとか?」

「ま、まあ大体はそうだけど、こ、これはお兄ちゃんに見せるために描いたんじゃないから、か、勘違いしないでよ!?」

あー......ツンデレか。

正直な所、俺はあんまりツンデレは得意ではない。

「は、はいはい......」

なので、どう返したらいいか分からず、なんか上の空のような返し方になってしまう。

「俺の為じゃないなら、なんでそんなの......」

「えっ?あ、えーと......あの......」

ああ、これは絶対俺の為に描いてくれたのかありがとうございます。

そんなことを心で思いつつも、こういう子は嫌いじゃない。

なんというか、正直になれなくてつい心にもない事を言ってしまうような感じ?

何言ってるか分からないと思うが......俺はそう言う風に感じている。

「と、とにかく、これは、い、イラストを練習しているときに描いたものだから、だ、誰のでもないというかその......」

紬の声が段々としぼんでいきながら、最後には顔を赤くして俯いてしまった。

「ま、まあ......とりあえず、ケーキ食べる?」

「うん......」

なんとかケーキで機嫌が直ればいいなぁと俺は思っていた。


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