第2話

芽衣と少し話をした後、学校の帰り際に寄ったケーキを扱っている店に行き、小さいサイズのチョコケーキを買った。

三年ほど前の妹の誕生日の時はチョコケーキだったから、多分紬はチョコが好きなのだろう。

「うしっ、帰るか」

俺は、チョコケーキを自転車のかごに入れ崩れないように気を付けながら家に帰宅した。

「ただいまー」

......。

「だよな......」

もちろん、ただいまの事に対して「おかえり」などと言った声は帰ってこない。

「はぁ......」

俺は天井を見ながらため息をつく。

「部屋でなにしてんだかな」

紬が部屋で何をしているかが少し気になってしまった。

いや、別にやましいことなんか考えてないからな!?

「我ながら何考えてるんだ」

一人でブツブツと言うのはこの辺にしておいて、俺はケーキを冷蔵庫にしまい、自分の部屋へと戻って行った。


紬と会いたい。

そうずっと願っていた。

でも、今は会えない。

何でだろう。まあ引きこもりになるくらいだから、何かあるんだろうなきっと。

せめて顔ぐらいは......見たいんだけどな。

「............」

部屋に戻ったばかりなのに俺はそんなことを考えてしまい、気づいたら紬の部屋の扉の前に立っていた。

「......紬?」

俺はそう言いながら扉を軽く叩いてみる。

部屋からは何も聞こえない。

いや、絶対この部屋には居るはずなのだが......どうしたんだろうか。

「紬、いるか?」

そしてもう一度扉を叩いてみるものの、部屋からは何も音がしない。

「まいったな......」

俺はまたため息をつき、下を向いてどうしたものかと考えてみる。


考える事数分。

「......なに?」

「へ?」

声がしたので顔を上げてみると......そこにいたのは、銀髪少女の紬だった。

「紬か?ほんとに?!」

「というか......なんで私を呼んだの?」

小さい声ながらも俺にはちゃんと聞こえる。

「え、ええと......お前の、顔が見たかったから」

「......そ......っか」

「あ、あと!今日、お前の誕生日だろ?だから、お前の好きなチョコのケーキ買ってきたんだよ食べるか?」

俺はそう言うと、紬はちよっと恥ずかしいのか俯きながらも。

「......ん......」

かすかにそう言って、ちょっと首を縦に振った。


「ね、ねぇお兄ちゃん......入って」

「......はい?」

入ってとは?

「だ、だから、部屋に入って......」

「あ、ああ、部屋、部屋ね!」

「お兄ちゃん......なんだと思ったの?」

「い、いや、なんでもないっす!」

「......ふふっ」

なんか、紬がかすかに笑った気がする。

「――っ!」

自分がそれに気づいたのか、すぐに表情をちょっと硬くしてしまった。







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