第6話 復讐実行



 その日、聖都は混乱していた。


 大昔から存在する「明日の絶望」という予言書。その本に書かれていた日に邪神が復活したからだ。


 都で暴れる邪神を見た人々は、逃げ惑うばかり。


 そんな中、一人の少女が邪神に立ちはだかった。


 彼女はその聖都では、聖なる力が一番強い少女だった。


 だから、彼女が邪神にかなわなければ誰も勝てない。


 彼女は人々の期待を一身に受けて、立ち上がった。


「そこまでです。これ以上罪もない人達を殺すのはおやめなさい!」


 凛とした声で邪神に呼びかける少女。

 

 その近くにいるのは、見目麗しい攻略対象達。


 男性達は、ヒロインを守るように周囲に警戒を向けている。


 一方少女に呼びかけられた邪神は、いや悪役令嬢はほくそ笑んでいた。


 万が一、自分の身可愛さで逃げていたのなら、計画を変更しなければならなかった。


 しかし、そうでなかった。

 自分の所に来たので、話しが早くて助かったのだった。


 これから自分は徹底的に彼らを痛めつけるのだ。


 と思っていたのだが、「待って、僕達の故郷に水を引いてくれた恩人を殺さないでっ」となぜか知らない子供が飛び出してきて、「これは何かの間違いですっ。お嬢様は本当は優しくて良い人なんです」と、町の奥様方がヒロインの前に立ちはだかって、最後に「バウバウっバウーンっ」と見違えるくらい健康体になった犬たちが私を守るように囲み始めた。


 えっと、邪魔なんですけど。

 これ、そういうシーンじゃないんですけど。


 怒りのもって行き場を失った私がぼうっとしている間に話が進行。


 説得されたヒロイン達は「そうだったんですか。私達は間違っていたんですね。分かりました。無実の女性に罪を着せてしまったのは事実です。この罪をつぐないます」と、この世界のおまわりさん的なものに連れていかれてしまった。


 えっ。それやっちゃう?


 私、なんのために邪神と一体化して、「町でこれから暴れるぞ」プレイしてたの。


 急に恥ずかしくなってきた。


 取り残された私はキレた。


「うわぁぁぁん、もうみぃぃぃんな嫌いだぁぁぁ!」





 その日、聖都を揺るがした邪神は、人々を脅した。

 けれど、脅しただけで不思議と何もせずにその場を去っていったのだった。


 その後「お主はやっばり馬鹿なのだな」と邪神に呆れられてなんてない。ないったら、ないのだ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る