第4話 私の抵抗



 邪神に取りつかれてすぐの私は、一応身の回りの人達に向けて己の現状を、訴えかけはしたのだ。


 私は呪われている、私は無実だ、と。


 けれど、喋ろうとすると口が固まったように動けなくなるし、紙か何かに書いて訴えかけようとするとミミズのような文字になってしまう。


 それでも何度も何度も努力して、ヒロインや攻略対象に邪神に影響されているのだと現状を伝えてきた。


 たった一言・二言だけだけど。訴えること自体は何度もやったのだ。


 なのに、彼等は信じてくれなかった。


 ならばもう、やる事は一つだ。


 自分を断罪した者達に、復讐するしかない。


 もしかしたら、この気持ちも邪神に誘導されたものかもしれない。


 そう思ったが、胸の内で燃え上がった復讐の火は、今さら鎮火できない。

 さらに燃え上がるだけだった。






 私は、自分を操ろうとしている邪神に身をゆだねる。


 乙女ゲームのストーリーでは、物語の最後にヒロインが邪神を討伐することになっている。


 けれど、そうはさせない。


 私が全力で邪神に手を貸すからだ。


 皮肉な事だ。


 今まで散々私の邪魔をしてくれた憎き邪神だけど、今だけは心強い協力者だった。




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