第23話 騎士団修練所にて
お茶会の途中、ジャルランがジャニーンをサンルームの外に呼び出し、何かを話していた。
戻ってきたジャルランは少しほっとした顔をしていた。
多分、自分にも落ち度があったことを伝えられたのだろう。
午後、俺とジャルランはパパ上の命令で騎士団修練所に行くことになっている。
その時にでも聞いてみることにしよう。
和解のお茶会が終わった後、騎士団修練所に呼ばれていた俺とジャルランの後ろを何故かジュディ夫人とジャニーンも一緒に付いてきた。
何で一緒に付いてくるのかジャニーンに聞いたら「ないしょ」といい笑顔で言われた。
まあ、それはそれとして、ジャルランに先程ジャニーンに謝罪できたのかを聞くと
「うん、怒鳴ってしまってごめん、て伝えられたよ」
しっかり言えたようだ。
去年はイザベル母さんに甘えたい、というのも自分で言えなかったのにな。
ジャルランも成長してるのだ、やっぱり。
騎士団修練所に着き、入り口で騎士に要件を伝えると、俺とジャルラン、ジュディ夫人とジャニーンも修練所の中に案内され、剣術等の修練で使う、闘技場のような舞台のある場所に案内された。
そこには第一騎士団長のゲオルグ=リーベルト伯爵がいた。
「皆様、お待ちしておりました。簡素な椅子ですが用意させましたのでお掛けください」
と椅子を勧められたので舞台が見える位置に着席した。
10m×10mくらいの舞台上に、フルプレートの甲冑を着込んだ人物が2人対峙していた。
一人は凄く大柄。身長は2m以上あるだろう。肩幅、胴体の幅、太もも回りなどとにかくデカい。只物ではない雰囲気を漂わせている。
手にしているロングソードも、体格に合わせて長めの物だ。
第一騎士団の修練所に入れる人物だから騎士団所属か身元がはっきりしているのだろうが、それにしてもデカい。身長1mに少し満たない俺からするともう山のようだ。人間山脈だ。
巨大なフルプレートの甲冑と対峙するもう一人のフルプレート甲冑の人物も結構大きい。
身長170~180cmくらい、体格はもう一人とは比べるべくもないが、スラっとしている。動きは機敏そうだ。
バスタードソードを持ち、動きで攪乱するタイプだろうか。
だいたいフルプレートアーマーの重さを着込んで動き回れるだけでも大したものだろう。
俺たちが着席したのを見計らって、審判を務めるのであろう、第一騎士団長のゲオルグ先生=ゲオルグ=リーベルト伯爵が舞台上の、二人のフルプレートアーマーの騎士に邪魔にならない位置に立つ。
そして
「はじめ!」
と開始の合図を告げた。
その声を合図に2人が動き出す。
細身の方は少しづつ足を使い、人間山脈を中心に時計と反対周りに動く。
人間山脈は相手の動きをジッと観察し、少しづつ自分の体の向きを修正している。
先に仕掛けたのは細身の方。突然時計回りの方向に向きを変え、人間山脈の懐に飛び込み、横薙ぎに手にしたバスタードソードを振った。
人間山脈は完全に懐に入られ、ロングソードでは防御できない、勝負あった、と思った瞬間、人間山脈の体の位置が瞬時に後ろに2m程下がって躱していた。逆に大上段にロングソードを振りかぶり、思い切り振り下ろす。
力任せに見えるが、刃筋がしっかり通っており、鋭い斬撃だ。
細身はそのまま躱すかと思いきや人間山脈の内懐に右側から飛び込み、肩から体ごとぶつけ人間山脈の体勢を崩す。
左足を前に出した姿勢で上から切り下していた人間山脈は、細身のショルダータックルで左側に体勢を崩していた。
ロングソードでの反撃もできず、このまま細身が人間山脈の上に乗り、組み敷いて止めか、と思った瞬間、人間山脈は倒れながら右足で回し蹴りを放った。
細身は回し蹴りをまともに食らい、2m程吹っ飛ぶ。
フルプレートアーマーを着込んだ人間を2m吹っ飛ばすって、どんな威力の蹴りだよ。
あんなの俺が食らったら、上半身が消えてしまうぞ。
人間山脈と細身、二人のフルプレートアーマー装着者は互いに崩れた体勢を立て直し、再び距離を取り向き合う。
互いの距離3mは一撃で仕留めるにはやや遠い。
人間山脈は両手で上段に構え、細身は両手で剣を前で持ち正眼に構えている。
互いに相手の呼吸を計るようにしばらく睨みあった二人は、ほぼ同時に動いた、様に感じた。
速過ぎて目が捉えらえなかった。
何が起こったか判らなかったが、構えていた位置から2m程前に出た位置で、人間山脈が右手一本でロングソードを水平に横薙ぎにし終わった姿勢を取っていた。
細身は、というとフルプレートに人間山脈のロングソードを食らったのであろう、人間山脈の左横に倒れていた。フルプレートアーマーの胴の部分に人間山脈のロングソードが付けたであろう斜めの打撃痕がべっこり付いていた。
「勝負あった!」
ゲオルグ先生の声が響く。
人間山脈の勝利だ。
「お父様!」
ジャニーンが人間山脈に呼びかける。
え? 人間山脈がジャニーンの父親?
人間山脈はゆっくりと兜を取る。
金髪で口髭、頬髭、顎鬚と整えられてはいるものの髭が顔を覆っている。
右の額から左の頬にかけて傷が一本。俗にいう向こう傷が男の歴戦の勇士ぶりを物語っている。
「お父様、カッコ良かったわ!」
とジャニーンがその胸に飛び込む。
フルプレートに飛び込む度胸、ジャニーンは鋼にぶつかる痛みを恐れんのか。
お父様と呼ばれた人間山脈はジャニーンを左手一本で抱き上げ、満面の笑みを浮かべた。
「おお、我が愛しき娘よ! 父の勇姿、しかと見てくれておったか」
そしてジュディ夫人にも向き直り
「我が最愛の妻よ、お前の夫はどうであった! 惚れ直したであろう!」
と声をあげた。
良く響く大きな声だ。
ジュディ夫人はやれやれ、といった表情だったが、
「ええ、今日もまた改めて貴方を好きになりましたわ」
と、傍で聞くとのろけているとしか取れない言葉を夫にかけた。
倒れた細身の方も膝を付いて立ち上がり、ゆっくり兜を脱いだ。
「「父上!」」
兜の下からは我らのプリンス然とした父、ダニエルの顔が出てきた。
ジャルランは舞台の上のパパ上に駆け寄る。
「ガリウス~、息子の前では儂に花を持たせてくれても良いのではないか~」
父上の悔しさを滲ませた声が響く。
「ダニエル、何を甘っちょろいことを抜かして居るのだ! それに儂だって愛する妻と娘の前で無様を晒す訳にはいかんからな!」
人間山脈、ガリウス=ハールディーズ公爵はそう言って抱き上げた娘のジャニーンに、その髭面をこすりつける。
「お父様のお鬚、くすぐったーい」
ジャニーンは無邪気に喜んでいる。
「父上、お怪我はありませんか」
ジャルランがダニエルパパ上を心配し声をかける。
「ああ、大丈夫だ。フルプレートの修理代は高く付きそうだがなハッ ハッ ハッ」
俺もダニエルパパ上の元に行く。
「父上、カッコ良かったです」
そう声をかける。実際、フルプレートアーマーを装着したままあれだけ動き回り、攪乱し続けるスピードと体力は、我が父ながら驚嘆した。
普段の父上からは想像できない、雄々しいと言うべき姿だった。
「そうか、ジョアン。今日は負けてしまったが、今度は儂がガリウスを打ち倒すところを見せてやるからな。お前が儂を語る時に、強くて頼れる父、と言わせてくれるわ」
そう言ってニカッと笑うパパ上は、無邪気そのものだ。
男って、幾つになってもやっぱり強さに憧れるんだな。
俺はどうだろう。
んー。出来れば見る専で、解説者とかがいいかな。
「ガリウス、儂は負けてしまったが、奥方に伝言を頼んだ件、考えてくれたか?」
パパ上がハールディーズ公爵にそう尋ねる。
「まったくダニエル、せっかく妻と娘との会話を楽しんでいるというのに、無粋なことを」
ハールディーズ公爵はジャニーンを左腕で抱き上げたままこちらに向き直る。
「その二人がお前の息子なのか?」
ハールディーズ公爵がぞんざいな言葉遣いで、俺たちのことを聞く。
その言葉にジャルランは少し気を悪くしているのだろうか。
パパ上が答える前に口を開く。
「人に名を尋ねる前に、ご自分から名乗られたらいかがですか? 公爵と言えど、王の前で無礼ではありませんか」
珍しく、しっかりと自分から注意する。
おお、凄いぞジャルラン。
「私は国王ダニエル=ニールセンの息子、ジョアン=ニールセンと言います。隣りで今、公爵に注意を与えたのは私の弟のジャルラン=ニールセンです」
俺はとりあえず自分の名と弟の名を名乗る。
二人ともけんか腰になってもな、との考えもあるが、あまり俺には王家のプライドがないとも言える。
「これは失礼いたしました、ジョアン殿下にジャルラン殿下。私はガリウス=ハールディーズ。公爵位をニールセン王家から賜っております。今後ともよしなに願います」
「ハールディーズ公爵。失礼ながら先程の言葉遣いはどうしたことでしょうか」
ジャルランは気持ちが収まらないのか、さらにハールディーズ公爵に問う。
「よい。ジョアン、ジャルラン、儂とガリウスは本日の勝負で、ガリウスが勝ったらこの舞台上に限り対等の口利きをしても良い、という賭けをしたのだ。ガリウスは負けた場合、何でも一つ儂の言うことを聞く、という対価を賭けての上でだ。
勝負の上でのことだ。この舞台上では許す。そうだな、ガリウス」
「国王にタメ口とは、どんな対価を払っても誰もが一度は叶えたいものよ。今日は儂が勝った。存分に堪能させてもらうぞ、ダニエル」
そう言ってニヤッと笑うガリウス=ハールディーズ公爵。
見ようによってはパパ上と親友のようにも見える。
「ガリウス、先程の答えを聞いておらん。どうなのだ?」
パパ上は重ねてハールディーズ公爵に訊ねた。
「すまんが断らせてもらうぞ。儂に剣術の指導者など務まらん」
ハールディーズ公爵はそう答えた。
「ふう、やはりその答えか。今日の勝負に勝って無理にでもやらせてくれようと思っていたのだがな、仕方がない」
パパ上は心底残念そうにそう言った。
「父上、もしかして私たちの剣術の先生をハールディーズ公爵にお願いしようとしていたのですか?」
「ああ、そうだ。見ての通りガリウスは強い。この国で1,2を争う強さだ。そんなガリウスに教えて貰えばお前たちにとっても実りが多いと思ったのだがな、まったくこいつは偏屈な男よ」
「おいおいダニエル、偏屈は言い過ぎだろう。単純に都会の水が合わない、それだけよ。それにちゃーんとこうやってお前の呼び出しには応じているではないか」
「まったく、よく言う。お前は儂に勝負で勝ち、タメ口を叩きたいだけではないか」
「はははは、ダニエル、流石に英邁な王という評判を取る男だ。良く分かっておるなあ」
「今日のところは言わせておいてやるわ。次は必ず私が勝つからな。
ではガリウス、今日の褒美はこれまでだ。私は一足先に着替えさせてもらうぞ」
パパ上はそう言うと舞台を降り、着替えるために控室に向かった。
「少々言い過ぎたかな。まったくもう少し堪能させてくれてもバチは当たらんだろうに」
ハールディーズ公爵はそう言うとジャニーンを下ろし、自身も舞台を降りた。
「あの、すみません公爵、お尋ねしてもよろしいでしょうか」
俺はこの公爵に興味がわき、話しかけた。
ハールディーズ公爵も控室に戻ろうとしていたが、ん? といった様子でこちらを振り向く。
「試合後、引き留めてしまう無礼をお許しください。先程、剣の指導者が務められないと公爵は言われておりましたが、理由をお聞きしたいのです。
公爵の立派な体格が強さの秘訣、そう思ってしまいがちですが、公爵の剣の本質は技術の確かさにある、と私には見えました。
勝負を決めた斬撃、正直に言えば目で追いきれませんでしたが、単純に上段の構えから片手で右に切り払っただけではないと思えたのです。
それだけの技術をお持ちなのに何故指導に向いていないと言われるのか、不思議なのです」
「ジョアン殿下、でよろしかったですな?」
「はい、ハールディーズ公爵」
「私が剣の指導者に向かない理由ですが、私が忙しい、というのが一つ。
これでも公爵でしてな、私の分限以上の領地を預からせていただいております。我が愛しの妻、ジュディが大半を切り盛りしてくれているとは言え、領主の私もなかなかに忙しいのです。
そしてもう一つ、私の剣を褒めて下さった殿下には申し訳ないのですが、私の剣は我流。戦場や日々の賊の討伐などの中で、己自身が磨いたものです。故に技術を言語化してお伝えする術を私は持ちえないのです」
「わかりました。また父上とハールディーズ公爵が手合わせする時に、見て覚えられるように私も精進いたします」
ハールディーズ公爵はフッと笑みを浮かべると、こう言った。
「ジョアン殿下、最後の決着の時の私の剣の動きと行ったことを少しお伝えいたしましょう。
あの時私は上段に構えて陛下の私の胴への攻撃を誘いました。
陛下はまんまと引っかかった、と見せかけて私の攻撃を誘い、斬り下ろした私の剣を避け、私の胴を薙ぎ払おうとしたのです。
私は地面に着いた裏刃を片手で返し、陛下を薙ぎ払いました。
実際は私の胴にも陛下の刃は届いております。
フルプレートを付けた者同士の闘いでしたから私は立っていられましたが、実戦であれば相打ちでしたな」
そう言って自らが装着しているフルプレートアーマーの左胴を見せる。
確かに剣戟で付いたと思われる傷が出来ている。
「私のフルプレートアーマーも修理代が嵩みますよ、ジュディには後でこってり絞られますな、ははははは」
そう言って豪快に笑う。
この一族は気持ちのいい心根の人が多いな。
この人の娘だからジャニーンもすっきりした性格になったのだろう。
そして珍しくジュディ夫人が顔を赤らめてそっぽを向いている。
夫婦仲も円満のようで。
「ですが、勝負は勝負。最後に立っていた者が勝ち、と言うルールでしたから私は褒美を堪能させていただきました。ジャルラン殿下でしたな? 気分を害してしまったようで申し訳なく思います」
ジャルランに対しても頭を下げる。
「いえ、勝負の上での取り決めなのであれば、私も何も知らず口を挟み申し訳ありませんでした」
ジャルランもそう返す。
おいおい、お前の成長っぷりにはお兄ちゃん涙が出るぞ。
昨日までの元気がない様子は何だったんだ。
「それで、ジョアン殿下は目で追えなかったと言われましたが、あれは陛下も私も『瞬足』という技術を使っていたからです。『瞬足』は自身の身体能力を瞬時に高め、常では考えられない速さの動きを行うもの。初見で捉えられたとあっては流石に寂しくなります」
「その『瞬足』はやはり剣の修行を積むことで使えるようになる技術なのですか」
「多くはそうでしょうな。ただし人間は貴族や教会の騎士でないと使えません。獣人の多くは元々備わっているのか、修練等しなくても使えますな。我が娘のジャニーンも齢5歳で何故か使えます。おかげで騎士になりたいなどと言いだして大変です」
「だってだって、せっかく私が授かった力ですもの、お父様とお兄様のために役立てたいんです」
ジャニーンがそう言って駄々をこねる。
あー、ほっこりするんじゃー。
しかしあれだ、かくれんぼでルム川の城壁付近までジャニーンが逃げれたのは瞬足を使ったんだろうな。
何たる能力の無駄遣い。
「ジャニーン、まだお前は幼い。今から自分の将来をそう決めてしまっては勿体ない。ジュディの教えをしっかり受けた上で、お前がなおもそう思うのであれば考えても良いが、まだ早い」
「もうー、お父様はいつもそれなんだもの」
頬をぷっくり膨らませてジャニーンが拗ねる。
あー、ほっこりするんじゃー。
「ということでジョアン殿下。それを頭に入れてまた私と陛下が試合することがあれば見て学んで下さい。それでは私たちもこの辺で失礼します」
そう言うとハールディーズ公爵はジュディ夫人、ジャニーンと一緒に控室に戻っていった。
入れ替わるようにパパ上が着替えて戻ってきた。
あのフルプレートアーマーは騎士団の控室に置いているのか、それとも修理に出したのか、従者たちはそれらしき荷物を持っていない。
「お前たち、ガリウスと何か話していたのか? あ奴が珍しいことを言っていたぞ。
もしお前たちにその気があれば、公爵領に来た時に剣を見てやっても良い、とな。
まあお前たちはまだ王宮内で学ばねばならんことがあるが。いつか公爵領を尋ねるのも良いかも知れんな」
「ハールディーズ公爵がそのようなことを? 先程話をお聞きした時はそんなことは一言も言われておりませんでしたが」
何か気が変わるようなことでもあったか? ジャニーンに爆甘えされたとか。
「父上、先程ハールディーズ公爵にお聞きしましたが、紙一重の勝負だったのですね」
ジャルランが目を輝かせて言う。
「何だ、ガリウスの奴、そんなことを言っていたのか。まあ確かに紙一重と言えば紙一重だが、負けは負けだ。
ところでお前たち、剣に興味は持ったか?」
「はい、父上! 私も父上のように華麗に剣を振るってみたいです!」
ジャルランは積極的だ。初めて目の当たりにした父の戦う姿に憧れを持ったのかも知れない。
俺は……そんなに自分では剣を振るいたくはないかな。
剣技の試合を見るのは興味深いが、自分がやるとなると、自信がない。
「私は正直言うと自分に剣の才は無いように思います」
正直にそう言った。
「フーム、見事に分かれたな。とはいえ、王家に生まれたからには剣は己の身を守る手段、必ず学んでもらう。
ガリウスの奴が引き受けたなら、二人ともガリウスに教えを受けて貰おうと思っていたのだがな。
あ奴が断ったから、お前たちには別々の師に付いてもらうこととする。
ジョアン、お前は馬術と同様にゲオルグに教えを受けよ。ゲオルグも第一騎士団長の職にあり忙しいが、お前のために時間を空けられるように計らっておく。
ジャルラン、お前は第1騎士団副団長のエルウィン=レーマン伯爵に付き教えを受けよ。エルウィンはお前の乳母だったグレーテの夫でもある。共に学ぶものとしてエルウィンの子ラルフと一緒に精進せよ」
おや、ということはジャルランに乳兄弟が付くことになるんだな。
「良かったじゃないかジャルラン。一緒に学ぶ者がいた方がお互いに色々と教えあったりして楽しく学べるぞ」
「ジョアンの言う通りだ。ジャルラン、ラルフは剣以外の勉学でもお前と一緒に学んでもらう。ラルフと共にお互い切磋琢磨し励むのだぞ。
今すぐという訳にはいかぬが、年が明けたらそのような形ですすめていくこととする」
「でも僕だけ一緒に学ぶ子が付くのは……お兄ちゃんはどうなるの」
「私は今まで通りさ。時間が空いたらジャルランに遊んでもらうよ。ジャルラン、ラルフって子と仲良くなって私にも紹介しておくれよ。頼むよ」
「うん……わかったよお兄ちゃん。ラルフって子も一緒に遊べるように僕がお兄ちゃんに紹介できるようにするよ」
「ジョアン、ゲオルグには少々厳しく教えるように伝えておくからな。ゆめゆめ手が抜けるなどと思わずに、しっかり精進するのだぞ」
「はい、父上」
あちゃー、パパ上にしっかり釘を刺されてしまった。
ゲオルグ先生も、気心が知れているからといって手を抜くのを許すような人ではないしな。
ジャルランの心配をしている場合ではないかも知れないな。
来年になって欲しくないなーと俺は思った。
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