Ⅳ章 塩漬け林檎ノ踊り
-場所は変わり、さんきゅうの部屋。
弐っちゃんとリアルソルトとジョナゴールドがいる。
ソルト 「…」
弐っちゃん「どうしたの?塩分ちゃん」
ソルト 「…あ~」
弐っちゃん「怒ってるの?」
ジョナ 「あいつが不機嫌なのはいつもだろ」
ソルト 「うるさいわね」
弐っちゃん「どうしたの?」
ソルト 「分からないの?あのでぶったおっさんの事よ」
弐っちゃん「でぶった?」
ジョナ 「所長のことか?」
ソルト 「あいつ本当に気に入らないわね。ぶっ殺してやりたいわ」
ジョナ 「まぁ、落ち着けよ」
ソルト 「もう十分落ち着いてやったわよ。ねぇ、そろそろ決心してくれてもいい
んじゃないの?」
弐っちゃん「ええ。もう?」
ソルト 「ようやくよ」
弐っちゃん「でもぅ…」
ジョナ 「前の施設の友達にはちゃんとお別れしてきたんだろ?」
弐っちゃん「そうなんだけどぉ…」
ジョナ 「何なら俺の力を使って改めてお別れを言うかい?」
ソルト 「よしなさいよ。ただの幻にお別れなんて言っても意味ないでしょ」
ジョナ 「おい。ただの幻なんて言い方はないだろ」
ソルト 「幻はどこまで行ってもただの幻よ」
弐っちゃん「まぁまぁ、二人とも」
-そこに、さんきゅうが入ってくる。
照明が変わる。
弐っちゃん「あ!さんきゅうさんおかえり」
さんきゅう「ただいま。弐っちゃん、君に紹介したい人がいるんだ」
弐っちゃん「え?誰?」
さんきゅう「どうぞ。せんせい」
-大音量で音楽を流すラジカセを持ってせんせいが入ってくる。
せんせい 「こんにちは~。あなたが新しい入居者さんね~よろしく~。うん?どう
したの~?」
さんきゅう「せんせい!これこれ」
せんせい 「ああ!ごめんごめん」
-ラジカセを切るせんせい。
弐っちゃん「さんきゅうさん。この人どこのどちら様?」
せんせい 「さんきゅうさん?」
さんきゅう「そう呼ばれてるんです。紹介するよ。この施設の医療担当の人で、皆か
らはせんせいって愛称で呼ばれてるんだ。せんせい、新しく入った弐っち
ゃんです」
せんせい 「よろしく。弐っちゃん」
弐っちゃん「よろしく。せんせいさん」
-後ろで退屈そうにしているリアルソルトとジョナゴールド。
弐っちゃん「もう~二人とも失礼だよ。ちゃんと挨拶しないと」
せんせい 「二人?」
弐っちゃん「はい。こっちが塩分ちゃんで、こっちが青林檎太郎君っていいます」
せんせい 「ふ~ん。おもしろい名前ね」
弐っちゃん「私が付けたの」
せんせい 「いいセンスしてんじゃないの」
弐っちゃん「それほどでも~」
さんきゅう「ちょ、ちょっとせんせい」
せんせい 「何?」
さんきゅう「あの、本当にいるんですか?僕には見えないんですけど」
せんせい 「もちろん。私にも見えないわよ。でも、彼女には見えてるんでしょう
ね」
弐っちゃん「ところでせんせい。それって何?」
-せんせいの持つラジカセを指す弐っちゃん。
せんせい 「これ?ダンス用のラジカセよ」
弐っちゃん「ダンス?!」
さんきゅう「せんせい。ダンスすごくうまいんだよ」
せんせい 「そういうあなただっていいセンスしてるじゃないの。私がいない間も
ちゃんとやってた?」
さんきゅう「ああ、最近はちょっと」
弐っちゃん「はい!せんせい!あたしもダンスしたい!」
せんせい 「あら。あなたダンス好きなの?」
弐っちゃん「好き好き!大好き!」
せんせい 「なら断る理由はないわね。早速やろうかしら」
さんきゅう「ちょ、いいんですか?所長さんに知られたりしたら…」
せんせい 「ま、そんときはそんときよ」
弐っちゃん「ダンスダンスダンス!!!」
せんせい 「待ちきれないみたいね。じゃあ、始めましょうか」
-所長とバジル・ペッパー・看守が入ってくる。
所 長 「それで、一体何を始めようというのですかな?」
せんせい 「あ…」
所 長 「先生。長期休暇から戻ったらいきなりこれですか。収容者に退廃音楽を
聞かすなと何度言ったらわかるんですか。それに踊ってる暇があるのな
ら、溜まった仕事を済ませたらどうですか?」
せんせい 「すいません。久々にみんなに会えたんでつい…」
所 長 「あなたという人はもう少し、社会に生きる者として自制を覚えたほうが
いいですな。そんなことでは、ここの連中と何ら変わらない」
さんきゅう「それはどういう意味ですか?」
所 長 「言葉通りだが…」
さんきゅう「そんなこと…」
せんせい 「落ち着いて。所長の言う通りです。身勝手な行為を行い申し訳ありませ
んでした」
さんきゅう「せんせい…」
所 長 「まあいいでしょう。弐番、忘れていないだろうな。まもなく作業の時間
だ」
弐っちゃん「あれぇ?もうそんな時間?」
所 長 「おい。連れて行け」
看 守 「え…」
所 長 「何をしている?お前に言ったんだ。早くしないか」
看 守 「は、はい」
弐っちゃん「あ、久しぶり」
-そそくさと出て行く看守。
弐っちゃん「ああ、待ってよ」
-看守を追いかける弐っちゃん。
リアルソルト・ジョナゴールドも付いていく。
さんきゅう「僕も作業でしたね。一人で行けますんで」
所 長 「待て。お前の作業はなしだ」
さんきゅう「何でですか?」
所 長 「嬉しくないのか?実はお前と話がしたいという人がいてな」
さんきゅう「誰ですか?」
所 長 「お前も前に会っただろう?私の新しい秘書だ」
さんきゅう「あの人ですか?」
所 長 「収容者などと話がしたいとは、普通は思わんがな」
さんきゅう「対等に話す事は出来ますよ」
所 長 「対等だと?そんなもの、貴様らと我々の間には存在しない。身の程をわ
きまえたらどうだ?生活態度の良さを評価して、私物の所持を許可してや
ったことを忘れたのか?大体その本は何なんだ?何だったらここで審査を
やり直してもいいんだぞ」
せんせい 「所長」
所 長 「…おい、連れて行け」
-看守に連れられ部屋を出て行くさんきゅう。
せんせい 「所長。ハックはどうしたんですか?」
所 長 「ハック?ああ。あいつなら懲罰房ですよ。懲りずに暴れだしたもんで
ね。では、私も仕事があるので」
せんせい 「待って下さい」
所 長 「何ですか?」
せんせい 「健康診断は受けましたか?」
所 長 「またその話ですか。別に私はどこも悪くはありませんよ。それに、あな
たと違って私は休暇も取れない程多忙なのでね。呑気に診察してる暇など
ありません。では」
-部屋を出て行く所長。
暗転する舞台。
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