Ⅱ章 参ト弐ノ出会い
-照明明転
場所は、収容所内の庭園。弐っちゃんがいる。
そこにさんきゅうがやって来る。
弐っちゃん「こんにちは」
さんきゅう「え?」
弐っちゃん「まずは、あいさつです。こんにちは。…どうしたの?」
さんきゅう「いや、どうしたと言われても…」
弐っちゃん「じゃあ、おはようございます?」
さんきゅう「いや、そうでなくて…」
弐っちゃん「こんばんは?」
さんきゅう「それも違う」
弐っちゃん「おやすみ?」
さんきゅう「寝ないし」
弐っちゃん「じゃあ何?」
さんきゅう「いや、とりあえずこんにちはでいいの、こんにちはで」
弐っちゃん「じゃあ、こんにちは!」
さんきゅう「こ、こんにちは。ところで、君は誰?初めて会うんだけど」
弐っちゃん「私、今日からここで暮らすことになったの」
さんきゅう「そうなんだ」
弐っちゃん「弐です」
さんきゅう「へ?」
弐っちゃん「弐です」
さんきゅう「いや、弐って何?」
弐っちゃん「名前」
さんきゅう「名前?名前が弐?」
弐っちゃん「あなたは参ね」
さんきゅう「さん?」
弐っちゃん「だって、名札に『参』って書いてある」
さんきゅう「これは名前じゃないよ。君だって弐なんて名前じゃないでしょ。本当の
名前はなんていうの?」
弐っちゃん「本当の名前?…あれ?本当の名前…あれ?あれ~~???」
さんきゅう「あああ…もういいよ。君の名前は弐なんだね」
弐っちゃん「はい。やっぱり弐」
さんきゅう「じゃあ、よろしく。弐さん」
弐っちゃん「…」
さんきゅう「どうしたの?」
弐っちゃん「あのぅ。できたら、弐っちゃんって呼んで欲しいの」
さんきゅう「弐っちゃん?」
弐っちゃん「ダメ?」
さんきゅう「…いいよ。弐っちゃん」
弐っちゃん「ありがとう。さんきゅうさん」
さんきゅう「さ、さんきゅうさんって、僕の名前は…」
弐っちゃん「いいじゃないの。弐っちゃんに、さんきゅうさん。よくありません
か?」
さんきゅう「よくって言われても。…まあ」
弐っちゃん「じゃ、決まり」
-所長とスパイスと看守が来る。
所 長 「まったく、どこに行ったんだ…」
さんきゅう「所長さん」
所 長 「おお、参級か。…うん!そこにいたか。おい貴様!」
弐っちゃん「はい?」
所 長 「なに勝手に出歩いている。私が戻るまで部屋で待てと言ったはずだぞ」
弐っちゃん「ああ。そうだっけ?」
所 長 「まったく。これだから頭の足りない収容者は引き取りたくなかったん
だ」
さんきゅう「やめて下さい。彼女も悪気があった訳じゃないんですから」
所 長 「…まあいい。ちょうど良くお前もいたことだしな。参級、そいつはお前
と同室にする。世話は任せたぞ」
さんきゅう「え?何で入居者の僕が…」
所 長 「確かに、お前はここの収容者に過ぎん。しかし、障害を克服したお前は
間もなくここを出所し、御国に貢献すべき人間として生きていくことにな
る。これはそんなお前に対しての、私からの課題だ。わかったな?」
さんきゅう「…わかりました」
所 長 「そろそろ時間だな。おい、この二人を作業場に連れて行け」
看 守 「…は、はい」
所 長 「それと、今度は弐番の話に乗せられて、外出を許すなんて失態を犯さな
いようにな」
看 守 「す、すいません。でも、話してると楽しくなっちゃって」
所 長 「言い訳はいらん。とっとと連れていけ」
看 守 「…はい」
さんきゅう「行こうか。弐っちゃん」
弐っちゃん「はい。さんきゅうさん」
-さんきゅうと弐っちゃんを連れていく看守。
所 長 「ふん。相変わらず腹の立つ奴だ」
スパイス 「…所長」
所 長 「はい?」
スパイス 「私が見た限り、この施設は、設備も含めてとても優れていると思いま
す。ですが…」
所 長 「前置きは結構です。何が言いたいのですか?」
スパイス 「…所長も含めて、ここの職員は収容者に対して厳し過ぎるのではないで
すか?世話というより、物を扱っているように見えてなりません」
所 長 「…国民とは」
スパイス 「はい?」
所 長 「国民とは、自国の構築した社会に従って生き、貢献することを存在意義
とする。私はそう信じております。それこそが人間という知性ある生物の
最も正しく美しい姿だとね。しかし、ここにいる連中はどうです?国に貢
献している様に見えますか?国の出す金が無ければ、この社会を生きるこ
とすら出来ず、それでいて何も生み出さない。家畜以下の存在だ」
スパイス 「家畜…」
所 長 「奴らは存在するだけで国を衰退させる害虫ですよ。そんなものを、同じ
人間として扱いたくも、そう思いたくもありませんな」
スパイス 「…もし」
所 長 「何です?」
スパイス 「もし、何かの拍子にあなたがその家畜の側になったら、どうします
か?」
所 長 「即刻、死を選ぶでしょうな。国にとってのお荷物になってまで、生き延
びようなどとは考えません。…もう質問の方はいいですかな?では、私達
も戻りましょう」
スパイス 「あの。…少しこの辺りを見てからでもよろしいでしょうか?」
所 長 「別にかまいませんよ。私は所長室にいます」
-施設内に戻る所長。
スパイス 「…ふぅ」
-バジルとペッパーが入ってくる。
スパイスが軽く手を叩くと周囲の空間が一変する。
照明変化。
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