七章 欠片ガ集ウ

 倒れたハックを囲い、茫然とする弐っちゃんと看守たちバジルとペッパー

 そこに、所長が入って来る。

「何があった?」

 倒れたハックの姿を見て察する。

「解放したその日にとはな。最速記録更新だ」

 看守に命令を出そうとした時、さんきゅうが戻って来た。

「所長?なぜここに…ハック!弐っちゃんも、一体何が?」

「騒ぐな。少なくとも、こいつがこんな目にあうような事をしたのは明らかだ。おい。連れてけ」

 さすがに、すぐに動くことができないでいるバジルとペッパー。さらに、さんきゅうも止めようとする。

「待ってください所長。またハックを閉じ込める気ですか!?」

「それが規則だ。お前も知ってるだろう」

「そんな事繰り返して、彼にもしもの事があったらどうするんだ!」

「もしもか。是非あってほしいな。我々にとってメリットしか思い浮かばん」

 それを聞いた瞬間、持っていた本を落とし、所長の胸倉を掴むさんきゅう。

「何だこの手は?」

「お前…。それでも人間かよ!?」

「…人間でないのは、貴様らだ!」

 凄まじい力でさんきゅうを叩きのめす所長。

「さんきゅうさん!」

 倒れたさんきゅうに駆け寄る弐っちゃん。

「貴様の処分は後だ。おい。お前らも早くしないか!」

 仕方なくハックを連れ出す二人。入れ替わりにスパイスとせんせいが入って来る。

「何があったんですか?」

「おや。珍しい組み合わせですな。大した事ではなりません。あいつが解放早々に騒ぎを起こしただけです。当然、奴は隔離室に逆戻りです。異議は認めませんよ」

 その事態に明らかに狼狽するスパイス。それに対し、せんせいは落ち着き払った所長と向き合っていた。

「そうですか。では、彼は?」

 と、倒れたさんきゅうを指すせんせい。

「わたしに暴行を働いたのでね。正当防衛ですよ。では…」

 部屋を出る所長。

「大丈夫?」

 さんきゅうを助け起こすせんせい。

「そ、それよりハックが…」

「ハックの事は任せて。一緒に医務室に行きましょう」

「さんきゅうさん…」

「弐っちゃんも一緒に来てくれる?」

「はい」

「あの…」

 さんきゅうを運ぼうとするせんせいを、呼び止めるスパイス。

「彼を、あとハックの事をどうかお願いします。彼にもしものことがあったら…」

 そこで口をつぐむスパイス。

「どうやら、あなたも普通の職員じゃないみたいね」

 深くは聞かずに、スパイスに何やら耳打ちをして、せんせい達は部屋を出た。

 部屋に一人残ったスパイスは、さんきゅうが落とした本に気づき、それを手に取る。何気なく頁を読み進め、その内容に驚きの表情を浮かべる。

「姉さん」

「まだここにいたの?」

 気づくと、時間がかなりたち、バジルとペッパーが戻ってきていた。

「あなたたち。ハックは?」

「仕方なく、隔離室に入れました」

「でも別の看守が来て、栄養剤打っていったんだ。せんせいの指示だってさ」

「とりあえず、明日まではもちます」

 それを聞いて、安堵の表情を浮かべるスパイス。

「良かったわ。一日あれば仕切り直せるわね」

「できるんですか?」

「せんせいの力を借りることになるわ」

手を借りるの?」

「ここはもう、目的を優先しましょう。彼女から興味深い話も聞いたし」

「実は俺たちも、弐っちゃんについて話したいことが…」

「いいわ。後で共有しましょう。うまくいけば、第1案も遂行できる」

「え?でも原書なんて用意できないでしょ」

「代わりになる物を見つけたわ」

 手渡された本の内容を確認するバジルとスパイス。

「え…」

「これって…」

 スパイスと同じく、その内容に気づき驚愕する。

「これが、最後の欠片ピースになるはずよ」

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