六章 ココビト繫ガリ

 ハックが隔離室から解放された日。

 バジル、ペッパー、スパイスが集まる。

「友人の記録は無かったのね?」

 と尋ねるスパイス。

「間違いないですね」

「というか、誰一人あいつの面会に来てないんだもん」

 声を潜めながら答える二人。

「姉さんの方は?」

「彼の経歴を調べたけど、改めて、資格者として充分な素質と行動力の持ち主というのが分かったわ。結果として、それがここに入る要因にもなった訳だけど」

「じゃあ、今の状態になった原因も?」

「そこは推測の域を出ないけど、あなたたちの話を聞いて確信したわ」

「じゃあ、やはり…」

「友達だったのにな…」

「だからこそ、傷も深いんでしょうね」

「でも、どうすればそんな彼の心と記憶を取り戻せるでしょうか?」

「事情は分かっても、決め手に欠けてんじゃないの?」

「その分、少し荒っぽくやるしかないでしょうね。目を背けたい彼の気持ちも分かるけど。わたしたちは、役目を果たしましょう」

「分かりました」

「うん。やろう」

「彼はもう部屋に?」

「ええ」

「連れ出す?」

「そうね。場所を用意するわ」

 行動に移る三人。

 同じ頃。

 ハックの部屋に弐っちゃんがやってきていた。

「こんにちは」

「うん?ああ。こんにちは」

 弐っちゃんの言葉で、目を覚ますハック。

「君は?」

「弐です。弐っちゃんって呼んでもらえると嬉しいな」

「そうか。よろしくな弐っちゃん。俺はハックだ」

「よろしくハックさん」

「どうしてここに?部屋を間違えたのかい?」

「うん。何か友達がいるような気がして」

「友達?」

『ハック~!!』

 ネズミとコウモリが入って来る。

「えっ!ちょっとハック!」

「この子誰?」

「こんにちは」

 慌てる二人に挨拶する弐っちゃん。

「大丈夫だ。この子は敵じゃない」

「ほんとに?」

「そうなの?」

「うん。多分もう友達」

 と、弐っちゃん。

「友達?」

「そうなの?」

「まぁ、そうかもな」

 と笑い出すハック。

 そこにソルトとジョナも現れる。

「ちょっとそこ」

「俺たちも交ぜろよ」

「うわまた増えた!」

「何なの今日は?」

「あんたらは?」

 前に出て訪ねるハック。

この子弐っちゃんの友達よ」

「よろしくな」

「どう思う?」

「ハック?」

 訝しむネズミとコウモリ。

「多分大丈夫。彼女が友達っていうなら、俺たちとも友達だ」

「良い事いうわね」

「話が合いそうだ」

 賑わう面々。

 そこに、バジルとペッパーがやってきてしまう。

『さて、まずどうする?』

『とりあえず、隔離室に連れてく振りして姉さんの元に…』

 部屋に入り、両者が遭遇する。

「こんにちは」

 二人にも挨拶する弐っちゃん。

「え!何でここにいるんだよ!」

「その二人も誰だ!?」

「あら?あたしらが分かるの?」

「もしかしてあんたら…」

「まずい来ちゃった!」

「どうしよう!」

 ネズミとコウモリが騒ぎ出してしまう。

「どうもこうもないな。せっかく部屋が賑やかになったのに水差しやがって…」

 バジルとペッパーに敵意を向けるハック。

『何の騒ぎだ?!』

 そこに、部屋の外から所長の声が聞こえてくる。

「この声って!?」

「あいつ!?」

「くそ!皆逃げろ。弐っちゃんも下がって!」

 逃げるネズミとコウモリ。

「ややこしくなったわね」

「一時退散だな」

 姿を消すソルトとジョナ。

「どうする?」

「こうなったら仕方ない」

「ハックさん!」

「大丈夫だ!」

 バジルとペッパーにより取り押さえられるハック。再び薬を打たれ、昏倒してしまう。

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