参章 使者ノ集い
植物園に残るスパイスの元に、ハックを連行した二人の看守がやって来る。
「二人共。お待たせしたわね」
「お疲れ様です。姉さん」
「やっと来れたんだね」
看守は、先ほどとは打って変わった様子で話し始めた。
二人はバジルとペッパー。
スパイスの仲間だった。
「何とか、入り込むことはできたわ。でも、応援の要請を受けてからしばらく経ったけど、その間に何か進展は?」
「申し訳ないんですが…」
「全然ダメで」
と二人は返した。
「スパ姉。一応聞きたいんだけど、本当にあいつがそうなの?」
「
「今更疑うことでもないだろ?彼には確かに力があったんだ」
とバジルがペッパーを諫める。
「そうだけど…」
「力とは?」
「見えたんですよ。ハックを外に導こうとする、二人の少女の姿が」
「少女が?では、所長が言っていた事は…」
「所長自身は夢にも思ってないでしょうが、事実です。ネズミとコウモリの侵入が引き金になるのも確かなようですね」
「あくまであいつの
先程の事を思い出すスパイス。
「脱走を図ってたように見えました。今回が初めてではないようですね」
「何度もやっては捕まり、隔離されるの繰り返しで」
「所長にも目を付けられてるから、少しでも何かあったらすぐ捕えろって言われちゃっててさ」
「迂闊に近づくこともできないということですか。でも、ここから出ようしている事は、彼にまだ自由と終末への意思が遺ってるという証拠ですね」
「だといいのですが、そこも何か微妙で…」
渋い表情で返すバジル。
「どういう事?」
「少女の様子から見ても、彼には確かに自由への意思はありそうなんですが…」
「それとは、逆の気持ちも持ち合わせてるみたい」
「逆…」
「彼自身の意思が消極的というか、ここにいてもいいみたいな態度が見られました」
「自由を恐れている?」
「そうかもしんない」
「刑務所ではなく、こんな所に入れられてるぐらいです。彼の心はもう、壊れてしまったんじゃ?」
「…」
思案に耽るスパイス。
「その場合どうする?思い切って、同室のあいつにする?」
「さんきゅうと呼ばれてたあいつか?いい奴だと思うが、彼はただそれだけの存在さ。資格者の推薦でもなければだめだ」
「そっか。じゃあ、今日来たあの子は?」
「弐っちゃんのことですね」
「何か気になるんですか?姉さん」
「ええ。彼女にも何かを感じましたが、我々の目的はあくまで彼です。簡単に見限ることはしません」
「でもどうするの?」
「彼に何があったかを調べてみます。二人は隔離された彼の様子を見ておいて。ここの様子じゃ、平気で衰弱死させそうで心配だわ」
「分かりました」
「了解」
「では、そろそろ戻りましょう」
植物園を出る三人。
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