第4話 お人好し 復讐のやり方がわからない
俺は腹ワタ煮えくり返るくらいに怒り心頭で城を出た。
だがそんな素振りは欠片も見せない。
クールに冷静にやり過ごすのだ。
ソロで魔王を倒したという話が出回ってくれれば、俺の株も上がるってものだろう。
甘いかな?
復讐だ復讐っ! 惨劇の幕開けじゃいっ!
見とけよウォールハイル王っ!
ぎゃふんと言わしちゃるからなっ!
ところで。
復讐ってどうやるんだ?
自分で言うのもなんだが、俺はいわゆる『お人好し』の部類に入ると思うんだ。
子供やお年寄りは大切に。
一日一善は恩師の教えだし『人の悪口を言ってはいけませんよ、ラルフ。それは必ず自分に跳ね返ってくるのですから』とは、今は亡きお父さんとお母さんの教えだ。
実際、俺もそう思うしな。
世の中、性格ワルイヤツが多すぎるんだよなあ。
正直者は気持ちが良い。
だが、正直者はバカをみる。
これは本当にそう思う。
世の中に出て旅を重ねる内に、正直が誠実とイコールでは無いってのも最近なんとなく見えてきた。
強いヤツが正義!
性格悪くても。
可愛い女の子は正義!
性格悪くても。
みたいな。
うーんむむむ。
性格ワルイ知り合いにでも聞いてみるか……と思った所でパッと頭に浮かぶ性格ワルイヤツって知り合いにいないんだよなあ。
ちょっと考えてみようじゃないか、復讐ってヤツを。
ウォールハイル王をぎゃふんと言わせるには?
例えばだ。
足を引っかけてコケさせるとか?
ブーツの中に石ころ入れておくとか?
ストローに詰め物しておいて吸えなくするとか?
国王のベッドにう○こするとか?
……これって復讐か?
イヤイヤ、子供のイタズラレベルだろ。
そもそも城内に侵入は無理だしな。
それじゃあ、思い切って。
城に火を放つ?
イヤイヤ、関係ない人達まで巻き込んじゃうんじゃないか? 城内で働いてる人も大勢いるからな。
料理番とかお給仕さんとか、馬の世話係とか?
城に出入りする業者さんとかも多いしな。
その仕事で家族を養ったりしてる人達もいるワケだし。
だいいち、放火なんて非人道的だし大罪じゃないか。
これはナシだな。セキュリティ的にも無理。
それならば。
城の水源に毒を盛る?
イヤイヤ、それではただの無差別大量殺人だな。水道管理してる人達にも迷惑だし?
何より無関係な子供とかお年寄りとかにも悪影響だし?
だいいち、毒殺なんて非人道的だし大罪じゃないか。
これはナシだな。セキュリティ的にも無理。
悪いヤツだけ腹が痛くなる毒って無いモンかな……
ううむ。
王の外出を見計らって暗殺……イヤイヤ、俺より強い手練れのヤツらの目を
つーかなー。国王って温厚で人気あるからなあ。
恨まれるような人柄じゃないし、重税で国民苦しめるとかも無い。
だいいち、暗殺なんて非人道的だし大罪じゃないか。
真っ向勝負という俺の流儀にも反するし。
これもナシだな。セキュリティ的にも無理。
そもそも!
そもそもの悪の元凶はっ!
あのバカな第二王女ナスターシャ!
あるコトないコトデタラメばっかり言いやがってっ!
イヤ、無いコトばっかり言いやがってっ!
そうだな、うん。
悪いのはあのバカな第二王女だな。
王様が俺を追放したのは娘を想っての事だろうし。
娘想いのいい親じゃないか。
復讐するなら、あのバカ娘ナスターシャに!
コムスメをぎゃふんと言わせてやるのだ!
ウォールハイル王国の外壁門を出てとぼとぼと歩いていると一頭の馬が後ろから駆けてきた。
早駆けか?
じゃあ、さっさと行ってくれ。
こちとら復讐とはなんぞやと思案中なんだからなっ。
ずどどどどっと通りすぎるかと思いきや、俺の真横で急停止。
馬上から飛んできたのは聞き覚えのある若い女の声!
「見つけたわよラルフっ!」
「えっ!? なっナスターシャっ!?
オマエっ! なんでココにっ!?」
手綱を握っていたのは、ウォールハイル王国の第二王女ナスターシャ!
て言うかっ!
どのツラ下げて俺の前に出てきやがったっ!?
お前のせいで報奨金パーだし国外追放されちゃったんだぞっ!
「お願いラルフっ! 私をっ!
あなたのオンナにしてっ!」
「は!?」
いきなり現れてナニ言ってんだこのコムスメはっ!?
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