第2話 お人好し 王女を連れて王国へ

 ナスターシャ王女を連れて魔法アイテムでサクッと城の外へ。

 魔王を倒したからなのか、城の周りの暗雲は晴れて清々しい風が吹いている。


 ただ。

 ウォールハイル王国への道のりは長い。


 まったく、魔王と名のつくヤツらはなんでこんな辺境に城を建てたがるんだろうな。

 国の一つや二つ乗っ取って、そこを拠点に世界制覇とか目指せばいいものを。


 ここまで旅を共にしてきた馬は何処かに逃げてしまった。

 やっぱダメだな、借り物の馬は。

 仕方がない。歩くしかない。 

 遠方まで転移出来る魔法のアイテムは高価過ぎて手が出なかったからな。


「行こうか、ナスターシャ」


「はいっ! ラルフ様っ」


 こうして俺は、ナスターシャと共にウォールハイル王国へと歩き出したのだった。

 

           ◇


 徒歩で連れ帰る事になった第二王女ナスターシャが気がかりだったが、おんぶしてとかだっこしてとか、足が痛いとか腹が空いたとかワガママ言うのかと思いきや。


 なかなかどうして、泣き言一つ言わずについてくる。

 サバイバル知識もなかなかのものだ。

 まさか火起こしまで出来るとは思ってなかったから、素直に驚いちゃったぞ。



 ウォールハイル王国までは、ざっと見積もって馬車や徒歩でおよそ二週間くらいの旅路になる。


 それまでに転移魔方陣のある町や村があればいいのだが。

 通りすがりの高位の魔法使いに出会ったり……は、流石にないか。


 空でも飛べたらな。

 あっという間に王国に行けるんだがな。

 転移魔法とか?瞬間移動魔法とか?

 そんなの使えるならとっくに使ってる。

 だが、魔王のヤツがこの辺り一帯を魔法無効化しちゃっもんだから、なに一つ魔法は使えない。

 死んだハズなのに魔法無効化が効いてるなんて、ちょっと腑に落ちないが。



「済まないなナスターシャ。俺の不備で長距離を歩く事になってしまって」


「いいえ、ラルフ様っ。命の恩人との旅は楽しいですわっ。私の方こそご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした……」


 おおっ。しおらしいじゃないかナスターシャ。

 カワイイぞっ。うん、カワイイ!


「あの、ラルフ様のご家族の方も心配なさっているのではないでしょうか?」


「俺に家族はいない。少し前に亡くなったんだ」


「そうでしたか……申し訳ありません、余計な事をお訊きしてしまいました……」


「気にしないでくれ。俺は自由気ままなこの生活が気に入っているからね」


「……ラルフ様はココロもお強いのですねっ」


 俺のオトナの対応と言葉に微笑みながらうっとりとするナスターシャ!

 カワイイ。うん、カワイイぞナスターシャよっ。


           ◇


 十二魔王の内の一人、ヘルディザードを倒してウォールハイル王国に戻る途中。

 ぴっちぴちのむっちむちの王女と毎日二人きり。

 身体に毒だよ、まったく。

 

 若い男女が二週間も毎日一緒にいれば。

 そりゃあ、ウフンやアハンなコトの一つや二つくらいあってもおかしくなさそうなものだ。

 しかも王女は俺に気がある素振りをみせてくる。


 ううむ。これは。

 朝から晩までムフフのムハー! とか。

 なんて、やんないけどな。


 俺だってわきまえてるからな。王女に手を出してそれがバレようものなら、ソッコーで首が胴体から離れる。

 言っておくが首は元には戻らないからな。

 俺、人間だし。

 

 王女とはなるべく距離を取るようにしている。

 にもかかわらず。

 

 助けた時からそうだったが、王女はべったりと俺にくっついてくる。

 年端もいかないコムスメかと思いきや、プリプリのぷるぷるちゃん。

 16歳かー……俺と2つの年齢差。

 はー。甘くていい匂い……思わず押し倒したくなる。

 第一王女に負けず劣らずのナイスボディーのぷるぷるちゃんだからなー。

 

 やたらとくっつきたがるのは、どうやら王女が俺に惚れたっぽいか?気のせいか?


 魔王を一撃で倒すほどの強さと血気盛んな俺の『男性』としての魅力が、ナスターシャをそうさせたと言っても過言ではない!

 と思うのだが。

 決して手を出してはいけない!

 生殺しってこのコトかっ!?

 


 ある日の夕刻。いつものように野営だ。

 サクサクと夕飯と野営の準備。

 時間が経つのは早い。あっという間に日は落ちて星がキレイな静かな夜だ。

 モンスターの気配は無い。だがもちろん油断はしない。


「ラルフ様っ。お湯が沸きましたわっ」


「ありがとう、ナスターシャ」


 俺が笑顔で応えると、ナスターシャはにっこり微笑んで隣に座り肩を寄せた。


 お湯が沸いたのなんて見ればわかるわい。

 だが。

 見ればわかるよ、ナスターシャ。とは言わない。女ゴコロを傷つけない為にも、紳士的な態度は崩さない。


「火が消えそう……薪を足しますね、ラルフ様っ」


「ありがとう、ナスターシャ」


 俺は再び笑顔で応える。

 薪くらい黙って足せんのかい。

 などとも言わない。

 

 女ゴコロを傷つけないのは紳士として当然。


「ラルフ様っ。焚き火の炎に照らされる横顔がステキですわっ」


「ありがとう、ナスター、シャ……っ!?」


 俺を褒めちぎる彼女の方を見ると、なんとっ!

 胸元を大きくはだけておっぱいの谷間がコンニチワっ!

 たわわっ!

 なんてたわわなんだナスターシャっ!ホントに16歳かっ!?

 眼球めんたま飛び出すかと思ったっ。


 おいナスターシャっ! 

 うら若き乙女がどこのウマの骨ともわからん男に柔肌晒してはイケマセンよっ!?

 焚き火の灯りに照らされるナスターシャの肌のエロいコトったら!


 ナスターシャは熱い視線を俺に向け、カワイイお口が半開きっ!

 だがここはクールにしのいでみせるよ、この俺は!


「ナスターシャ、夜は冷える。もう休むといいよ」


 ナスターシャは少しだけ不満気な顔をしたが、それは一瞬だけで俺の言う事に素直に従ってくれた。

 ふう。危ない危ない。

 最近の若い娘の発育っぷりったらもう。

 ふわりと漂うイイ匂いと、ぴっちぴちの健康的な色気にオニーサンは思わず前かがみですよ!

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