お人好し魔法剣師の復讐譚! 魔王を倒して王女を助けたのに国外追放されたのでちょっと復讐してみようかと思います。なのに王女が俺側についちゃってるんですけど?

雪の谷

第一部 魔王を倒して王女を助けたのに国外追放されたのでちょっと復讐してみようかと思います。なのに王女が俺側についちゃってるんですけど?

第1話 お人好し 王女を救う

「食らえっ! 地獄激滅昇天破ヘルクラッシュゴートゥヘヴン! スラッシュ!!」


 俺の必殺魔法剣が魔王『ヘルディザード』の脳天に炸裂!


 ドゴォォォォンッ!


「うごおおおっ! おのれえっ!

 ニンゲンめええっ! 我が野望はっ!

 次なる!

 次なる魔王――が必ずや果たグギャアアアアアっ!」


 頭半分割れてるのによく喋れるな。

 さすが魔王!

 でも喋ってる途中で消し炭になったけどな。


 あーあ。真っ黒。

 まあ、この俺に一撃当てたんだから褒めてやるよ。

 つっても肩当てがちょっと傷ついただけだけどな。

 もし今度生まれ変わるなら魔王になんかなっちゃダメだぞっ。


 俺は見事に十二魔王の一人『ヘルディザード』を倒した!

 次なる魔王ってのがちょっと気になったが、今はまあいい。


 

 俺はラルフ。ラルフ=シュランドラ。

 18歳だ。


 クラスはSSクラスの剣師。

 魔法だってソコソコ使える、いわゆる『魔法剣師』の冒険者だ。


 剣師とは剣聖より下のクラスだが18歳で剣師ってのは珍しいようだ。

 最高位の『剣聖』までは、あと一歩。


 だが俺は剣聖にはならない。

 師ではあるが弟子を取る気もない。


 ポジションについてしまうと、あれやこれやと面倒臭い事が舞い込んでくるからな。


 まあ自分で言うのもなんだが俺は強い。

 めっちゃ強い。

 一人で魔王を倒しちゃうくらい強い。


 かつてはパーティーを組んで魔物モンスターの討伐とかもやってたが、パーティーでは賞金は山分け。 

 それじゃあ納得いかない、いくワケがない。

 一番危険な目に遭って、一番活躍してるのに山分けなんてオカシイだろ。


 賞金の取り分が全て俺のモノになるから、今はソロでやってる。

 決してボッチだからってワケじゃあない。

 

 共感できるヤツとじゃないと組まない主義なだけで、厄介事を押し付けられるなんてそんなのはイヤだからなっ。


 俺はマイペースに生きるのだ。

 


「はああっ! 勇者様ぁはぁぁんっ♡」


 監禁塔へ行くと、捕らわれていた王女が魔王の束縛魔法から解放され俺に駆け寄って来た。


 当然のようにがばっと俺に抱きつき、歓喜の涙を流す第二王女ナスターシャ!


 そのまま俺にキスをする勢いで、まだ幼さの残る可愛い顔を寄せてきた!

 だが俺はクールにその唇に人差し指を当て、第二王女ナスターシャを落ち着かせる。


「美しき王女よ、貴女の尊い口づけは。本当に愛する人の為にあるのですよ」


 なんつってな!

 ホントはむしゃぶりつきたいんだけどな!

 だがここはグッとこらえねば。

 王女に手を出したなんてバレたら報酬がパーになっちゃうからなっ。


「美しき王女よ、一つ訂正を。私は勇者ではありません」


「えええっ!? あんなにお強いのにっ?

 イッパツで魔王を倒しちゃったのにっ!?」


 イッパツって。まあ、イッパツだったけど。

 ここから見えてたってコトか?


 演技などではなく、王女は本当に驚いているようだった。

 羨望の眼差しで俺を見つめる第二王女ナスターシャ!

 まあ、悪い気はしない! むしろ気分がいい!


 ナスターシャ=ウォールハイルは、ウォールハイル王国の第二王女だ。


 第二王女は美人というよりは可愛い系。

 腰まであるツヤサラ金髪に空色の瞳。

 ぴっちぴちのむっちむちでホントに16歳か?ってくらいのナイスボディーだ。

 ぶっちゃけ好みのタイプだ。うむ。


 第一王女はファレリア。

 ファレリア=ウォールハイル。

 美人だ。まあ、絵に描いたようなスタイル抜群の美人だ。気立ても良くて国民に人気があり、勉学や剣術においても非の打ち所がない完璧美女。


 二人は見目麗しい姉妹として近隣諸国に名を馳せている人気者だ。


 何故か魔王は第一王女をさらわずに第二王女をさらった。

 バカだな。

 王国からすれば最悪、第二王女は死んでも構わない。もちろん、そんな事はおくびにも出さないだろうけど。


 しかし、魔王のヤツはなんでまた第二王女なんてさらったんだろうな?

 第一王女の方が美人でスタイルいいのに。


 それはまあいい。


 魔王討伐部隊が編成されたが、あっさり全滅しやがった。

 しょーもない。

 まあ、寄せ集めの冒険者達じゃそんなもんだろう。

 王国騎士団の連中は途中で足止めを食らってたな。ナニやってんだか。

 一国の王女を護るのも騎士のツトメのハズなのにな。


 途中までいた冒険者のヤツらは死んじゃったり離脱したり。


 魔王の城に辿り着いたのはごく少数。

 生き残ったのは俺だけ。取り分は全部俺のモノだ。こんなオイシイ仕事はなかなか無い!


 見事にソロでやってのけたからなっ!

 さっさと第二王女を連れ帰って報酬いただき!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る