第14話
棺桶に入った妹の顔を見て、こんな顔だったかな、と不思議に思った。
何せ高校から十数年間、まともに正面から顔を合わせていない。
俺の記憶の中で妹は小学生の可愛い頃のままでずっとアップデートされていなかったので当然と言えば当然だが…(中学の頃のクソ生意気なのは既に記憶から排除した)
傍には親父とお袋、そして妹の元彼と両方の親族が集まっており、全員が全員、顔を真っ赤に腫らして泣いていた。
(何をいけしゃあしゃあと…)
妹は自殺だった。
縁談が破談になったことによる絶望、からの自殺
破談になった原因は、奴等に言わせれば全て俺の所為だと。
なんでも、大学からの付き合いだった妹と元彼は互いの就職を機にウチに結婚の挨拶に伺ったのだが、お袋が元彼の家柄の悪さを理由に猛反対をしたらしい。
この時点で
何やってんだよお袋、
人にやられて嫌だったことはやってはいけませんって小学校で習わなかったの?状態だったのだが、
その話を聞きつけた元彼の両親が、今度は
「引き篭もりを飼っている家庭に家柄云々言われる筋合いは無い!」なんて意趣返しをしてきたらしい。
うーむ、味方もさるものながら、敵も中々に天晴れな切り口である。
そんなわけで双方の親族の強い反対にあった妹達は泣く泣く結婚を諦め別れることになり、ショックを受けた妹はネットで純白のウェディングドレスを購入し、それを着たまま服に火を付け焼身自殺した。傷心だけに。
以上が事の顛末で、妹が亡くなった要因だ。
どうだ、救いようがないだろ?
俺は誰に説明するでもなくひとりごちて、自嘲する。
誰が悪いかといえば、確かに俺が一番悪い。
だが、本当に俺だけが悪者なのか?
結婚を初めに反対したお袋、何も言わなかった親父、俺をダシにした向こうの家族、そしてケアを怠った俺の義弟になるはずだった男、
全員が全員なんらかの罪があるんじゃないのか?
こんなん全員悪人だろ?北野武映画だろ?
妹は何も言わず、ただこちらをジッと睨みつけていた。
俺は目を逸らし、お袋が買ってきたであろうテーブルに置きっぱなしのレジ袋を漁り、生のままのキャベツにひたすら齧り付いた。
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