第12話


「何してるの……?」


「……あ、……そ…の……」


「何してるのよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!」


バァンッ、とお袋がバックを床に叩きつけた。

っぴぇっ!?


「い…いや、…違うんだよ、これは、その…」

何が違うと言うのか?

何も違わない。


俺が死んだ妹の部屋を漁る史上最低最悪のクソ兄貴であることは、一目瞭然事理明白当然至極の紛れもない事実だった。


─あーあ、やっちゃったねぇ。─

慶子が後ろでクスクスと笑い声を立てる。


「出てって、出てってよ!出て行きなさいヨォ!」

俺はお袋に押されるがまま部屋を出され、ドアを思いっきり閉められた。


「いや…、いやいや違うんだよお袋、……別にそういうつもりじゃなくてさ、……なんていうか」


おかえり?違う、痩せた?そうじゃない

なんとか取り繕うとするが次の言葉が出てこなくて口が宙を彷徨う。


耳を澄ますとお袋の啜り泣く声が聞こえてきた。


ああ、やってしまった……、よりによってなんでこんなタイミングで。


「……ごめん」

俺は何とかそれだけ捻り出し、静かに部屋を後にしようとした。


だが、


「アンタなんか産むんじゃなかった」


その瞬間、目の前が真っ白になった。


「はぁあああああああああああ!?!?!?!?

フザっけんなふざけんなふざけんなっ!!!

勝手に産んどいてどの口がんなこと言ってんだよっ!ふざけんのも大概にしろよ!?

誰が産んでくれと頼んだ!?!?

誰が作ってくれと頼んだ!?!?!?!?」


「私だってアンタみたいのが産まれるとわかったってたら産まなかったわよっ!」


「ああそうかい!そいつは残念なこったなっ!!

ザマァみろっ!!だがな、言わして貰うがアンタみたいな親の元に生まれた人間は遅かれ早かれ皆こうなってたよっ!?」


「何を勝手な……」


「分かんないっ!?本当に分かんないのっ!?

自分の教育法を胸に手を当てて振り返ってみろよっ!!!

人が大事にしてるモン全部ぶっ壊してひたすら缶詰で勉強勉強って!!!テストや模試の結果だけがアンタの息子で本人の人格や希望は全部無視!!!そりゃこうなるよっ!そりゃこうなるに決まってるっ!!!!」


「私はアンタの為を思ってここまでやってきたのにっ!!!」


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アッ!!!

何が俺の為だよッ!!?子供は自分のコンプレックス解消のための道具じゃねーんだよっ!!!

俺の事も慶の事も何にも見ようとしなかったっ!

それが今のこの結果だろッッ!!

いい加減自分の罪を認め─」


「慶ちゃんが死んだのは私のせいじゃないッッ!!!」

バァンッ!と扉を叩く音がした。


「アンタがいつまでもふらふらとみっともない無職のままで居るからじゃないっっ!!!!」


うわぁぁぁぁぁぁぁ、とお袋が泣き崩れる音がする。


…は、それを言うか、それを。


それを言っちゃあお終ぇよ──。


顔を上げると無言のまま静かに見下ろす獣耳爆乳ふしだらロリ系純情処女ビッチ美少女メイドの姿がそこにあった。


ああ、本当に 秋の亡霊だな──

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