第14話 ワーウルフ殲滅戦5
ふざけるな、誰もがそう思った。
浅間の放った射線は完ぺきと言えた。
初弾で頭部を狙い避けられた事を念頭に、浅間は避け難い体の中心部、心臓付近を目掛けて撃っていた。
体勢だって崩している。視界も半分を奪い、頭を揺らして脳震盪も起こさせたはずだった。
避けられるはずが無い、そう確信できる一射だった。
だが
そんな事可能なのか、その驚愕にさすがの村瀬も咄嗟に動くことが出来なかった。そしてそれは他の隊員たちも同様、組織の動きがピタリと止まった。
それがこの戦いの分かれ目となった。
ここで誰かが突撃していれば、あるいは仕留めきれたかもしれない。
弾丸を弾き飛ばしてはいたが
しかしこの場でそれをなせるものは一人もいなかった。
片目となった
その眼に村瀬はゾッとした。
それまで恐怖しても怯えは無かった村瀬だが、今は見上げる相手に酷く怯えていた。
手が震える。
息が苦しい。
闇に浮かぶ金色の瞳はあまりにも禍々しく、そして強い怨念の様なものを感じた。
その金眼が村瀬からそれて上を見上げる。
そこにあるのは朽ちて穴が開いた天井だった。
(っ、拙い!!)
村瀬は即座に悟った。
それは村瀬が考え得るうえでの最も悪い結末だった。
村瀬は焦りを露に、小銃を構える。
「奴をあそこから出すな。撃て、ライフルで撃て」
叫ぶよりも先に
(駄目だ。奴だけは出しては駄目だ!!)
そして今相対している
(あの目だ、奴は人間に深い怒りを抱いている)
人間を酷く敵視した化物、それが世に放たれる。それは如何程の危険な存在となるのか計り知れない。
今まではあくまでも食事として人を襲っていたが、これからは純粋な悪意を持って人を殺す恐れすらある。
村瀬は感じていた。この
それが世に放たれる。
村瀬はそれだけは絶対に阻止したかった。
(銃では抑えきれない)
だがやはり小銃では効果が薄い。既に
(だったらこの体で)
それならば自分が直接、そう覚悟を決めた・・・・・・だが。
「・・・・・・なっ、クソ!!動け、動けよ」
だが肝心な時にパワードスーツが動かない。バッテリーが切れたのだ。
兎モードで
自分が駄目なら誰か、そう村瀬が思った時には時すでに遅く。
マテリアルライフルを構えると同時に天井の穴から
「くそぉ!! センター、ターゲットが一体外に出た至急対応されたし」
村瀬が無線で報告し、そして唇を噛んだ。
結果的に三体いた
陸上自衛隊側の被害は特対の隊員が四名負傷、内重傷者は二名であった。
オペレーション【穴ぐらの犬】は苦い結果に終わった。
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