第7話 お前が言う?
「どう言う事なの……説明してくれる——
「…………」
……どう言うことって。
なんとか平静を保ってくれている
まあ、今より不味い状況なんて、あるのかどうかは置いといて。
「…………」
そんな恐ろしいことを考えるよりも、まず、今の状況を整理しよう。
とりあえず、修羅場ってる。
……これは、誰がどう見ても間違いない、紛れもない事実だ。
では……何故、修羅場ってる?
俺と
つまり、まずこの場を収めるには、
よし……もう少し、掘り下げて考えよう。
そもそも……
なのに沙耶は怒っている。
……ということは……も、もしかして——
「…………」
ない、ない、ない、ない……それは絶対ないわ。
本当に俺は、
「何、黙ってるのよ」
「いや……それは」
「それは何っ!」
俺がモゴモゴしていると。
「今朝も話したでしょ……それは、今日、私が
綾辻が代わりに答えた。
『うぐぐっ……』となる
「ねえ
「…………」
はぁ——————————っ!
何、言っちゃってんのこいつ!
沙耶が俺の事を好きだなんて……そんな事あるはずないだろっ!
だけど沙耶は……綾辻の質問には答えず、顔を真っ赤にして、俺の方をただ、じぃーっと見ている。
えっ……まさか本当なの?
沙耶……もしかして、俺の事が好きなの?
「そ、そ、そ、そ、そ、そ……そんな事あるわけないじゃん! なんで私が
……うん……知ってた。
でも、そこまで否定しなくても。
「そう……なら、私たちのやる事に目くじらを立てるのは何故かしら?」
「そ、それは……」
言葉に詰まる沙耶に、追い討ちをかける綾辻。
「まさか、幼馴染だからとは……言わないわよね?」
だけど沙耶は、その綾辻の言葉に反応して。
「幼馴染……そうっ! 私は
とんでも理論をぶちまけた。
な……なんだそりゃ。
そして沙耶は続けた。
「て……ていうかっ!
「好きなところなんてないわ」
綾辻は即答した。
……少しは迷えよ。
「え……じゃ、なんで告白なんてしたの?」
「一緒に住むためよ」
「へ……」
呆気にとられる沙耶。
俺も今朝はそうだった。気持ちはよく分かるぞ。
「じ、じゃぁ……
「何を言ってるの広瀬さん、私は
頭を抱え込む
今朝の俺と同じように異次元に迷い込んだようだ。
そして沙耶は。
「……認めない……私は絶対に認めないから!」
「何を認めないのかしら?」
「全部よっ! 一緒に住むために告白したのなんて間違ってるし、1ミクロンしか好きじゃない人と一緒に住むなんて間違ってる! 私は絶対認めない! あんたたちが付き合う事も認めない!」
ブチ切れた。
でも、綾辻は冷静に返した。
「それを決めるのは、あなたじゃないわ……
決めたと言うか……決められたと言うか。
「本当なの、
キッっと俺を睨みつける沙耶。
綾辻のやり方はどうあれ、俺が綾辻の要求に「はい」と答えたのは事実だ。
だから。
「ああ……本当だ」
ここは、正直に答えた。
「……分かった」
沙耶は、意気消沈し、肩を落とし、そのまま俺の家を後にした。俺は、それを黙って見送った。
とりあえず、修羅場からは脱却した。
だけど——
……なんだろう、このモヤっとした気持ち。
「追いかけなくていいの?」
お前が言う?
「ああ、いいんだ」
追いかけたところで、あいつが何で怒っているのか分からない、余計に拗れてしまうだけだ。
「案外冷たいのね」
お前が言う?
「…………」
色々言いたかったけど言葉を飲んだ。
「ねえ
「……なんだ?」
「あなたも、彼女も、ひとつ誤解しているみたいだから訂正しておくわ」
「……訂正?」
……なんだろう。
「私は、あなたを『好き』なんて言葉で括りたくないの」
恋のはじまりは、いつも突然だと綾辻は言った。
「……だって私はあなたを」
今、この瞬間——
「愛しているもの」
俺たちの恋の物語がはじまった気がした。
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