理想の外見

 起動されたアンドロイドのように目を覚ました私は寝ぼけたまま体を起こし大きく伸びをした。


「んー!」


 気持ちが良いけどやっぱりまだ眠たい。だけどそんな体に鞭打ってベッドから出るといつも通りまるで決められた手順があるように朝のルーティンをこなす。

 それはいつも通り顔を洗おうとした時の事だった。


「あれ?」


 鏡を見た私はふと鼻の傍に赤い点があるのに気が付いた。ニキビだ。


「えぇー! うそー。この顔お気に入りだったのに……」


 はぁ、と溜息も零れてしまった。

 私はガッカリとしながらも顔を洗うのを止め、寝室へと向かう。整えられてないベッドが誘惑してくるがそれを振り切りクローゼットの前へ。扉の前にあるタッチパネルから頭の形をした場所をタッチし開くのを待った。

 中で動く音が響くいた後、クローゼットの扉は独りでに開く。


「さぁーてどれにしよーかなぁ」


 私はそこに並んだいくつもの顔を端から品定めするように見ていった。全てが目を瞑った無表情だけどちゃんと笑った表情も怒った表情も知ってる。それらを想像しながら今日の予定を思い出していく。


「今日は仕事だけで特に用もないから……。何でも良いか」


 何度か頷き自分の言葉に納得すると手前の仕事が出来そうな凛とした顔を手に取った。

 そして今付けている自分の顔を取り外す。私の顔はのっぺらぼうのように何もない真っ平になってしまった。そこへ手に取った顔を取り付ける。ちゃんと嵌まったのを確認して鏡で確認。


「んー。髪型も変えようかな?」


 肩より少し長いくらいの黒髪を撫でながら色々な角度から見ていく。


「まぁ、別にいっか」


 そう呟くと外した顔を持ち上げで引き出しからニキビを治す薬を取り出し赤い点に念じるように塗った。


「どうか週末までには治りますように」


 塗り終えると薬はちゃんと戻して顔もちゃんと立て掛ける。そして最後にもう一度手を合わせて週末のデートにまでには治るように祈った。


「あっ! あんまりゆっくりしてたら時間が」


 私は急いで準備を済ませご飯を食べ家を出た。


                 * * * * *


「んー。もう少しガッチリしてた方が良いかな?」


 全身鏡に映るのは眉間に皺を寄せたパンツ一枚姿の自分。ボディービルダーのようなポーズを次々として自分の肉体を見ていた(もちろん見惚れてたとかそういう訳じゃない)。


「でもこれ以上はちょっと露骨かな?」


 僕は明日のデートにどの肉体で行くかを迷っていた。男らしいガッチリとした体にしようと思ってるんだけどあんまりゴツくしたら変かな? なんて思ってずっと迷ってる。


「でも髪型と顔はこれにしようと思ってるから……。控えめ細マッチョにしようかな」


 ちゃんと決まるといいけど。

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