和矢の策略3
みんなが、私がメールを差し出すか否かを待っている。
すると、いつまで経っても携帯を見せようとしない私に和矢が、
「ホラ、ウソなんじゃねーか!本当はそんなメール送ってないんだろ?送信履歴に残ってないんだろ!?」
と勝ち誇った様に言い放った。
『やっぱり……』
『送った証拠、無いんじゃない?』
『え~、最低じゃん』
『課長、かわいそ~』
と言う声が、ギャラリーから聞こえて来る。
「ね!みなさん!こいつは嘘つきでビッチな女なんですよ!みなさんが証人になってくれますよね!?僕、こんなに傷付いたんです。この人から慰謝料貰ってもいいですよね!?」
和矢は、演説の様に大きく手を広げて涙ながらに訴えかけている。ここにいる全員が、和矢の訴えにうんうんと相槌を打っていた。
それを見て、私は愕然とした。
和矢が今、何が目的で何がしたいのかがよく分からずにいたけど、こう言う事だったんだ。
(私が逃げられない様に、ここまで追い詰める気でいたんだ……)
和矢は自分の正当性を訴え、私一人だけを悪者にし、孤立させてどうにも出来なくなるまで追い込むつもりでこんな事をしている。
(なんで…?なんで私がこんな目に合わなくちゃいけないの!?浮気して裏切っていたのは和矢の方なのにっ……!)
私の目には、涙が溢れて今にも零れ落ちそうだった。
しかし、ここで泣いたら負けた様な気がして、グイッ!と袖で涙を拭く。
(――っ!?)
その瞬間、和矢と新井麗子が顔を見合わせて微かに笑い合っているのが見えた。
それを見た私は、頭の中ですべての事が腑に落ちた。
(和矢と新井麗子はグルだ……!!)
さっき本人が『証拠集めを手伝った。写真を撮ったのもワタシ』と豪語していた。
じゃあ、それは何の為に?ウソまででっち上げて、何の為にこんな事をしたのか。
(まさか……2人で共謀して慰謝料をふんだくる為!?)
そこまで元彼が落ちぶれたとは思いたくなかったけど、そう結論付けるとすべての事に合点が行く。
でも、そんな事が分かってもなにも証拠はないし、確実に今は私の方が劣勢だ。今さら私が何を言った所で、みんなは信じてくれないだろう。
(なんにも出来ない……!)
ギュッと拳を握る。
俺様の勝ち、と言う顔をしている和矢を私は睨み付けた。
「あんれ~?なにその顔!?自分がクソビッチだったのに、ワタシ被害者です~みたいな顔するのやめてくんない?」
「ほんっと、マジ最低~~」
和矢に釣られて、新井麗子まで私を罵倒して来た。唇を噛みしめ、2人の思う壺なこの状況に私の体が怒りで震える。
――すると突然、私を軽蔑の目で見ていたギャラリーの中の一人が、『なにか聞こえない?』と言い出した。その言葉に、みんなが「え?」と耳を澄ます。
……確かに、ちょっとノイズの入った男女の話声?の様な音が聞こえる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます