プレゼントは大成功2
「このランチ、いつ食べたの?」
メニューを見ると、どうやら最近始まった期間限定のランチみたいだった。
「こないだ、紗月が実家に帰るのにここで別れた時」
「ああ、あの時にはあったのね」
くそ~!私もその時一緒に食べたかったなぁ!
そう悔し気に言ったら千歳が、
「アンタはあの時ここに居なくて正解だったわよ」
とため息交じりに呟いた。
「え?なんで?」
「なんでも」
「なによ、途中で止めないでよ。最近の千歳、おかしいよ?変な事毎日の様に聞いて来たり、今みたいに意味深な発言だけして理由を教えてくれないし」
「時期がくれば分かるわよ。…まあ、そんな時期、来ない事をアタシは祈ってるけどね」
お冷に入っている氷をガリガリ砕きながら食べている千歳が、吐き捨てる様に言った。
なんだろう。
この話をすると、千歳がすごくイライラし出す。その証拠に、また氷を噛み砕いて食べてる。
「なんかあったの??」
「別に何もないわよ。アンタは気にしないで毎日課長とラブラブしてりゃ良いの」
「あのね……」
私は本気で心配して聞いたのに、千歳は人をおちょくる様な返事しか返さない。
(なにがなんでも言いたくないんだな)
こうなっては、
「お待たせいたしました。ランチのAがお2つになります!」
「ほら、来たわよ」
「わっ、美味しそう!」
目の前に置かれたお皿からは、食欲をそそる良い匂いが。
「ごゆっくりどうぞ。…あ、コーヒーも付きますが、食後になさいます?それとも今お持ちします?」
と聞かれたので、千歳にどうする?と尋ねた。
「食後にして下さい」
お手拭きで手を拭いている千歳が店員さんに言うと、店員さんが私に視線を移したので「私もそれでお願いします」と言った。
「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ」
ペコっと頭を下げた店員さんが、すみませーん、と言う声に反応して行ってしまった。
「あー、お腹空いた!食べるぞ~!」
千歳の煮え切らない返答にちょっとモヤモヤを抱えてはいるけど、今は目の前にあるランチを食べる事でそのモヤモヤを解消しよう。
うんうん、と頷き、私たちはあっという間にランチを平らげた。
*****
「そう言えばこないださ…」
「うん?」
食後のコーヒーを飲みながら一息ついた私たちは、何てことないおしゃべりを繰り広げていた。
「受付の……あっ……」
そこまで言って、思い留まった。
そうだ、私の胸だけに留めて置こう、と思っていたじゃないか。『新井麗子が不倫をしていた』なんて、確証もないし簡単に言いふらして良い物じゃないだろう。
「いや、やっぱなんでもない!」
私は慌てて首を振った。
しかし、普段他人の事なんて全く興味のない千歳が、思いの外この話に食いついて来た。
「受付の、なに?なんかされたの?」
少し睨みを効かせて問い詰めて来る千歳に疑問を抱いたけど、私は「なんでもない、なんでもない!」とこの話を切り上げようとした。
そしたら、
「紗月、言い掛けて言わないのは気持ち悪いわよ。言いなさいよ」
なんて言って来るもんだから、私は自分の事は棚上げか!?とちょっとばかりカチンと来て、
「千歳さん?それ、そのままそっくりアナタにお返ししますけど?」
と言ってやった。
「アタシ?アタシはそんな事してないわよ」
「はぁ?」
しれっと何言っちゃってんだコイツは。
『アタシは悪くありません』みたいな澄ました顔でコーヒーを飲んでいる千歳にイラつき半分、呆れてしまって、私は脱力して額に手を当てた。
「……もういいや、この話は止めよう。絶対堂々巡りだから」
「そうね」
ケンカになるのも面倒だし嫌だから、この話は切り上げよう。
折角の千歳の誕生日だ。私が大目に見てやろうじゃないか。
「で?昨日、今日で変わった事は無かった?」
千歳の言葉に、大目に見てやろうとしていた私の決心は何処かへ飛んで行ってしまった。
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