課長との生活の始まり5

「はい、どーぞ!」


ズイッ!と頭を差し出した。


「……え?」


私の取った行動が思いがけない展開だったのか、課長がのけ反る。


「だって、頭撫でたいんですよね?それ位、お世話になっているのでいくらでもどーぞ」


私は目を瞑り、そのままの姿勢で留まる。


「いいのか……?」


震える声で課長が問い掛けて来たので、私はそのまま頷いた。


少しの間――。


フワッと、私の頭に温かい感触が乗る。課長の手は少しだけ震えていて、なんだかおかしくなってしまった。


「どうですか?」


「…………」


なんの反応もない。

目を開け、視線だけを課長に向ける。微笑む顔は切なさもはらんでいる様で、こちらまで切なくなる表情。


(多分、ルイちゃんの事を思い出しているんだろうなぁ)


どれくらいそうしていただろう。

立っているのもちょっと疲れたので、課長に座ってもいいですか?と尋ねたら、なんと膝枕を要求された。


「え?私がですか?」


「いや、俺が」


「え、私がされる方って事ですか?」


「そう」


「なんかそれ、変じゃないですか?」


「いや全然?」


首を振った課長の右手にはブラシのような物が。


どうやら準備万端の様だった。


ああ、なるほど。私が課長を膝枕した場合、課長が私の頭を触れなくなるのか。


課長はソファに腰を下ろして、バッチコイ☆の体勢でいる。


「……分かりました」


私も別に膝枕をしてもらって嫌な気分にならないし、ここは素直に従う事にした。


「これでいいですか?」


「うん」


決して寝心地は良くない課長の膝枕。


(男の人の太ももって、こんなに硬いんだね)


課長は余分なお肉が付いていないせいか、よりゴツゴツしている。

私は今の状態を想像して、クスっと笑った。


「どうした?」


「いえ、本来なら私が膝枕をする側なのになぁ、と思いまして」


「そうか?嫌か?」


「いいえ、全然。むしろ新鮮で楽しいです」


「確かに、俺も女性を膝枕したのは初めてかもしれない」


「そうなんですか?まあ、普通なら男性側がして欲しい、とお願いするんでしょうけど、でも私たちの場合は私が課長を膝枕してしまったら課長が私の頭を触れないですもんね」


「そうだな」


「なので、またお願いしてもいいですか?」


「え」


「課長に発狂されたら困るんで」


「あ、ああ。中条がいいなら俺は全然構わないが」


「じゃあよろしくお願いします」



――こんなやり取りをした次の日から、課長は私を膝枕する様になっちゃって。


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