親友の存在に感謝

「ごちそうさま」


「はい。おそまつさまでした」


今日のお弁当は本当にお粗末だった。

でも千歳は綺麗に全部平らげてくれた。それだけで、なんだか満たされるモノがある。


「合コンでもすっか」


また千歳が、突拍子もない事を言い出す。危うく飲んでいたお茶を吹き出す所だった。


「はい?なに?急に」


「いや、新しい出会いが必要かな?と思って」


「ああ、なるほど」


「うん。どう?」


「んー。しばらくは良いかなぁ」


「そう?」


「うん」


「そっか」


「ありがとね」


「うん」


サワサワサワ―――。


風が本当に心地いい。


(午後の仕事なんてサボって、このままここで寝たいな)


そう思って、ふと気が付く。


「てか、千歳は合コンなんて行ったらダメでしょう」


「え、なんで?」


「なんでって」


コイツ、自分がモテるって事を分かっとらんのか?そんなんで合コンなんて行ったら、彼氏のケンさんが心配するでしょうが。


そう言ったら、


「ああ、そうだねぇ」


と、気の抜けた返事が返って来た。


「ケンさんに同情するわ……」


これじゃ、心配になるケンさんの気持ちも分かる。


(ケンさん、ご愁傷さまです)


胸の前で両手を合わせる。


頭の中で、チーンと言う音が響いた。


「なにやってんの?ホラ、お昼休み終わっちゃうよ」


「あ、はいはい」


私は急いでお弁当箱を片付け、先に歩き出した千歳の元へ小走りで寄った。


鼻歌を歌いながら「今日は気持ちが良いね~」と背伸びをする千歳。それを見ていたら、なんだか物凄く「ありがとう」を伝えたくなって、ボソッと呟いた。


「ありがと」


でもその瞬間、強い風が吹いて、私の言葉が掻き消されてしまった。


「へ?なんか言った?」


「ううん。なんでもない」


「そ?」


感謝の言葉は風が連れ去って行っちゃったけど、千歳が笑っているから本当は聞こえたのかもしれない。


千歳が居て良かった。


失恋の傷はまだ癒されないけど、千歳がいればあっと言う間に立ち直れそうだ。


「さー、午後もガンバロー!!」


「張り切り過ぎてミスなんかしないでよ」


「そしたらフォローよろしく!」


「はあ?絶対ヤダ」


「なんでよー!」


二人でキャッキャしながら歩いていると、みんなが訝しげな顔をしてこっちを見る。


でもそんなの関係なしに、私たちは笑いながら公園を後にした。


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