千歳が和矢を嫌う理由

「言わんこっちゃない」


アタシは、目の前で酔い潰れて寝ている紗月を見て、大きく息を吐いた。


焼酎のお湯割りを頼んだ後も、日本酒だワインだビールだなどと頼んでいた。こうならない訳がない。


「……かずや……」


紗月が寝言でアイツの名前を呼んでいる。


「はぁ。なんでそんなにアイツが良いんだろ……」


アタシは、紗月の彼氏である「高橋和矢」が大嫌いだった。


特別接点なんてない。でも、嫌いな理由は明確にある。


アイツは、何人もの女と浮気をしている。


紗月は多分、知らない。じゃあそれをアタシが知っているのはなぜ?って?


簡単。


アイツが他の女とホテルに入って行くところを何度も目撃しているから。


アタシが把握している限り、3人。


もしかしたらもっといるかもしれない。


一度、女を連れてホテルに入ろうとするアイツを取っ捕まえた事があった。紗月に報告する、と言うと、アイツは涙目になりながらこう言った。


『頼む!全部の女と手を切るから、紗月には言わないでくれ!所詮浮気なんだよ!それに、紗月はオレと結婚したがってるみたいだし、親友の幸せ奪いたくないだろ!?』


と、紗月との結婚を持ち出して来た。


確かに紗月はあのクズと結婚したがっている。


アタシにはあんな男のどこが良いのかサッパリだし、紗月の幸せを願うならこんなクズとは別れろと言ってやるのに、強く出る事が出来なかった。


それから今日まで、この事は紗月には話していない。


もうあのホテル街でアイツを見かけないからその後どうなったのかは分からないけど、本当に全ての女と手を切っているのだろうか。


紗月の話を聞いていると、まだ続いている可能性が高い気がする。


今日だって「友達」って言っていたみたいだけど、それが男なのか女なのか分からない。


アタシには、浮気相手と会っている様にしか思えなかった。


(やっぱり、教えた方が良かったかな……)


でも、紗月がアイツを好きな事も知っているから、どうしたもんかと、今日まで来ている。


「しかし……」


完全に酔い潰れてしまった紗月をチラッと見る。


そんな事より今は、酔い潰れた紗月をどうするかだ。流石にこうなってしまっては、アタシ一人の力では送って行く事が出来ない。


「う~ん……あっ!」


少し悩んで、良い事を思いついた。


時計を見ると、22時を少し回った所。アタシは携帯を取り出し、ある人に電話を掛ける。


その人物は、3回目のコールで出てくれた。


「……あ、もしもし、三嶋です。夜分遅くに申し訳ありません。今お時間よろしいですか――」


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