第15話 回復魔法のキケン?
そして次の日の明朝……ルアは由良と共にある場所へと向かっていた。
「ねぇ、お母さん?」
「ん~?なんじゃ?」
「今どこに向かってるの?このままだと魔物がいる森に入っちゃうけど……。」
「着けばわかるのじゃ~。」
言われるがまま、由良の後ろに着いていくと……どんどん魔物が蔓延る森の奥へと入っていく。
そして見覚えのある場所まで連れてこられた。
「あれ?ここって……。」
「うむ、以前ルア達がオーガと戦ったというゴブリンの村じゃ。」
そう、ルアが案内されたのは以前オーガと戦ったゴブリンの村跡地だった。
住人となるゴブリン達がいないせいか、建物は壊れたまま野放しになっている。
「あ~っ、由良さんこっちです~!!」
辺りをキョロキョロと見渡していると、奥の方からエナの声が聞こえてきた。
「む、お主の方が早く着いておったか。」
「ついさっき着いたばかりです~。」
ゴブリンの建物の影からひょっこりと顔を出したエナ。やはり彼女の背は高く、ゴブリン達の建物では全体像を収められない。
「あ、エナさんおはようございますっ。」
「ルアちゃんおはよ~。今日は頑張りましょうねぇ~。」
ルアがエナと挨拶をかわすと……。
「う~……私もいるよ~ルアちゃん。」
「あっ!!クロロさんもおはようございます……って、だ、大丈夫ですか?」
エナがクロロのことをおぶっていることに気がつき、クロロにも挨拶をするものの、彼女の様子がおかしいことにルアは気が付いた。
「うぅ~……全身筋肉痛なの~。」
「くっくく……昨日さんざんしごいてやったからのぉ~。一昨日よりも酷いじゃろ?ほれっ……ほれぇっ♪くくくく……。」
「んにゃあぁぁぁっ!?!?」
筋肉痛でぐったりとしているクロロの太ももを、面白そうに由良がつつく。すると、面白いようにクロロの体がビクンと跳ねる。
「さてさて……こんな状態では修練なんぞできんからな。」
笑いすぎでひ~ひ~言いながらも由良はクロロに手をかざした。すると、淡い緑色の光がクロロを包む。
「……!!ふっか~つ!!」
エナの背中から高く飛び上がり、クロロはみんなの前に着地する。
「今のって……回復魔法?」
「そうじゃ。そして、これが今日のルアの目標じゃ。」
「え…………えぇっ!?」
あっさりと言ってのけた由良に、思わずルアは驚きの声をあげた。
「大丈夫じゃ、それだけ魔力を自分の中で扱えるなら筋肉痛を治すぐらいならば今日中にできる。」
「ホントかなぁ……。」
「由良さん!!私は何を目標にすればいいんですか?」
不安がるルアの横でクロロが由良に問いかける。
「ん?お主の目標か?そんなもの決まっておろう?筋肉痛にならなくする。ただそれだけじゃ。」
「はぁ~い、それじゃあクロロちゃんはこっちで~す。」
「え?あ……ちょ、ちょっと~!?」
困惑するクロロをずるずるとエナが引きずってどこかへと消えてしまう。
そしてその場には由良とルアの二人だけが取り残された。
「さて、ではまずルアには……回復魔法の正しい使い方というものを教えておこうかの。」
「……??回復魔法って……回復させるから回復魔法って言うんじゃないの?」
「そう、その通りじゃ。じゃが、回復魔法は誤った使い方……そして誤った知識を用いて使うと大変なことになるのじゃ。」
ルアにそう教えを説いている由良のもとに、風切り音とともに突然矢が飛んできた。
しかし、その矢は由良に届くことはなく、由良の手前で何かに阻まれたようにピタリと止まってしまう。
「矢!?」
ルアは攻撃されたことに気がつき、腰に差していた剣を鞘から引き抜いて構える。
「さて、ルアや。今から回復魔法の危険性を教えてやろう。」
矢が飛んできた方向に手をかざし、人差し指をクイッと自分の方に曲げながら由良は呟く。
「
すると瓦礫の影から一匹のゴブリンが、まるで何かに引きずられているかのようにずるずると、由良の足元まで引きずられてきた。
「さっきやって見せたように、回復魔法とは本来回復を目的として使うものじゃ。じゃが……少しでも加減を間違うと…………。」
動けなくなっているゴブリンに由良が手をかざすと、先ほどとは違う明らかに濃い緑色の光がゴブリンを包んだ。
その次の瞬間…………
「グギュゥッ!?」
まるでカエルが潰されたときのような、ひしゃげた悲鳴をあげながらゴブリンの体が突然ボンッ!!と大きく膨張した。
「~~~っ!!」
「これは魔力の配分を間違え、多すぎる魔力を相手に与えてしまった場合に起こる現象じゃ。明らかに魔力の色が濃かったじゃろ?」
「う、うん…………。」
「よいか?回復魔法は一歩間違えれば……使った相手を殺しかねない魔法なのじゃ。それを肝に刻み修練をするのじゃ。」
この時ルアは改めて実感した。自分がいったいこれから何を学ぼうとしているのかを……。
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