第39話 恨み

井口君からクリスマスプレゼントにシュシュを貰った翌日。


お礼を言うためにラインをしようか悩んでいると、そのまま寝てしまい、結局お礼を言えずにいた。


翌日、当日予約のお客さんが来たり、空いている客室の大掃除をしたりで、バタバタする日々を過ごし、結局お礼のラインを送ることすら忘れてしまい、年末年始を迎えていた。


年末年始は民宿で過ごし、新年の挨拶周りにきた家族とともに帰宅。


自宅に帰った後は、冬休みの課題に追われ、井口君へのお礼のことなんて、頭から完全に離れていた。


課題がやっと終わった頃、始業式を迎えていたせいで、まったくと言っていいほど遊びに行けず、千絵と綾乃がマルの様子を見に来るだけだった。



始業式を終え、帰宅しようと結衣子ちゃんと歩いていると、美穂ちゃんと朋美ちゃんが私の前に立ち塞がり、美穂ちゃんは私を睨みながら言い放つ。


「恨むから」


「は?」


美穂ちゃんはそれだけ言うと、朋美ちゃんとともに学校を後に。


言っている意味が全く分からないまま、結衣子ちゃんを見ると、結衣子ちゃんも『よくわかんない』と言いたげな表情で私を見つめるばかりだった。



不思議な気持ちを抱えたまま迎えた翌日。


美穂ちゃんから言われたことばかりを考えていたら、お弁当を余分に持っていくことどころか、スマホまで忘れてしまい、ハッとそのことに気が付いた時は2時間目の終わりごろ。



『やば! お弁当、強奪される!!』



授業なんか頭に入らず、そのことばかりを考えていた。



昼休みになると同時に、結衣子ちゃんに事情を話していると、青山さんが声をかけてくれて、教室で食べることにしていた。


青山さんの影に隠れながらお弁当を食べていると、廊下から教室の中を探るように見てくる愛子の姿が…


愛子は私を見つけられなかったのか、慌てたようにその場を後にしていた。


思わず安堵のため息が零れ落ちると、磯野さんが顔を近づけ、小声で切り出してきた。


「今の渡辺愛子、康太とバイト先が一緒なんだってね」


「え? そうなの??」


「うん。 渡辺は週2しか入ってないんだけど、バイト先の先輩の紹介だから、ほぼ即決だったって。 電車で通ってるらしいよ」


「へぇ… そうなんだ…」


「椎名美穂は面接落ちたらしいけどね」


「え!? マジで!?」


「マジマジ。 面接のときに、土日祝日は絶対に出れませんって断言してたって。 ガソスタじゃなくても、受かるわけないじゃんねぇ?」


磯野さんの話を聞き、美穂ちゃんに言われた言葉を思い出していた。



『それで「恨むから」って言ってきた? 私、全然関係なくない? でも、それ以外に思い当たる節がないし、ラインはブロックされてるし、なんなんだろうなぁ…』



考えたところで答えが見つかるわけもないし、本人に聞いたところで、口汚く罵られることも想定できる。


気になることは気になるけど、何が原因かを本人から聞き出したくはない。



『気にしないようにするしかないか…』



その後も4人で話しながら、お弁当を食べ続けていた。

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