第14話 休み
結衣子ちゃんの家に泊まった週明け。
教室に入ると同時に鈴本君とバッチリ目が合い、鈴本君はいきなり噴き出してきた。
「…何?」
「いや? 面白かったなぁってさ」
「何が?」
「ブンブン振り回して公衆トイレに駆け込んだやつ。 兄貴たちと麻雀してたら、ウーロン茶と間違えて、兄貴のウーロンハイ飲んじゃったんだよねぇ。 中尾からラインが来て、面白そうだから公園に行ったんだけど、あの酔っ払い、次の日、なーんも覚えてなかったよ?」
「え? マジで?」
「うん。 どっかの誰かと会ったことすら覚えてないってさ」
鈴本君の言葉を聞き、あんなに強く抱きしめられたことや、おもちゃのように振り回されたことを思い出し、無性に腹が立ってくる。
それを察知したのか何なのか、井口君は私に近づかなくなり、申し訳なさそうに遠巻きから見てくるだけだった。
井口君と話さないまま、テスト期間に入り、女子4人で勉強をしていたんだけど…
図書館で勉強をしている途中、飲み物を買いに行こうとすると、朋美ちゃんが切り出してくる。
「あ、私もなんか飲みたい」
「何がいい?」
「なんでもいいよ~」
『なんでも良い』と言っていたんだけど、お茶を買っていくと、露骨に嫌そうな顔し、飲み始める。
ジュース代を請求すると「後で」としか言われず、そのまんま。
こんなことが繰り返され、結衣子ちゃんは大きくため息をつき、私も苦手意識を持ち始めてしまった。
テスト期間を終えると同時に、テスト休みに入り、補習がないことを確認。
その日の夜には、おばさんの民宿へ向かっていた。
おばさんが民宿をやっていることや、泊まり込みでバイトに行くことは、結衣子ちゃんだけに話をし、固く口止めをしていた。
さすがは夏盛りといった感じで、平日も釣り目的のお客さんだけではなく、サーファーのお客さんも多く、週末は家族で遊びに来るお客さんばかり。
『今でもこんなに忙しいのに、夏休みになったらどうなるの?』
素朴な疑問を抱きながら、午前中は民宿の掃除や洗濯、ドンちゃんのお世話。
毎日、炎天下の中で動き回っているせいか、民宿の岩風呂が使える時間まで待っていられず、簡単にシャワーを浴びてすぐに就寝していた。
思いっきり汗をかいて動き回っているせいか、学校で起きた嫌なことや、朋美ちゃんに対する苦手意識は、完全に忘れ、井口君のことすらも思い出さなくなっていた。
登校日前日には、自宅に送ってもらい、翌日には学校へ。
日焼け止めをしっかり塗って動き回っていたせいか、肌が赤くなることもなく過ごしていたんだけど、朋美ちゃんと美穂ちゃんは真っ黒。
どうやら、二人で何度もプールに行っていたようなんだけど、結衣子ちゃんは一切誘われていなかったようで、苦笑いを浮かべるばかりだった。
私が誘えたらいいんだけど、明日からは本格的に夏休み。
泊まり込みで民宿の手伝いをしなくちゃいけないから、誘うことができずにいたんだけど、どうしても結衣子ちゃんが気になって仕方ない。
その日の夜、おばさんの民宿に行き、結衣子ちゃんにラインをしていた。
『結衣子ちゃん、夏休み中、どっかで暇見つけるから、遊びに行かない?』
“ごめん! こっちにいるとイライラしちゃうから、別荘に逃げることにしたんだ! 気持ちだけありがとう! お土産買っていくね”
まさかの別荘持ちと言うことに驚きつつも、ラインを送る。
『別荘ってすごいね! どこにあるの? もし近かったらあそぼ!』
“あ~… 海なし県の避暑地だからちょっと遠いかな… 気持ちだけありがとね!”
『海なし県の避暑地… 高級別荘地ってやつ??』と思いつつも、結衣子ちゃんの家を思い出すと、納得しかできない。
『また遊ぼうね』と約束をし、翌日のために就寝していた。
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