第3話 グループ

自宅に帰った後、急いで私服に着替え、待ち合わせ場所へ向かう。


「若菜~! 遅い~!!」


「ごめ~ん!!」


千絵と綾乃の3人で、近くにあるファミレスへ行き、食事をとっていた。


話の内容は、入学式のことばかりだったんだけど、話をすればするほどさっき起きたことを思い出し、人知れずイライラしていた。



『初対面の人に軽く見られるとか… ホントしつこかったしマジ最悪…』



ストローでアイスティの中に入っていた氷に八つ当たりをしていると、綾乃がスッとメニューを差し出してくる。


「デザート何する? この前奢ってくれたから、今日は奢るよ」


綾乃は何かを察知したのか、苦笑いを浮かべながらそう言い切り、3人で話しながらメニューを眺めていた。



翌日。


昨日のことがあったせいか、気乗りしないまま学校へ。


教室に入ると、私の席には昨日しつこく番号を聞いてきた井口君が座り、隣の席の鈴本君と話をしている。


軽くうんざりしながら自分の席に向かうと、井口君が切り出してきた。


「おはよ」


返事をしないまま鞄を机にかけると、井口君はいきなり私の鞄を手に取り、鞄につけていた猫のバッグチャームを見始める。


「猫好き? 確かスマホケースも猫だったよね? もしかして飼ってる?」


返事をすることなく鞄を奪い取り、教室を飛び出した。


『もう… マジで最低だ… あのナンパ師、ホントなんなの…』


女子トイレの中でしゃがみ込み、頭を抱えていると、予鈴が鳴り響く音が聞こえる。


急ぎ足で教室に戻り、井口君の姿がいないことを確認した後、自分の席についていた。



授業を終え、休み時間になると同時に、井口君は当たり前のように私の教室にきては、私の隣に立ち、鈴本君と話をしていた。


そのまま鈴本君と話をし続けてくれればいいんだけど、何かにつけて私に話しかけてくる。


「チャリ通ってことは家近い?」


「・・・・」


「若菜ちゃん、聞いてる? 若菜ちゃんってば。 聞いてんの?」


「聞いてません! 気安く名前で呼ばないでください!」


「んじゃなんて呼べばいい?」


「呼ばないでください!!」


怒鳴りつけるように言った後、教室を飛び出し、女子トイレでため息をついていた。



『なんなんだよもぉ… って、あれと3年間一緒ってことだよね? お父さんに頼み込んで、私立に転校させてもらおうかな…』



がっかりと肩を落としていると、一人の女子生徒がトイレに現れ、声をかけてきた。


「三浦さん、昨日から大変だね… あ、私、同じクラスの酒井結衣子。 よろしくね」


「…ども」


「井口君のグループって、不良っぽくてちょっと怖いよね。 警戒する気持ち、すんごいわかるよ」


その後も酒井さんと少しだけ話、チャイムが鳴る直前に、教室へ向かっていたんだけど、私の席には当たり前のように座る、井口君の姿…


自分の席には戻らず、時間ギリギリまで酒井さんの横に立ち、話をし続けていた。



このことがきっかけで、休み時間が来ると同時に、酒井さんの元へ行き、自然と出来上がった同じクラスの女子4人で話をするようになったんだけど、井口君は当たり前のように私の席に座る。



昼休みには、女子グループで屋上の手前にある踊場へ行き、立ち入り禁止ラインギリギリの位置でお弁当を食べていた。



お弁当を食べながら話していると、矢野朋美ちゃんが切り出してきた。


「若菜ちゃんって、彼氏いるの?」


その言葉と同時に、愛子と健太君のことを思い出し、お弁当を食べる手が止まってしまった。


「もしかして別れたばっか?」


椎名美穂ちゃんの言葉にため息をつき、顔を横に振る。


「全然違うよ。 彼氏もいないし…」


「そっかぁ… そういえば、H組の渡辺愛子ちゃんと同じ中学だったよね? あんまり話してないけど、仲良くなかった?」


「…どうだろね」


ため息を押し殺すようにお茶を飲み、4人で話し続けていた。

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