トイレットペーパー クリスマス 不在着信

 クリぼっち、とは恋人がいないで迎えるクリスマスなのか、本当に独りで迎えるクリスマスなのか。定義ははっきりしていない。正直、クリスマスに恋人がいなくても、家族とか友人らと楽しく過ごせればそれで十分なのだろうけれど、人とは欲の塊のようなもんで、恋人がいるか否かでカーストを分けたがったりする。

 私は、クリスマスが嫌いだ。某洋菓子店でアルバイトをしていた時に、10月頃の誕生日ケーキの予約が妙に多いのは、12月頃に作られた子供だと言うこと、つまりは聖なる夜ならぬ、所謂、性なる夜。

 ワンナイトやらなんやら。きっと計画的に作られた可能性が低い子供ができるクリスマス。貧乏人や低学歴に限って大量に子供を作りたがる。偏見かもしれないが。

 勿論、12月24、25日はクリスマスケーキの予約が大量で、当日は恐ろしいほど店は混んでいただろう。私は意地でもクリスマスにはシフトに入らなかった。


 別に構わないだろう。その分、年末年始にシフトに入っているのだから。店長はいい人で、その辺の愚痴を言わない人だった。私がベテランのアルバイターに入るのにも関わらず、絶対にクリスマスにシフトに入らないことを咎めはしなかった。

 実際、学校があったりしたことがあるのは本当のことだし。恋人と過ごすこともあったが、それは隠して別の理由をつけて休んだ。



 今日は12月21日。あと3,4、日で忌まわしい日はやってくる。計画性に欠けた子供が作られるからクリスマスが嫌いだし、忌まわしい日だなんて言うけれど、実際、私はクリスマスを楽しむ側の人間だった。恋人がいたときは恋人と過ごしたり、友達とプレゼントを交換し合ったりしていた。忌まわしい~だなんて抜かしながら、その日を楽しむ人間だ。矛盾を抱えている。それは、人間らしいことだと私は思う。


 自殺未遂を遂げてから、3回目のクリスマスだが、3回連続病院に入院した状態で迎えることになってしまった。なってしまった、とか言うけど、だけど、別に私はクリスマスは好きじゃないし、病院食がチキンとケーキになったところで大して嬉しくないし、そんなことより、死にたい気持ちの方が脳みそに蔓延っているワケで。



 今回の入院は、開放病棟であったため、パソコンと液晶タブレットを持ち込んで、創作活動に力を入れる日々なのだが、実家にいるより遥かに捗っていて驚いている。それは、今の私の病相が躁状態だからなのか、実家のあの薄暗い雰囲気の生活から脱することができているからなのか、正直わからない。

 いつだったか、夢中になって絵を描いていたら、母からの不在着信が入っていたときがある。何の用だと掛けなおすと、私に障害年金が下りることになったことの報告だった。母は全く使えない。普通、年金やら何かしらの収入があるときは、1番よく使う口座を登録するはずなのに、母の手元にある口座を登録していた。それじゃあ、その通帳やらを私の手元に移してくれなければ、私の障害年金ではないじゃないか。もし、母が使い込む、なんてことになったら、私は母を殴りかねない。そうなる前に、早く通帳を取りに帰りたいのだが、まだ退院はできないもんだから、困ったもんだ。



 入院中は、トイレやお風呂、洗面所などが共用のものになることがほとんどなのだが、私は開放病棟のトイレがあまり好きではなかった。閉鎖病棟のトイレはいつも綺麗で臭わないのだが、開放病棟のトイレは、まるで学校を連想させる様な臭いがこびり付いていて、それが嫌で堪らなかった。

 入院中の私は、トイレットペーパーをいつも三角折りにしているのだが、そうする人は他に見たことがない。そうしなきゃいけないと、決まっているわけでもないし、しなくて良いのだけれど。私はなんか、してしまう。次に使用する人が、すれ違い様だったとしよう、適当に切られたペーパーだったとき、なんて思うだろうか。「あの人の後のトイレめっちゃ不快~」だなんて思われたくない。私がいつも、そんな細かいところまで気にしているから、いつの間にか人に不快感を抱いているから、自分はそう思われないようにしようと思ってそうしているだけだ。これは一種の被害妄想なのだろうな、とか思ったりする。


 そんなこんなで、3年連続で病院での年越しになる予定の私だが、社会不適合者の私だが、今日も元気に生きている。今は生保の申請をして、恥を増やしながら生きている。

 生きる意味なんてないのに、死ねなくて、さながら動く屍のように、文章をだらだらと書きながら生きている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る