ノートパソコン アイドル 二度寝

 唾液腺が腫れておたふくかぜのようになっているアイドル。きっとこの子は摂食障害なのだろう。

 夕食時のテレビでやってるバラエティでは、現役大学生でありながらアイドルをやっている女の子についての取材が流れている。タイトルには“痩せの大食い”とあるが、食べ物を食べる順番や種類、そして髪の触角でも隠しきれてないエラが、彼女が過食嘔吐だと言うことを物語っている。

 私自身、摂食障害であるため、同じ悩みを持つ人たちと繋がるためにツイッターでは摂食障害の人たちと繋がるためのアカウントを持っている。

テレビを見ながら、ツイッターを確認すると、やはり、タイムラインはそのアイドルのことで荒れていた。「この子絶対カショオだって」「テレビでこういうあからさまなの流すの止めて欲しいんだが……」などなど……。

 先日、私は自身のブログで摂食障害について記事を上げたばかりなのだが、私のことを気にかけてくれている人たちは、それを読んで、「大変だったね」とか「治るといいね」とか、そんなメッセージを飛ばしてくれた。

 しかし、摂食障害は、なってしまったら最後、治らない病気だと、患っている患者の大多数は思っているだろう。今は外されてしまっているが、昔は難病指定されていたほどなんだから、易々と治るものではないと社会も言っている。


 番組が終わる頃、私も夕食を食べ終え、風呂に入ろうとテレビを消す。食器を片して、風呂へ向かう。今日はもう疲れたし、シャワーだけでいいかな……。本当は疲れているときこそ、湯船に浸かってリラックスするべきなのだろうが、それよりも早く横になってしまいたい気持ちでいっぱいで、湯を張ることは諦めた。

 私は、フリーターなのだが、摂食障害の他に、躁鬱とADHDを患っているため、仕事を当欠することが多かった。でも、今週は、しっかり薬を飲んでいたお蔭か、休むことなく仕事に行くことができた。当たり前のように週5で働いている健常者の人たちは本当に尊敬する。私のように病気を患いつつも健常者の中に溶け込んで働いている人もたくさんいる。その人たちには、尊敬と言う概念を超えた感情を抱いているのだが、私のように、障害年金を貰いつつ、足りない分をちょっとしたアルバイトで稼いで生活すれば良いのにな、とか思ったりもする。


 シャワーを浴びに、風呂場へ向かう。脱衣所でふと自分の身体を見ると、だらしなく太ったナニかが目に入り込んできた。ソレは、昔はぺたんこでなんとも思わない時期もあったのに、今ではぽっこりと飛び出ていて弛んでいる。本当に自分なのか? と疑問に思ってしまう。嫌で嫌で堪らない。せめて吐けるようになれば……。と思うが、食費がいくらあっても足りない、それでパパ活や援助交際をしていた頃の地獄には戻りたくない。

 自分なりに少しずつ治していけるはずだよ。

そう言い聞かせて、鏡を見るのを止め、風呂へ入った。


 上がってからは、学生時代、廃棄になる予定だったはずのパクってきたノートパソコンを立ち上げ、日記に近いエッセイをブログに残す。最近は、PCを立ち上げることと言うか、PCの前に座ることから億劫だ。週3~4しか働いていないし、自分の趣味に費やすことのできる時間は、多くの人よりは多いのに、それさえも鬱が邪魔をして無理になる期間がある。

 例えるなら、小説に自分のリアルの話を盛りすぎてエッセイのようになってしまったりすること。物語が書きたいのに何も思い浮かばず、自分語りしかできなくなってしまう。

 そんなのに、どこに需要があるんだよ。と思いつつ、それでも何とか小説になるように書き綴る。何事も、最後まで成し遂げねば経験値にはならないから。この文章だってそうだ。書いている今は、なんだこの駄文は、と思っていても、いずれ書ける傑作のためだと思えば、恥を重ねるぐらいなんてことない。ブログなんて詰まるところオナニーと代わらないのだから。


 ブログを書き終え、だらだらとネットサーフィンをしていると、時刻は21時を回っていた。就寝前の薬を飲まなければ。私は、できるだけ、入院していた頃と同じサイクルで1日を過ごせるように努めていた。

 ピルケースの中には、飲み忘れを含めた大量の薬が入っている。サイレースにデパスにフルニトラゼパム。麻雀なら数え役満みたいなラインナップだ。

 就寝前の薬は、数種類の安定剤と睡眠導入剤と眠剤と抗うつ剤。種類も数も多くて嫌になるのだが、しっかりと、毎日飲むことで、最低な気分がそれより下がることはなくなるから。


 明日は休みだし、ODしよう。ODなんてそんな軽々しい気持ちでやるものではない、はずだ。でももう癖になったように、何年も軽々しい気持ちで繰り返している。2回ほど死にかけたけれど辞められない。

 今日、就労後に立ち寄ったスーパーで購入した、ストロングなチューハイたちと一緒に、安定剤と眠剤を追加で流し込む。舐めて溶かせば舌が青くなる! ふるにとらぜぱむ! 気分は最高だった。



 スマホのアラームが鳴る朝の7時半。頭痛が痛い、そんな馬鹿げたフレーズを自然とツイートしてしまうほどの泥のような朝。ODしたことで完全に残ってしまった眠剤のせいでまどろむどころか、思考停止で行動不可な身体の重さ。

 昨晩の、謎のノリで生きていた自分を叩く。今日が休みで本当に良かった。これでは仕事には間に合わない。

 抜けきっていない眠剤に、思考と意識を奪われる。おやすみなさい……。


 二度寝から覚めたのは13時。完全にサイクルが乱れている。反省しなければ。反省しなければ、とか抜かしてもどうせまた数日後にはODして酒を飲んで爛れている自分が見える。

 病気じゃなければ、なんてのは甘えで言い訳か? 分からない。今日も死にたい最悪な気分だ。それでも、また、自殺に踏み切ろうとするほどのぶっちぎった気分ではない。とりあえず昼食兼朝食を作って食べよう。


 よっこいせ、とベッドから身体を起こし、動き出した3連休初日。

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