第9話
ユキへの償いが始まって、十日が経とうとしていた。
俺はずっと、ユキとの行為に相反する感情を抱いている。
ユキを穢すことへの恐怖。
そしてユキが欲しくて堪らない劣情。
生きている価値のない俺を、
誰よりも大切なユキが求めてくれるのなら応えるべきだと
恐怖を噛み殺してユキを犯してきた。
同時に、あれほどの凌辱をうけても尚美しく愛らしいユキを好きなように征服し
性奴隷のように扱うことに愉悦し、ユキとの情事に耽った。
こんなのは間違っていると思っているのに、
ユキがそばにいるだけで発情を抑えられない。
これ以上ユキを汚す前にユキから離れなければと思いながら、
ユキが俺以外の人間に身体を開くことだけは絶対に阻止したいと思っている。
自分という人間がどういう人間だったのかよく分からなくなってきた。
最近はよく眠れず、食欲もあまりない。
その日は夕方を過ぎてもユキから連絡が来なかった。
こんなことは初めてだったので、俺はヤキモキしだしていた。
ユキが誰かに襲われてやしないか。
まさか、誘惑に負けて俺以外の誰かと……。
焦燥に駆られて爪を噛みながら自室の窓から外を凝視していた。
数分ほどして、学校から帰ってきたユキが見えてきた。
ホッと喜んで俺は憤怒した。
隣に男がいる。
仲良さそうに笑って話しながら、家に向かっている。
突き破るように窓に張り付き、穴が開くほどその様子を見つめた。
心臓が燃えている。
頭は茹だって蒸発しそうだ。
ユキが男を連れたまま玄関を開けたところで、二階から駆け出していた。
階段を飛んで降り、自宅のドアを壊す勢いで開き怒鳴った。
「ユキィ!!」
まだ玄関の前に居たユキの腕をあらん限りの力で掴んだ。
「お前は帰れ!!」
ユキと一緒に居た男を殺す勢いで睨み怒鳴りつけると、
そいつは野鹿が狩人に追われ猛烈なスピードで山を駆るように去っていった。
そのままユキの家に上がり込んで、掴んだ腕を振り回すようにして
リビングの床にユキをつき倒すと制服を力任せにひん剥く。
「ケ……ケンスケ……なに……」
ユキがガタガタと唇を震わせ真っ青な顔で言う。
「約束を破ったな」脅すように低い声で言った。
「え、ち、違うっ……、さっきの子は、ただの後輩で……っ」
「なんで家に呼ぶ必要があるんだ? え?」
「ウック……、本……本を貸してって……」
「そんなの学校でも出来るだろうがァ!!」
俺は叫びながら近くにあった木製のリビングテーブルを蹴って吹き飛ばした。
家中に響く破壊音に驚いてユキが悲鳴を上げ泣き叫ぶ。
「今何時だと思ってる?! 十七時だぞ!! なんで連絡しなかった!!」
ユキの髪を乱暴に掴んで上を向かせて吠えた。
「さっきのヤツとやろうとしてたんじゃないのかぁ!!!?」
「違う……っ、違うよォ……」
ユキはポロポロと大粒の涙を流して言う。
事実がどうだろうと正直どうでも良かった。
ユキが俺以外の男に笑顔を見せていたことが、
どうしようもなく気に入らなかった。
「いいからしゃぶれ。そんなにしたいなら存分にやってやるよ」
ズボンを下ろしユキの口に一物を押し当てた。
「……いやだぁ……」
ユキは泣いて嫌がった。
俺はキレてユキの顔を殴ると、
無理矢理ユキの口に差し込んでガンガン腰を動かした。
「おぼ……グェ」苦しそうにユキが呻く。
充分な硬さになったらユキを引き倒し
後ろからいきなり突っ込んだ。
「ぃぎゃぁーーーーー!!!」
叫ぶユキの声は無視してユキの臀部を砕くように腰を打ち付けながら
背中や尻を思い切り平手で打った。
「気持ちいいなぁ……ユキ……! いいだろぉ……? なぁ……!」
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
ユキは叫び続ける。
そこに一切の快楽はなかった。
お前という存在は全て俺の所有物だと、
ユキに思い知らせるための制裁行為だった。
誰にも絶対に渡さない。
これからも一生お前は俺だけのものだ。
「きゃあ!! 何してるの?!!!」
入口の方から突然叫び声が聞こえた。
ユキの母親だった。
――終わった。
頭の中に静かな一言が響いて、
そのあとにはもう何もなく何も生まれず完全に白く死んだ。
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