第1話
ユキ、タカヤマ ユキノリは俺の幼なじみだ。
二個年下だがどこか気があって、
幼稚園の頃から大学生になった今でも仲良くしている。
隣人であり、友達を超えた親友であり、弟のようでもあり……、
とにかくユキノリは俺にとって特別な存在なのだ。
「相変わらず凄いなー……」
欧風の繊細な鉄柵に囲まれた、宮殿みたいにバカ広い校舎を横目に独りごちた。
ユキは、高名な政治家や世界的アーティストなどを多く輩出してきた、
国内でも有名なブルジョワ学校に通っている。
他の生徒を迎えにきた車が、まるで繁華街の客待ちタクシーかのように
うじゃうじゃとあるが、それらは全部
『そんなに長さ必要ある?と思うような車』や
『一台で豪邸が建つお値段で有名な車』なのだから、
俺のような一市民からすると壮観な光景だ。
ユキんちは親父さんが有名企業の役員で、有り体に言うと金持ちセレブ様だ。
家だって隣の我が家が倉庫か蔵かウサギ小屋か、と思えるくらいにデカいし、
金持ちの象徴、お手伝いさんだっている。
本当なら住む世界が違うので、隣家と言えど仲良くなんて出来なかったと思うが、
朗らかだったユキのお祖母さんとうちの母親が良く交流していて、
歳がそれなりに近かった俺たちもいつの間にか仲良くなっていた。
小学校に上がる頃までは家の違いなんて気にもとめずに遊んでいたが、
歳が進むにつれ徐々にユキとの格差に気づき始めた。
ユキのひけらかすことのない性格のおかげで仲良くいられたのだと思う。
とはいえ、ユキの母親は庶民の俺と可愛い我が子が友達なのが
気に入らないようだが。
ユキんちのおばさんは、まさに上流階級の家の人、という感じで肌が合わず
子供の頃からあまり好きになれないでいた。
親父さんは海外赴任が長く、会っても顔が分からないレベルで見かけない。
数年前に亡くなってしまったユキのお祖母さんは俺にもすごく優しくしてくれて、
顔をあわせる度に「ずっとユキノリと仲良しでいてね」と
口癖のように言っていた。
お祖母さんが何故しきりにそんなことを言ってきたのか、
分かるようになったのは最近になってからだ。
ご立派な門構えの校門前に、ちょこんと立つ学ラン姿のユキが見えた。
クラクションを軽く鳴らすとユキが駆け寄ってくる。
「ありがとー、ケンスケ」ユキが車に乗り込みながら言う。
「おお、行くか。パーカあるから学ラン脱いでこれ着とけ」
「うん」
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