第5話 味方は思わぬところに
そんな有美に祖母が呆れながら、
「あんたってどんだけ鈍いのよ!
味方ならここにいるでしょう!
ここに味方がいるじゃない!」と、
有美の前でどんどんと胸を叩く祖母に、有美が
「でも…あたしも…。」と、声を詰まらす有美に、
「どちらにしたって、今のあんたじゃひとりじゃ
何にも出来ない!
自分の親御さんにすら、その様子じゃまともに
話しが出来そうにないじゃないよ!
それとも、このままタイムライン(中絶不可能時期の22週)を待って、なし崩しに子どもを産むつもり?」
と、そう言われて再び黙り込む有美に、
「せめて味方だって言ってるあたしを何で巻き込もうとしないのよ!
それでもしたたかを名乗るつもり?
そんな事で、どうやって子どもを守っていくつもりよ」と一方的にそう言われても、
有美にしてみれば返答に窮するばかりで、
今までは漠然としか捉えられていなかった世間の厚い壁が突如として現実の中に現れて、その和樹の厚さと高さにただただ圧倒されて、立ちすくみ、
不安と恐怖に煽り立てられる自分の気持ちにどっぷりと覆われてしまい、祖母の言葉の意味の半分も理解出来ずに、立ちすくんでいる状態になっていた。
そんな有美の状態を分かりすぎる程に見て取った祖母は、今は何を言っても無駄と悟り、
テーブルの上に置いてあったメモ帳に、
「一カ月後の11月3日にまた会いましょう。
それまでに、産むか降ろすか、もう一度
良く考えて返事をちょうだい。
いずれにしても貴方の親御さんに話しをしないと
いけないことを良く考えてほしいの」と
話し書きの様に書き残すと、
部屋の中で体育座りをして動かなくなった有美を残して、部屋から立ち去って行った。
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