第28話 シスコン野郎と変態系妹
皆には悪いが、先に風呂に入らせてもらおう。なにせ疲れているのだ。移動とか手伝いとか、俺休みに来たんですけど。愚痴っぽくつぶやきながら荷物から着替えを取り出す。あと、女性たち(澄野と身内)は買い物?に行ったらしくここには誰もいない。ちょっとエロい気分になりそう。
それよりも風呂だ。疲れを癒やす第二の手段だ。(ちなみに第一位は推し)
着替えを持ち、思いっきりドアを開けると、先客がいた。この顔からするに・・・結衣(妹)か。
「とうっ」
「ぐぇ」
鳩尾に俺より小さい拳が飛ぶ。むちゃくちゃ痛い。いつの間に空手習ったんだ?
「空手じゃないよ、兄さん。じゃなくて、ラッキー兄さん」
「エスパーか。というかラッキーってなんだ?」
「ラッキースケベの略。この変態。ヒキョー者。あたしにも分けてよ」
「・・・」
反応に困るな。特に最後の方。妹ってこんなに変態だったけ。下ネタ言わないまともな人かと思ってたけど。
と思っていると、さっさと着替えて風呂に入ってしまった。どうやら一番ぶろはお預けらしい。
けど、、、結衣か。
「ほんと。信じられないね。半年・・・つまり正月あたりのときは思いもしなかったよ。義兄ができるなんて」
「義兄では・・・ないかな?まあでも、俺も信じられなかたよ。妹ができるなんて」
「お互い初だったもんね。はーあ。あのときの兄さんは、結構エロそうな目つきで見てくるけど、居間ではただの凡人かー。なんかがっかり」
「まてまて。その頃の俺エロそうな目つきだったの!?絶対違うでしょ!」
「まあ冗談だよ。ココだけの話だけど、最初は気持ち悪いと思ってた」
「正直すぎるだろ。・・・でも、今思えば、けっこう必死だったな。初めてのことだったし。それに・・・嬉し、かったからな。新しい家族ができて」
「・・・・・・私も」
「え?」
「私も、嬉しかったよ。兄さんが話しかけてくれて、笑いかけてくれて。ずっと一緒だったみたいに接してくれて。すごく・・・嬉しかった」
照れたのか、湯船に潜る音が聞こえた。
「ああ。俺も。結構無視されてた気もするけど。楽しかった、お前といると」
「・・・あっそ」
気のない返事が帰ってきた。恥ずかしいじゃないか。真面目に話したのに。
「愛してるよ。結衣」
ずっと一緒にはいられないと分かっている。あと三年すれば社会人か大学生。結衣も高校生になる。仲が良くても、疎遠になるのは目に見えているのだ。だからせめて・・・今は。今は楽しんでおきたい。思い出を作って。笑って泣いて、幸せだと、実感できるような日々にしたい。
これが俺の、心からの願いだ。
「・・・・・・・・バッバカ兄!この変態シスコン野郎!」
「どうしたんだよ急に。さっきまでは穏やかだったのに」
「うるさいっ。この鈍感野郎!」
それっきり話しかけても返事はなかった。土王やら結衣は、まだ思春期真っ盛りらしい。
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