第25話 実家の意味
運転は栗原さんの元同僚の福嶺沙雪という人がしてくれた。用意されていたのは、大型の車で、5人位入れそうなスペースだった。かなり高かっただろう。一体どんな仕事なのだろうか。
「君があの、氷川ゆきね・・・。なるほど。言ってた通りだわ」
「なんです?」
「いや。ただ入り組んだ伏線を張っただけだから。気にしても無意味だよ」
運転手は謎が多そうな人だった。栗原さんの同僚か。
「今日の運転は任せて。かなりの近道を使うから、結構時間は短縮できると思うよ」
と、なんとも頼もしいことを言ってくれたので、多分大丈夫だろう。少ない着替えと、海用の水着を持ち、半年ぶりに家に帰るのだった。
**************************************
「起きて起きて。さっさと起きないと服脱がすよ」
「はっ。ここは一体・・・」
「ここは私の車の中で、あなた達は帰省しに帰ってきた。さっさと荷物運んでって、大して持ってないね。・・・まあともかく、望結さんの方はもうとっくに起きて、家に入ってったよ」
「はあ・・・ってもうあいついっちゃたんですか!?ちなみにどのくらい寝てたんですか、俺」
荷物をまとめ、、、本当に大して持ってきてないな。大丈夫なのか。
「ざっと、40分位かな。ゴメンねー。あんまりにも寝顔が幸せそうで・・・」
恥ずかしい。むちゃくちゃ恥ずかしい。俺は見られるんじゃなくて、見たかったのに。
「ともかく。さっさと行かなきゃ」
さり際に
「・・・久しぶりの実家、楽しんでね」
まさしくそれが本心のようだった。でも、あまりいい予感はしないんだけどな。
**************************************
帰ってきてそうそう、俺の胸に小柄な女性が飛び込んできた。澄野かと思ったが、案年ながら違った。
「ゆーちゃん。おかえり〜!」
「ぐはっっ。痛い痛いって。離れてくれ」
「もう、思春期なんだからっ。しょうがないなぁ、もっとハグしてあげるっ!」
「いいって。もう離れて。結構きついから」
「ダーメ。帰ってきたら、なんていうんだった?」
「・・・ただいま」
「おかえり、ゆき」
俺は、家に帰ってきた。懐かしの家と、家族の元に。
大げさかもしれないが、そう実感したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます