第21話 秋村華蓮の尻ぬぐい(長くて申し訳ない編)

これは、なぜ秋村さんが手伝うことになったのかの経緯である。

というかしょうもない話だ。


元々、ここは普通に掃除専門業者がやる予定だった。秋村先輩が余計なことをするまでは。誰もいなくなる時間帯を見計らってこの蔵に侵入。そして目的のものを探すうちにかなり迷ったらしい。そこで四苦八苦しながらも前進しているとうっかり油のツボを割った挙句、それに滑って先代の時代からある貴重な壺を2つも割ったらしい。どうしたらそうなるんだよ!?という突っ込みを抑えつつ聞いていると大体わかった。


要はうっかり壺を割ったのでここを掃除するよう手伝えと言われたのだ。ほんとしょうもない理由だな。


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前回までのあらすじ、、、っていらないよね。どうせここまで読んでるんだし。


「愛してる。」


「突然なんですか!?」


「いえ。ただ昔に思いを馳せていただけよ。」


「いやただかっこつけてるだけですよね。」


「話すことなくて案外気まずかったから、そのお空気を壊せるかと思ったんて。そんなわけないじゃない。」


「わかりました。今のですべてわかりました。」


たまに変な発言をする先輩を尻目に、俺は黙々と荷物を運ぼうとする。


「まるで勤勉を具現化したみたいな働きぶりね。というかいつ終わるのかしら。きりがないわね。」


「変なことしないでくださいよ。って雨降ってきたし。」


「仕方ないわね。仕事は一時中断よ。」


たいして働いていないように見えるんですが。と思いつつも、その意見には賛成だった。早く帰りたいんだがな。疲れた腰を休ませようと、椅子(段ボール)に腰掛けようとするとさっき先輩が持ってきたらしい他のよりも一回り小さな箱があった。木製で、なぜか周りを黒く塗りつぶされていたが。なんか不気味だな。これだけ持っていくか。まだあんまり降ってないし。


「はっ。ちょっと待ってええ。」


「うわっ。なんですかいきなり。あっ。危ないですよ。」


といったのに華蓮先輩は止まることができず、そのまま降り始めた雨で濡れまみれた地面へ見事なダイブをこなした。綺麗だなあ。


「ふう。ギリギリセーフ。」


「じゃないですよ!てかもろアウトです。早くこっちに入ってください。」


少し震えている華蓮先輩に俺は今着ている服をかけてあげる。今の先輩は少し頼りなさそうだ。俺がフォローしなければ。


「ごめんなさい。迷惑ばかりかけて。」


珍しくしゅんとした声で呟きが聞こえた。幻聴ではないよな。もしかしてこれが本音なのか?


「いいんですよ。正直俺は先輩に頼まれたから咲村さんと出会えたんで。面倒なこともありますけどね。というかめんどくさいことが大半でしたけど。そのせいで学校の人たちに避けられて、澄野以外にクラスの友達ができないんだよな。」


「ほんとごめんね。まさか君があそこまでするとは思わなかったよの。まったく彼女はイレギュラーすぎるのよね。」


今にもため息が出そうな表情だ。まあそこには同意できるが。


「あっち向いてて。着替えるから。まああなたには一回見られたから構わないかもしれないわね。」


「その黒歴史自分からひっぱり出さないでください。あっち向いてますから。」


全然怒ってなかったー。安堵しながら目を両手でふさいだ。俺は紳士だ。もうあんな惨事は引き起こさないと決めた決意をした漢だ。


「ふう。おごっ・・・ぷはっ。あれ?・・・ひゃっ。こっちじゃ。あっ、そこはっ。

あがっ。」


ドンっ、といつぞやの事件で聞いたことがあるような音が、先輩が着替えているほうから聞こえた。途中からエロボイスが混じってたような、、、恐る恐る後ろを振り返ると、そこにはあおむけに倒れて着替え途中の華蓮先輩がいた。


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「一時はどうなることかと思ったわね。大丈夫だった?」


「それは先輩に言うことですよ・・・。ってさっきでよく普通にいられますね。心臓は鉄かなんかですか。」


「鋼の心臓みたいに言わないで。前ね、当時知らなかった男子生徒に着替えを覗かれたことがあったのよ。それ以降、感情をコントロールしようと修行してたの。その成果ね、これは。」


すみませんというべきか、それはすごい理性ですねと言えばいいのか、、、分からん。

雨も本降りまではいかなかった。まだ曇りではあるものの、雨は無事やんだ。


「それじゃあ。今日のところはこれで解散にして、それぞれ自由になりましょうか。玄関まで送るわよ。」


すがすがしく言う先輩の言葉はすっきりしていた。よほど親に怒られたのだろう。後ろをついていく俺は、先輩の耳が見たことないくらい赤くなっていることに気が付いた。体が冷えたのか。風呂に入ってほしい。


ちょっと長い玄関までの道のりを歩きながら雑談していると、さっきまではなかった車が止まっていることに気付いた。誰か帰ってきたのだろうか。


「あ・・・」


「どうしたんですか華蓮先輩。急に立ち止まって。」


さっきまでの少し赤い顔が見る見るうちに青白くなっていき、いつかの瀬川さんを思い出させる顔色になった。その理由を俺は目の前を見ることで理解する。そこには仁王立ちの、結構年を取ってるおじいさんが威厳のある顔でこちらを睨んでいた。


「おじいちゃん・・・」


その一言に俺は、これから始まると思われる長い地獄に、軽く恐怖を覚えたのであった。


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