第19話 氷川ゆきのデートもどき
「ふあああ」
寝ぼけてダルそうな声をあげながらも、朝食の席である台所に向かう少年がいた。
その名を氷川ゆきという。かの、敏腕生徒会長のその麗しい裸を覗いたとうわさされ、今や学校中からさけられ気味な一人の平凡な男子生徒。
「おはよう氷川君。やっぱり朝は弱いんだね~」
そんな彼に食事を用意するのはこのアパートの管理者である栗原 “”“”“”“ さんだ。
「はいこれ」
もうそろそろ食べ終わるころ(朝食は量が少ない)に渡されたのは、茶色くてなぜかきってが3枚くらい張ってあった。これ送った人って抜けて、、、あれ?なんかデジャブが
「氷川眞澄って母さん!?どうしたんだ?」
そうわかったら思い切り封筒を破り裂いていた。母さんはいい人だ。ただ、大人としてはぎりぎりなまでゆるいだけで。
中から見えたのはチケット、、、チケット?
“水族館 ペアチケット”
「はあ。まあ使うけど。使うけどさ・・・なんでこれを送ってきたんだよ。」
意味わからん。普通はお小遣いとかでしょ。てか何で住所知ってんだよ
「あのー栗原さん。一緒に行きません?聞きたいこともあるし」
「ごめんね~今日は実家に帰らないといけないからね~。だから今日はレンジで温めてね~」
「ああそうですか。今日はいないんですか。」
澄野は消えてたし、秋村先輩の居場所は知らんないからな。友達少ないな、俺。ともかく今日はラノベでも買いに行くか。
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これが朝のことで、今現在なぜか瀬川さんと水族館デートっぽいのをしようとしてるわけだけだが、、、
「それじゃあ行こうか。」####ここは合わせて####
歩き出した瀬川さんを見て思い出した。(数分前のことだが)違うな。俺が誘ったんだ。ちょっと衝動的過ぎて忘れてた。でも俺、少しこの人との距離感がつかめないんだよなあ。俺の部屋であったあの一件は、そう簡単に忘れられないし。
「おお、すごげーでかいな。」
「確かにきれいだね。」
ここは入り口から入って少し歩いたところにある展示だ。壁一面に広がる海に、思わず興奮してしまった。はずい。
「すみません。ちょっと神秘的で。」
「確かに神秘的だよね。」
口調では相槌打ってても、何気に楽しそうじゃないか。素直じゃないなあ。
そのほかにもいろいろあった。紫色のクラゲや、中には深海魚までいた。目移りしながら回ってると、いつの間にかかなり歩いていた。てか瀬川さん大丈夫か?入院して大して経ってないらしいけど。
「瀬川さん、ちょっと休憩しましょう。」
「いや。大丈夫だよ」
少し青白い顔色で言われた。なわけないでしょ。ちょうど近くにカフェがあった。ちょっと休憩するか。
「はいこれ。好きかどうかわかりませんけど」
「ありがとう。おかげでだいぶましになったよ。」
きつそうながらも感謝を言ってくれた。こういうとこに育ちの良さか。ほんとにいい人だな。
「こっちこそすみません。無理させちゃって。」
「ううん。大丈夫。体力も結構治ってきたし。それに今日は楽しかったしね。」
少し笑ったようにしてそういった。かわいい。にしても今日は結構楽しかったな。
「またこういうの行きたいな。」
「ん?」と首をかしげる瀬川さん。よかった、どうやらこのつぶやきは聞こえなかったらしい。さすがに恥ずかしいからな。なんて思いながらふと思った。いつの間にか俺は瀬川さんへの距離を感じなくなっていた。
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