第19話 氷川ゆきのデートもどき

「ふあああ」


寝ぼけてダルそうな声をあげながらも、朝食の席である台所に向かう少年がいた。

その名を氷川ゆきという。かの、敏腕生徒会長のその麗しい裸を覗いたとうわさされ、今や学校中からさけられ気味な一人の平凡な男子生徒。


「おはよう氷川君。やっぱり朝は弱いんだね~」


そんな彼に食事を用意するのはこのアパートの管理者である栗原 “”“”“”“ さんだ。


「はいこれ」


もうそろそろ食べ終わるころ(朝食は量が少ない)に渡されたのは、茶色くてなぜかきってが3枚くらい張ってあった。これ送った人って抜けて、、、あれ?なんかデジャブが


「氷川眞澄って母さん!?どうしたんだ?」


そうわかったら思い切り封筒を破り裂いていた。母さんはいい人だ。ただ、大人としてはぎりぎりなまでゆるいだけで。

中から見えたのはチケット、、、チケット?


“水族館 ペアチケット”


「はあ。まあ使うけど。使うけどさ・・・なんでこれを送ってきたんだよ。」


意味わからん。普通はお小遣いとかでしょ。てか何で住所知ってんだよ


「あのー栗原さん。一緒に行きません?聞きたいこともあるし」


「ごめんね~今日は実家に帰らないといけないからね~。だから今日はレンジで温めてね~」


「ああそうですか。今日はいないんですか。」


澄野は消えてたし、秋村先輩の居場所は知らんないからな。友達少ないな、俺。ともかく今日はラノベでも買いに行くか。


*************************************

これが朝のことで、今現在なぜか瀬川さんと水族館デートっぽいのをしようとしてるわけだけだが、、、


「それじゃあ行こうか。」####ここは合わせて####


歩き出した瀬川さんを見て思い出した。(数分前のことだが)違うな。俺が誘ったんだ。ちょっと衝動的過ぎて忘れてた。でも俺、少しこの人との距離感がつかめないんだよなあ。俺の部屋であったあの一件は、そう簡単に忘れられないし。


「おお、すごげーでかいな。」


「確かにきれいだね。」


ここは入り口から入って少し歩いたところにある展示だ。壁一面に広がる海に、思わず興奮してしまった。はずい。


「すみません。ちょっと神秘的で。」


「確かに神秘的だよね。」


口調では相槌打ってても、何気に楽しそうじゃないか。素直じゃないなあ。


そのほかにもいろいろあった。紫色のクラゲや、中には深海魚までいた。目移りしながら回ってると、いつの間にかかなり歩いていた。てか瀬川さん大丈夫か?入院して大して経ってないらしいけど。


「瀬川さん、ちょっと休憩しましょう。」


「いや。大丈夫だよ」


少し青白い顔色で言われた。なわけないでしょ。ちょうど近くにカフェがあった。ちょっと休憩するか。


「はいこれ。好きかどうかわかりませんけど」


「ありがとう。おかげでだいぶましになったよ。」


きつそうながらも感謝を言ってくれた。こういうとこに育ちの良さか。ほんとにいい人だな。


「こっちこそすみません。無理させちゃって。」


「ううん。大丈夫。体力も結構治ってきたし。それに今日は楽しかったしね。」


少し笑ったようにしてそういった。かわいい。にしても今日は結構楽しかったな。


「またこういうの行きたいな。」


「ん?」と首をかしげる瀬川さん。よかった、どうやらこのつぶやきは聞こえなかったらしい。さすがに恥ずかしいからな。なんて思いながらふと思った。いつの間にか俺は瀬川さんへの距離を感じなくなっていた。

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