第12話 決めたのなら
これで彼女の話は終わった。正直に言おう、尻が痛い。なにせ動けなかったからずっと定位置に座りっぱなしだ。
「おい今尻痛かったなーとか思ってないよな」
「いや別に・・ってお前エスパーかっ」
「はあ?お前まじでそう思ってたの」
「それはさておき、俺はこの話を聞いた感想を言えばいいのか?」
「人が真面目に話してんのに・・・別にそう言ってないだろ」
「まあ面倒になるし、単刀直入に言うと最後のほうが聞き取りづらかったとか、意外と行動力ある方なんだなあとか、プライドでもあんのかなーとか」
「プライドって・・・」
「そりゃあ、プライドくらいしかないだろ。お前意地っ張りだし。それより、もっといい方法あるんじゃないかとか言ってほしいのか」
「・・・なんで、なんで私にそう言わないんだ?」
「知らんけど、お前もそれなりに考えて、悩んで、間違えて、色々あってたどり着いた答えなんだろ?それなら俺は何も言わないよ」
「あんたって、本当に何者だよ」
なんか急に話逸れたな。まあ終わったし一件落着か。大きく背伸びすると、いつの間にか秋村先輩がいなくなっていた。まさかの逃亡展開
「逃げてないわよ。お茶を注いだだけ。私の意見は・・・いらないわね。それじゃあもう寝るわ」
「いや、急にどうしたんですか。」
行きそうになる秋村先輩の右手首を思わず掴んでしまった。一体どうしたんだ?
「なんでもない・・・ただもう眠くなっただけ。それじゃ」
そう言って先輩は部屋に入っていった。残されたこちら側は、なんとも言えない雰囲気が漂っていた。でも疲れたし、俺も寝るか.。わざとじゃないが、咲村の方は見なかった。
◆秋村先輩の視点◆
ああ、やってしまった。恥ずかしい、特に氷川くんにあたっちゃった。誤解さっれたかな、私。そうやって悩んでん出たらいつの間にか背後に管理人さんが立っていた
「こんばんは、秋村さん。」
「ひゃっ」
「ふふふ、かわいい」
完全にからかわれてるなあ。この人は本当に謎だ。
「それで、かわいい恋する乙女は何で悩んでいるのかなあ〜?」
「恋って、違いますよ。な、にゃに言ってるんですか。そうじゃなくて私は・・・私はただ」
違う、これは絶対に違う。まあ確かに話すと緊張して変になるし、会うと鼓動は早くなるけど、これは羞恥心のせいだ。絶対に
「昔を思い出したり〜?」
やっぱり何でも知ってる。隠していてもこの人にはわかってしまう。まあそのくらいないとこのアパートは保てないだろうけど。
「あの子もあなたと近いんじゃないかしら〜」
「違います」
意外と硬い声が出た。自分でも驚くくらい。でもそうだ、私は、私は彼とも彼女とも違う。でもこれを彼に言うのは、まだまだ先だろう。できれば言いたくないんだけど。
でも意外だったな、解決してくれるなんて。氷川くんって案外熱血系だったし。もっとあの子のこと知りたいなあ。もっと彼の匂いを・・・
そうやってぼーっと考えているのを、管理人さんが企んだ目で見ているのには誰も気が付かなかった。
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