第11話 過去
はじめは見つめられ気まずそうにしていたが、話そうと決めたらしく、まっすぐこちらを見てきた。その目は決心したように、鋭い目だった。なんだか、とても羨ましかった。
「ふう、まああんたには借りがあるしね。」
「そういえば、俺ってなんかしたっけ?俺のおかげとか言ってたけど」
「それは・・・まあいろいろと(ブツブツ)」
そう、うつむいて呟いた。急にどうしたんだ、この子は。
「それで、桜さんはなんでこうなったの?正直氷川くんが戻すとは思っていなかったんだけど・・・」
「えっどう言うことですか秋村先輩!?」
「いや、もう何でもないわ」
諦めた口調でそういった。含みあるなー。言わないでおくけど
「それで、話してもらえる?」
「いや、ずっとあんたたちが話してるじゃん。」
んじゃ、話すよ。こうして、咲村さんの話が始まった。彼女の過去の物語が。
◆咲村さん視点◆
こうなったのを話すには結構前のことを話さないとな。めんどくさ。知ってるだろうけど私は咲村グループの社長の、一人娘で、今は益山中学校に通ってる。
そこでね大体2年前かな、私がまだ一年生になって大してたってない頃に事件が起こった。
それほどのことでもないけど、いじめだよ。その子は私の親友だった。情けないよね、だって私ずっと見ることしかできなかった。今思うとすごい弱くて惨めなんだ。それで時間が経つに連れて、そのいじめは終わるどころかどんどんひどくなっていった。止められなかった、いや介入したくなかった。巻き込まれたくなかった。当時私は有名人の娘として、グループの高い位置にいた。そこから動きたくなかった。ずっとここにいたかった。それで私は、関わらないようにしてた。それどころかいじめにも参加した。そんな矢先に、事件が起こった。
その子、Kさんとでも言うけど、その子が自殺未遂を起こしたってニュースが保護者間で流れてね。多分手違いだと思うけど。もちろんそれは生徒の中でも流れてね。初めて知ったときには衝撃だった。それでクラス、いや学年に最初に責められたのは私だった。ほんのちょっとだけだけど、これは近いうちに広がるって思った。こっちがいじめられると。うちのグループが無理やりもみ消したんだけど、生徒の記憶には残る。
先手を打って、不良になったんだよ。それしかできる方法はなかった。いじめられるのも怖かったけど、それよりも自分のしたことに気づいたのもある。追い込んだのは私。もう、もうやりたくない。昔はもっと仲が良かったんだよ。
だから繰り返したくなかったのもある。
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