転校生

✤ ✤ ✤ ✤ ✤


結局あの後星河にはお兄ちゃんって事は言わないで好きな人いるって教えたからもう誤解は解けてるはず!


いやいや、それより今は小林くんに返事を言わないと……1週間経った今でももちろん私の返事は変わってない。


ふぅ、と一旦深く深呼吸をしてから


「小林くん、1週間色々あって君のこと沢山知れたけど付き合うことは出来ません。ごめんなさい」


「・・・・・・あはは、やっぱりそうですよね、俺も1週間楽しかったです!ありがとうございました」


隣を歩いてた小林くんが苦しそうに笑って顔を向ける。そしてどこか吹っ切れたのか頭を下げて私から距離をとるように駆け足で行ってしまった。


・・・・・・やっぱり辛いなぁ……この後の練習に支障とか出たりしないよね?あぁ〜こんな時こそお兄ちゃんに甘えたいよぉ、もういっその事お兄ちゃんの事を彼氏って言いふらそうかな、そしたらもう告白されなくなるし誰も辛い目に遭わなくなるよね……


「練習始めるぞ!」


3年生の部長が一言大きな声で部員全員に聞こえるように言って朝練が始まった。


✤ ✤ ✤ ✤ ✤


「つく今日も朝練あったの?」


朝練が終わって教室で宿題やら教科書やらを準備してると後ろから背中をつつかれた。


「そうだよ〜しろは?」


「ん〜私は今日は休み〜それで作戦は成功したの?」


「もう完璧だったよ!昨日は一緒に寝られたし〜」


頬に手を当ててにやけ顔をクラスの人に見られないように隠す。こんな顔見られたら私の学校でのイメージが……でもみんなも好きな人と一緒に寝たのを思い出したらこんな感じになるでしょ!?普通だよね!


後ろからつついて来たのは朝霧あさぎりしろ。小学校からずっと一緒のクラスで私がお兄ちゃんの事を好きなことを知ってる唯一の友達でいつも眠たそうにしてるのんびりした子、可愛いからお兄ちゃんが好きになったらどうしようといつも合わせる時に思ってる……お兄ちゃんは私と結婚するんだから!あの約束通りね!


「お〜お熱いね〜」


「当たり前じゃん!」


「じゃあやっぱ前言ってた小林くんは」


「・・・・・・うん」


「まぁつくに告白する勇気があるだけ他の人とは違うよ〜クラスの男子の9割は遠くで眺めてかわいいかわいいしか言ってないんだから〜なんか噂だと3年の鷹也たかや先輩って人がつくのこと気になってるとか何とかって」


「・・・・・・鷹也先輩って誰だっけ?」


「え?知らないの?」


「お兄ちゃん以外の男の人に興味がなくて……」


鷹也、鷹也……あ!あのサッカー部の部長の人?いや、サッカー部じゃなくてバレーのあの背が高い人?それともバスケ?テニス?なんか名前は聞いたことあるような気がするんだけどいまいちどの人が鷹也さんなのかよくわかんない。


まぁどんな人が告白してきても可哀想だけど結果は変わらない。その鷹也さんがどんなにいい人でも私の中では絶対にお兄ちゃんより上に来ることはない。


「つくって本当にブラコンだね〜」


「ブラコンは妹にだけ許された特権なんだよ!私以外の人が″もし″お兄ちゃんの事を好きになったとしてもブラコンにはなれないからね!それにあんなに優しくてかっこよくて運動ができて勉強ができてたまにすっごく男らしくて……」


「お〜とまれとまれ」


「あ、ごめん」


まだまだ言い足りないー!お兄ちゃんの事を私に語らせてくれるならこんなちょっとの時間じゃ全然足りないけどもっと言いたいよー!お兄ちゃんに欠点なんて1つしかないよ!お兄ちゃんがブラコンを認めるようになってくれればもう完璧!それも時が経てばいずれあんな事やこんな事を正式に……くふふふふふふ


「なんか妄想してるとこ悪いけど時間見ろ〜」


「え?」


時間を見るといつもなら担任の先生が教室に入ってきてる時間になってる。急いでバッグから教科書類を取り出した机の中にごちゃごちゃと入れて机の横にかける。


すると


ガラッ


と準備が終わったタイミングで先生が入ってきた。


「今日は転校生が来たぞ」


先生が歩いて教室に入るとその後ろについてくように綺麗な金色の髪をした女の子が入ってきた。

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