告白

「兎佐美先輩、俺運びますよ!」


道具を部室から運んでると野球部の練習着を着てる丸刈りの小林くんが駆け寄ってきて運んでた道具を代わりに持ってくれた。


見た目と違って意外と重くて大変だったから正直すごい助かる。2人で並んで歩いてるとさっきまでと場の雰囲気が変わって小林くんの顔が少しづつ赤くなっていく。


「・・・・・・兎佐美先輩、あの時の答えって変わってませんか?」


その話になるよね〜もう駆け寄ってきた時点でわかってたよ、やっぱ避けることはできなかった……


私は1週間前、放課後の部活の後に話があります。と真剣だけど少し恥ずかしそうな顔をしてる小林くんに帰り際のタイミングで呼び止められたのだ。


この顔は今まで何回も見てきた顔。そしてこの後の展開も分かる。今まで何回この誘いの後に誘ってくれた人を悲しくさせてきたのかもう分からない。


✤ ✤ ✤ ✤ ✤


野球部の部員も他の部活の人もみんなが校門から出ていって人が少なくなっていく。


そんな中私は小林くんと校舎裏に居た。部活の後少し付き合ってくださいと言われてここに連れてこられたのだ。


「先輩、俺とずっと一緒にいてください!」


タイミングよく小林くんに夕日が差し込んで、夕日で顔が赤らんで見えるのかほんとに顔が赤らんでるのか分からない。でもいつもの小林くんじゃない事ははっきりとわかった。


告白。高校になって何故か急に頻度が上がり始めて相手に申し訳ないけどほんとに困っている。中学の時も少しはあったけど今ほどではなかった。


でも誰から告白されようが最初から答えは決まってる。


「・・・・・・ごめんなさい」


ちゃんとお辞儀をして告白を断る。返事は毎回決まってる。だけど毎回決まって言うまで時間がかかる。


顔を上げると小林くんはまだ諦めてないみたいだった


「1週間……」


「え?」


「1週間俺にチャンスをください!お願いします!」


流石野球部といった感じの声とピシッとしたお辞儀をされる。こんな事を言われたのは多分初めてだと思う。今までの人は1回断ると引き下がってくれたんだけどそれほどまでに私を好きなってくれたんだと思うとやっぱり嬉しいけどその分罪悪感がすごい。


ここはちゃんと断らないと


「ごめんね、でも返事は変わんないよ」


「それでもいいです!お願いします!」


う〜んどうしよう、今までと違うパターンでどうしたらいいかわかんないよ〜多分これ私がわかったって言うまで頭上げない感じかな?結果は絶対に変わんないけどそれでもいいなら小林くんの好きなようにやらせてあげよう。


「部活中だけだったら」


「ありがとうございます!」


1週間か……放課後の部活の後に時間を取られるのは絶対に嫌だけど部活中だけだったら別にいいかな。


でも私はそれでいいけど小林くんはこれでいいのかな?自分は相手の事を好きだけど相手が自分の事を好きじゃない上に告白して結果が変わらないとまで言われた相手と一緒にいるのはすごい辛いと思うけど……


「じゃあ1週間全力でアピールするんでよろしくお願いします!」


もう1回深々とお辞儀をしたあと全速力で校門の方に走って言ってしまった。


アピールね〜みんなに変な勘違いされない程度だったら全然いいけどもうこう言う展開にさせないようにしよ、このこと知られて男の人を取っかえ引っ変えしてるとか変な噂とかされたら大変だし。とりあえず1週間頑張ろ!


その日から今日までなかなかいつもより濃い部活の時間を過ごすようになっていった。


「兎宇佐先輩!俺持ちますよ!」


そう言って毎回私が運んでる道具を代わりに持って隣を歩いたりする事が多くなった。そしてことある事に


「兎宇佐先輩!」


と呼び止めて来るようになった。他の部員と人と喋ってるとわざと話をさえぎったりと嫉妬のような事をしたりするようになった。幸いにも他の部員の人には上手くバレない程度でアピールしてくるし、ちゃんとタイミングを見計らって私のとこに来るのは助かってる。それに小林くんは皆には特に何も無かったかのように振舞ってるし。


それでも星河は騙せなかったみたいで放課後の練習間に耳元で囁かれた


「月夜と小林って出来てんの?」


「違うよ!」


「ほんとか?傍から見たら完全に付き合ってる男女だぞ?」


ここで星河に事情を話さないままでいると誤解されたまま噂が経つかもしれないし事情を話した方がいいかな?でもこれ小林くんのプライバシーにも関わるかもしれないし……もうお兄ちゃんが好きって言っちゃう?別に星河なら他の人に言わなそうだし!でもお兄ちゃんに迷惑とかかからないかな?

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