お兄ちゃんのためだったら慣れない事だって


「お母さん、今日何作るの?」


「ん〜どうしようかな〜」


お母さんは冷蔵庫の中を見てん〜ん〜と悩んでいる。

人参、じゃがいも、鶏肉、玉ねぎ他にも色々ある。

普段料理してないからこの材料だとカレーくらいしか思い浮かばないけど他になんか・・・・・


「あ!久しぶりにシチューとかいいんじゃない?材料もあるし!お兄ちゃんも食べたがってたし!」


「あら、そうなの?」


「うん!」


そういえばシチューってカレーと同じ材料だったよね!前テレビでやってた料理番組で美味しそうなシチュー見てお兄ちゃん食べたそうにしてたし!私が作ってあげたらもっとお兄ちゃんとラブラブに!?そしたらあんな事とかこんな事とか・・・・・・うへへ///


「今日は私が作るよ!お母さんはアドバイスだけでいいからね!」


「あら、ありがとう」


よし!料理なんて家庭科の授業以外で全然やった事ないけどお兄ちゃんのために最高のシチューを作ってみせる!


シチューに必要な材料を冷蔵庫から出す。人参、じゃがいも、玉ねぎ、鶏のもも肉。牛乳とかはまだ出さなくていっか


「お母さん、これだけでいいの?」


「完璧よ、じゃあ私が野菜の皮向くから月夜は切ってちょうだい」


「了解!」


お母さんは野菜を水で洗った後包丁で次々と野菜の皮を向いていく。すごい、どうやったらそんな速さでそんな正確に出来るんだろう。私も練習したらこれくらい速く出来るようになるのかな?


そんなこんなで野菜全ての皮が綺麗に剥かれ、ボウルに全て入っている状態になった。


「月夜、乱切りってわかる?」


「家庭科で習ったから大丈夫だと思う」


なんか適当な大きさにザクザク切ってくあれだよね?

まな板の上に人参を置いて包丁を握る。


久しぶりに包丁を握ったからなんか緊張する


「いくよ!」


人参の両端をすこし切り落として包丁を少し斜めにしてザクザクと切っていく


「あら、上手よ!でも左手は危ないから丸めるのよ?」


「あ!そうだった」


そうそう、左手は猫の手にして、残りの人参をゴロゴロと切っていく


「切り終わったのはどうすればいいの?」


「こっちのボウルに入れて置いてね」


切った人参を何も入ってないボウルの中に入れる。

次は・・・・・・ゔっ玉ねぎ。私の宿敵!中学校の校外学習の時のカレーの材料を切る係だった私の目を攻撃してきたことは忘れてないから!


「月夜、包丁貸して」


「はい」


お母さんに包丁を渡すとトントントンと凄まじい速さで玉ねぎが切られていく。ほへ〜知ってはいたけど早すぎる、え〜っと確かこの切り方は、くし型切りだったかな?昔テストで出てきたような気がする。


「玉ねぎはこうやって切ってね」


「が、頑張る」


包丁を渡されて玉ねぎを切ろうとした時


「あれ?今日は月夜が料理すんの?」


「お兄ちゃん!」


欠伸をして眠たそうにしたお兄ちゃんが来た。お父さんの着替えを用意してたのかな?眠そうなお兄ちゃんもかっこいい!


「あら、眠そうね」


「さっきのも含めて色々あったから眠くて、ふぁ〜ご飯出来るまで寝てるわ」


「ご飯出来たら起こしに行くよ!」


「頼むわ」


お兄ちゃんもう寝ちゃうのかな?

・・・・・・あ!いい事考えた!


「お兄ちゃんちょっと来て!」


手招きをしてお兄ちゃんを呼ぶと、眠たそうにしながらもこっちに来てくれた。


「今から私は宿敵と戦うの」


「宿敵?」


「そう!だから戦いが終わるまで私の頭を撫でて力を分けて欲しいの!」


「ん〜わかった」


ふわっと私の頭にお兄ちゃんの手が乗ってゆっくりと私の頭を撫でてるのがわかる。ふわぁ〜顔が緩んでいく〜これが妹の特権!


「あら、やっぱり仲がいいわね〜」


「えへへ〜」


お兄ちゃん眠くて冷静な判断ができてない!普段だったら絶対にやってくれないけど今はやってくれる!

よし、これできっと大丈夫!玉ねぎ、今日は私が勝つからね!


「いざ勝負!」


玉ねぎを切るとやっぱり目に攻撃が……でも私にはお兄ちゃんの力が宿ってるし第1お兄ちゃんに泣いてる顔なんて見せたくない!勢いでやっちゃお!


お母さんみたいに速く切る事は出来ないけど今の自分の全速力で玉ねぎを切っているとさっきよりもわしゃわしゃと頭を撫でられて


「お〜月夜上手いじゃん」


「ありがとお兄ちゃん」


お兄ちゃんに褒められちゃった///私はもう満足だよ・・・・・・でもまだ戦いは終わってない!


嬉しすぎて少し頭がホワホワするけど大丈夫!今日は必ず勝つんだ!


トン・トン・トン


お母さんのような音は出ないけど今の自分の1番の速さで残りの玉ねぎを慎重かつ素早く切っていく

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