11. プールに来ました


 精神崩壊と人格分裂を引き起こした満身創痍まんしんそういの俺だったが、ここで止まるわけにはいかなかった。俺が止まっても、変態行為が消えることはない。例えこの身が滅ぼうとも、俺は人類の童貞を守らなければいけない。


 今日、俺たちは学外の巨大プールに来ていた。


「委員長、こちらです」


 水着姿の塩瀬が手をあげる。


 うっひょー、これは何のご褒美ですかぁ?


 いつも目撃するスクール水着姿もたまったもんじゃなかったが、今日の彼女は水色のしましまのビキニを着ていた。下着と同じ水色だ。どうやら塩瀬は水色が好きらしい。


 長い髪は後ろ手に結んでポニーテールにしている。白いうなじのラインが彫刻のようになめらかで美しい。塩瀬がメガネを外した姿はかなりまれだ。トキワの森でピカチュウに遭遇するくらい珍しい。可愛いったらありゃしない。


 そして何よりあのおっぱいだ。あんなにさらけ出してしまって良いものなのか? 俺が今まで見た中で最高にハレンチな物質だ。水着がはちきれそうじゃないか。


 さらに特筆すべきはビキニから伸びる太もも。普段はスカートの下に秘匿されている物質は、ある意味でおっぱいより価値が高い。あの太ももに挟まれて目を閉じたら、俺は5年間目を覚まさないに違いない。今すぐむしゃぶりつきたい。


 ぎぎぎ。


「せんぱぁーい。私の方も見てくださいよぉー」


 後ろから乳首をむさぼられそうになる気配を察してサッとかわす。


「もともと、私との約束だったじゃないですかぁー」


 同じく水着に着替えた小依がクスクスと笑いながら言った。


 そうだった。

 以前、卑怯な罠にはめられてあえぎ声当てゲームで敗北してしまった。その罰として、俺はわざわざこんな淫ら極まりないプールまで来てしまったのだった。


「どうです? 私の水着姿もじっくり観察してくださいなぁー」


「いやだっ」


「ダメですぅー。ほらちゃんと見てぇー」


 俺は凝視した。


 塩瀬に負けず劣らずのおっぱいは、小依らしい明るい色の水着の中でたゆんたゆんと震えている。ちょっと突けば熟れた果実のようにつるんと向けてしまいそうだ。普段より胸を寄せているのか谷間がきゅっと強調されている。深淵はいつもより暗く、底知れない空気をまとって「こっちへおいで」と誘っている。


 さらに驚くことにビキニのラインが、塩瀬の水着がやや水平寄りに対して、小依のものは45度に近い。もはやTバック。くるりと後ろから忍び寄ってお尻を見ると、これまた見事に育っておる。まるで収穫してくださいと言わんばかりの桃に、もうひとりのぼくが「食べたい。早く食べたい」と切実な声を発している。


「いやーん。そんなに見ないでぇー」


「仕方なく見てやってるんだからなぁ」


「やーん。公共の場で、やらしいことされちゃうー」


「早く行きませんか?」


 塩瀬がサッと凍りつく様な声を発した。


「そもそも小依さんはどうしてプールで化粧なんかしているんですか?」


「だってぇ、水なんか入りませんからぁー」


「今日の仕事は見回りです。変態行為はプールサイドのみならず、水の中でさえも行われているそうです。そのため今日は持ち得る限りの最強装備で臨むという話でした。そんな装備で大丈夫なんですか?」


「問題ないですぅー。だって悪い人は珠木先輩がやっつけてくれるんですよねぇー」


 腕に小依のおっぱいが飛び込んでくる。


「むう。ぶふう」 


「委員長は何度も精神崩壊を起こして病み上がりです。今回の作戦にも反対でしたが、どうしても行くというので、こうして護衛にやってきたのです。以前のようなことがあってはいけませんからね」


「うるさい人ですねぇー。あーっ、あんなところで波のプールにかこつけて乳繰り合っているカップルがぁー」


「むっ。変態行為発見!」


 脱兎だっとのごとく塩瀬が駆けていく。手には警棒を握りしめていた。


「ふふふ。邪魔者はいなくなりましたぁー」


 クスクス笑いながら、小依は俺に寄りかかってきた。


「さぁさぁ、先輩こちらです。日陰にいきましょー。太陽はギャルの天敵ぃー」


「しかし貴様、本当にこんなところでハレンチなことをするつもりじゃないだろうな。監視の目も多い。何より家族連ればかりだ。純粋無垢な子どもたちの前で、エッチなことをするわけにもいかない」


「バカですねぇ。無垢な顔した小学生に、さりげなくおっぱいを押し付けてエロガキに仕立て上げる数少ない場所じゃないですかぁー」


「そんなことをしてたのかっ。条例違反だぞっ」


「未来への投資ですよぉー、クスクス。それにぃ、小依ちゃんはちゃんとマナーとルールは守る子なんですからぁ」


 腕に持ったカバンからレジャーシートを取り出すと、小依はパラソルの下に広げた。それから自分の胸の水着をシュルシュルとほどき始めた。


「言ったそばから何を脱いでいるー?」


「まあまあ。見ててくださいなあ」


 手でおっぱいを隠した小依はコロリと寝転ぶと、甘えた猫撫で声で言った。


「せんぱぁい。背中に日焼け止めを塗ってくださいなぁー」

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