over extended.

「仕事。なに、してるか、きいていい?」


「なぜ」


「わたし、記憶ないって、言った」


「弱味を握りたいわけね」


「うん」


「正義の味方」


「うん?」


「正義の味方。仕事にしてる。街にはびこるわるい狐を退治してる」


「正義の味方。狐」


「よくわかんないって顔してるね」


「うまれてはじめてかもしれない。雨の日にあなたを理解できなかったのは」


「理解する必要ないよ」


 彼女は、狐だった。

 心根のやさしい、いい狐もいる。それが知れただけで、仕事数十回ぶんの価値はあった。今はそれだけでいい。それ以上は、いらない。


「なんでわたしを値踏みしてるの?」


「そこは分かるんだ」


「分かるよ。一緒にいるから」


「今度、仕事仲間に紹介するね。きみのこと」


「えっ。仕事仲間って、やっぱり、あんぱんのまんとか?」


「人だけど」


「なんだ。あんぱんちじゃないのか」


「いや、人じゃねえのもけっこういるな、そういえば」


「あんぱんのまんは?」


「あんぱんはいないなあ」


「そっか。残念」


 雨が、降っている。




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もうすぐ雨が 春嵐 @aiot3110

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