第5話 試験
試験当日の日。
何を行うのかは当然ながら知らされていなかった。
朝からお風呂に入れられて、執事服を着せられる。
「えっ!?これって執事とかが着る服では!?」
「旦那様の指示だ。」
ゴッサンは相変わらず野太い声で淡々と伝える。。
着せられた服は黒のスーツに蝶ネクタイ。
てっきり下働きの野良着かと思っていたので、かなり動揺している。
これって求められてるもの、違うんじゃね?でも賢い奴隷なら当たり前なのか?
「時間だ。」
ゴッサンに付いて行くが、ん?応接室に向かってる?
はて?試験するのに態々応接室を使う……メチャメチャ嫌な予感がする。
てっきり外での下働きか、旦那様の執務室で行う下男のテストと考えていたが、まさか応接室で実際のお客様相手じゃないだろうなぁ?動揺と緊張がピークに達したとき、応接間の扉をノックしろと告げられる。
ヤバい!これって、いきなり本番じゃん!
ドキドキしながらノックする。
貴族家でのノックの仕方って、どうだっけ?
数回のノックの後、返答がある。
「クロスです。お呼びが有りお伺いしました。」
えっと、これで良いんだっけ?頭の中真っ白です。
「入れ。」
「はい。失礼いたします。」
扉を開け、室内に入る前に一礼する。入室して扉を閉め再度一礼して、ゴッサンは来ていない事に気付く。
「旦那様、クロスが参上いたしました。」
え~?これで良いんだっけ?
口上違ったっけ?
「ああ、お前に紹介しておこう。こちらのお方は今度お前たちがお世話になるフリードリヒ侯爵様とご息女のサマンサ様だ。」
「はい。発言をお許しください。私、クロスと申します。どうぞ宜しくお願い致します。」
「うん。クロス君。…あ~お前の名前は言わない方が良いんだっけ?」
「申し訳ありませんが、仮の主人のため名前は伏せております。商人の主と仰って頂けると幸いです。」
「商人の主ねぇ…」
貴族の目には胡散臭い表情でイッパイになっているが、逢えてエルフの奴隷に関して触れないようだ。
ふと気づくと、既にロココとラササはメイド服を着て部屋の隅に控えているので、先に試験は行われたのだろう。
「改めてクロス君。色々聞いても良いかな?」
「はい。何でもお聞きになって下さい。」
「君は攫われて来たのかな?」
ブーーーッ
いきなりぶっこまれて流石に吹き出しそうだった。
旦那様の方を伺うと、大粒の汗をかいて必死に何かを伝えようとしている。
「旦那様?どう返答すれば宜しいでしょうか?」
もう旦那様に委ねるしかない!と、旦那様に振ったら全てを諦めたように旦那様が語りだした。
ただ、その会話は機密事項との事で、僕たちは別室に移される。
3人纏めて別室に移されて、ゴッサンが控えている。
ロココがこっそり耳元で聞いてくる。
「クロス、よくあの場で旦那様に聞けたね?」
「う~ん。だって想定外だったからね。」
「ロココたちの試験はどうだったの?」
彼女たちの試験はお客様への対応と、お茶の入れ方と、質疑応答だったそうだ。
中には性的な事も含まれていて、モヤモヤするって言ってた。
あれ?令嬢も一緒に居たのに性的な事も言われるんだ?
関係無いからどうでも良いのかな?
そんな話をしてる間に、騎士様たちが部屋に来た。
えっ!?騎士様?さっきは居なかったのに、いつの間に騎士様たちが登場したの?
「お前たちはそのまま控えておれ」
「「「はい。」」」
そのまま控えていると先ほどの貴族がやって来た。
「やぁ、お待たせ。」
なんだろ、この気さくな感じは?気を許すと断罪される未来かな?
3人で頭を下げ口上を述べる。
「ああ、堅苦しい口上は良いよ。正直な話を聞きたいんだよ。」
「「「はい。」」」
何のことだか分からないまでも恭順の意思を示す。
「まずは、クロス君だっけ?君から聞こうかな。」
「はい。」
「ちゃんと正直に答えてくれると助かるね。ここの主人の事は考えなくて良いからね。」
「はい。分かりました。」
その後は、ここに来るまでの経緯や待遇、何を言われたかなどを正直に話した。
最初に奴隷狩りに捕まった話は、かなり難しい顔をして聞いてくれた。
どんな男たちに捕まったか?等も聞かれたので、覚えてる限り伝えた。
あの汚い顔を思い出したら腹が立ってきたけどね。
ロココとラササは一緒に聞かれてた。ラササがまだ幼いのも有るんだろうけど、僕と違うのは獣人の村から金で売られたという事。口減らしって奴かな。
あと違うのは、男を喜ばす性的な方法を教えられたって事。
女の子だからそういう事も知ってないとダメらしい。
僕も村長に子供の作り方なんて少し教わったけど、全然違っててビックリした。
講師も女の人だったって。あのキツイ顔をしたシャディって女の人が居たよね。
貴族の人は頭抱えてた。
話し終わったら、ゴッサンが来て入れ替わりに貴族の人は出てった。
出ていく時に
この部屋で待機して居る事と、ゴッサンの言う事に従うように言い残して行った。
ゴッサンの名前を呼んだ気がするけど聞こえなかったね。
聞いてみようかと思ったけど、黙って座ってろと鋭い目で言われて大人しく座ってました。
ロココたちと話する訳でも無く大人しくしてると、屋敷の中が騒がしくっなって大勢が暴れてるような音が響いてたけど、少し経つと静かになった。
「終わったようだな。」
「「「??」」」
今まで真面に喋った事の無いゴッサンが話し出したので少々ビックリしてると、近づいてきて3人ともに隷属の首輪を外してくれた。
思わず首を擦ってしまう。
「どうして?」
「ようやくお前たちは自由になった。」
「「「???」」」
3人で不思議な顔をしてると、さっきの貴族の人が入って来た。
「お待たせ。」
ゴッサンから隷属の首輪を受け取ると頷いて、ゴッサンはそのまま部屋を出て行った。
「不思議そうな顔をしてるね。話してあげるから座って。」
さっきまで座ってた椅子に座りなおす。
「さて、色々疑問もあるだろう。先に自己紹介をしておこうか。僕はフリードリヒ侯爵家のカルロスという。我がスペンサー王国において衛士隊を率いる立場にある。」
難しい話も有って分からない部分もあったが、理解出来た事はこの奴隷商は前から目を付けられていて、ゴッサンはフリードリヒ侯爵様の手の者で今回エルフの子供が攫われて来たのを機に、手入れがあったって事。
関わってた人間は粗方捕まったので、もう大丈夫な事。
あの汚い顔のおっちゃんも捕まったのかな?
「では、次にこれからの話をしよう。」
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