(参加作品その3)山に登ロウ 女子バスケ部部長を登山中に助けたら大変なことになりました。(霧様)

   

『山に登ロウ 女子バスケ部部長を登山中に助けたら大変なことになりました。』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054908463657


【コンテスト名】第13回GA文庫大賞(後期)

【一次選考通過数/応募総数】300作品/1068作品



(私からの一言)

 第1話を読んだ時には、主人公とヒロインの出会いから始まる、まさに王道のボーイミーツガールだと思いました。見ず知らずの他人ではなく「ほとんど口をきいたことがない」というクラスメートなので、厳密には『ボーイミーツガール』と言ってはいけないのかもしれませんが、私としては『ボーイミーツガール』という認識でした。

 ただし、ラブコメとしては『ボーイミーツガール』がポイントだとしても、私が心惹かれたのは登山の話。アウトドアに詳しくないと書けなそうな知識も出てくる感じであり、しっかりした作品なのだろう、と引き込まれました。

 キャッチコピーが『ヤマノススメとかゆるキャン見て、アウトドア系ラブコメをラノベ風に。』ですからね。アウトドア関連の小説なのだと期待して読み始めていました。

 第2話は高校の話になりますが、サブタイトルも「ヒロイン二人目」となっているように、第二ヒロインが出てきます。それはそれで楽しめたのですが……。

 高校の話になってくると、少し「おや? 期待していた作風と違う?」という気になってしまいました。ラブコメという言葉から私が勝手に予想していたライト感はなく、いじめ云々がテーマなのだろうか、とも思えるような重さで物語は展開していきます。

 その後、時々は登山パートになりますが、むしろ高校の部活のギクシャクした問題について描かれる方が長かったです。確かに作品タイトルには『女子バスケ部部長』という言葉も含まれているのですから、バスケがメインだとしてもおかしくはありません。主人公が所属する部活ではなくヒロインがバスケ部なので、主人公視点で外から見た形で描かれるのですが、主人公は過去にいじめられていたという設定になっており、そこを部活のギスギスと重ね合わせる形ですね。これは上手いとも言えますし、「主人公がいじめられていた」という話を何度も引き合いに出すと読者の気分も落ち込むのではないか、と考えると、難しい点だとも感じました。

 メインヒロインのバスケ部の問題が片付いて、次のエピソードでは第二ヒロインの秘密が明かされて。さらに登山のエピソードが入り、そこで主人公の心の成長が確認される形で、物語は終わります。


 ……と考えれば物語は終わっているのですが、作品ステータスとしては「連載中」となっています。完結設定を忘れているだけなのか、まだ続きを書くつもりがあるのか、どちらとも判断できる内容だと感じました。

 二人のヒロインの問題へ第三者的に関わることで、主人公も少しは成長した。そういうお話だとすれば、文学的余韻を感じさせる終わり方だと思います。よくできた文芸作品です。

 でもキャッチコピーにあるような『アウトドア系ラブコメ』『ラノベ風』としては、物語はまだ途中ではないか。ヒロイン達とどういう関係に落ち着くのか知りたい、と思ってしまうのです。


 一次通過しているコンテストが、カクヨム経由で応募したコンテストではないようなので、応募した内容がここで終わりの物語だったのか、あるいは、コンテスト落選作品をカクヨムへ投稿している途中で止まっているのか、余計に判断が難しくなっています。

 また、この「カクヨム経由で応募したコンテストではない」という点に関して。カクヨムではキャッチコピーがあるので、私のように、キャッチコピーを見た段階で先入観が生じることもあるでしょう。そうなると、カクヨムで読む場合は、おそらくコンテスト審査時とはかなり印象が違うのだろう、とも考えてしまいました。


 今さらですが、改めて「キャッチコピーは大切だな」と考えさせられる作品でした。私自身は結構いい加減にキャッチコピーをつけてしまうこともあるので、今後は「そのキャッチコピーから読者がどのような先入観を抱くか」も考えねばならない、と思いました。

   

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