第二三話 魔法みたいな攻撃
「また魔物!」
振り返ると、森に生息する大量の魔物たちが、僕たちを取り囲むように集まってきた。
「ちょっと、多いかもしれませんね」
「でも、あたしとロルフ君ならやれるよね?」
「ええ、エルサさんがいる限り、僕は魔物に倒されるわけにはいきませんしね」
「あたしもロルフ君がいる限り、魔物に倒されるわけにはいかない」
盾を構え直し、剣を握る手に力を込めると、エルサさんの前に立つ。
「行きます!」
「うん、ロルフ君の背中は任せて!」
頷き返すと、近寄ってくる魔物たちに向かい駆け出す。
森で見かけた魔物が勢ぞろいだ。
でも、さすがにこの量の魔物がいるのは、精霊樹に近い場所なだけのことはある。
ブラッティウルフが飛びかかってきたのを素早い動きで避け、胴体を剣で薙ぐ。
「きゅううん」
仲間を倒されたことで、ブラッティウルフたちの敵意がこちらに集中した。
「さぁ、僕を襲え! 仲間の仇を討ちたいだろ!」
挑発するように、剣で盾を叩き、大きな音を出した。
「がるぅうう!」
「ロルフ君には触れさせない!」
飛びかかろうとしたブラッティウルフは、エルサさんの放った矢に目を貫かれ、痛みで地面をのたうち回った。
「エルサさん、ミミックウッドの根がきます!」
弓を放ったエルサさんの足元が、盛り上がったのを見て警告を発する。
根が飛び出す瞬間、エルサさんは後ろに向かって跳躍した。
「ロルフ君、枝と根が一気にくるよ!」
「はい! 分かってます!」
周囲の地面が盛り上がったかと思うと、十数本の根が槍のように突き出してくる。
その木の根を剣で払うと、目の前から今度は鋭い枝がたくさん伸びてきた。
その枝に向かい盾を構えて突進する。
枝は盾を貫けず、突進の勢いに負けて逸れていく。
盾で防ぎ切れない箇所に枝が掠り、細かい傷ができるが、気にせず突進を続け、擬態していると思われる木々を剣で薙ぎ払った。
「うおぉおおお! そこだ!」
剣で断ち切られた木の幹からは、真っ赤な樹液が噴き出していた。
「ふぅ、ふぅ、魔物が多い……。予想以上にいる」
ミミックウッドは倒せたものの、別の魔物たちはジリジリと包囲の輪を縮め、距離を詰めてきた。
魔物と距離を取ろうと一歩下がると、エルサさんの背中とぶつかる。
「囲まれてるね」
「ええ、完全に囲まれました」
何体か倒したけど、減った気が全然しないな。
また、増えた気もする。このまま、戦ってたらジリ貧か……。
僕がヴァネッサさんみたいな魔法を使えれば、魔物を薙ぎ払えるんだろうけど……。
魔法、魔法か!
脳裏に一つの考えが思い浮かんだ。
「エルサさん! 地面を破壊スキルで破壊してください!」
「え? 破壊するの?」
「はい! お願いします!」
手袋を取ったエルサさんが、地面に両手を触れると、破壊スキルが発動する。すぐさま破壊された土に触れ、再生スキルは発動された。
再生スキル
LV:25
経験値:199/504
対象物:☆土(分解品)
>土(普通):100%
>土(中品質):94%
>土(高品質):74%
>土(最高品質):44%
>土(伝説品質):34%
数量指定は最大数である300を指定し、普通品質で再構成をする。
「発動しろ!」
再生スキルによる数量指定がされたため、エルサさんの触れた地面の土を起点に、周囲10歩範囲内の土が一斉に破壊され、地面が抉られる。
魔物たちは、急に地面にできた穴に落ち、体勢を崩した。
>土(普通品質)×300の再構成にすべて成功しました。
>土(普通品質)
>資産価値:〇ガルド
再生スキルによって、再構成された土の塊が、穴に落ちた魔物たちに向け次々に降り注ぐ。
重量物である土の塊の落下は、魔物たちにダメージを与えていった。
巻き上がった土煙が止むと、僕たちを包囲しようとしていた魔物たちは半減する。
「すごい! 魔法だよ!」
「岩とかなら、もっとダメージを与えられるかもしれませんけどね。でも、今日はもう経験値上限まで再生したので、次からは痛みが発生するようになりますね」
「でも、危機的な状況は脱したと思うよ」
エルサさんが、残りの半数へ向け矢を放つ。
「ですね。あと、半分になりました!」
剣を構えた僕は、魔物を飲み込んでこぼこになった地面を蹴ると、残る半分の魔物へ駆けた。
戦闘は激戦が続いたが、なんとか最後の1体を斬り伏せる。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」
剣を地面に突き立て、崩れ落ちそうになる身体を支える。
致命傷こそないが、細かい傷はかなり負っていた。
「ロルフ君、疲れたね……」
エルサさんは、すでに膝を突いており、地面に倒れ込みそうな様子だった。
「ええ、ヴァネッサさんの言う通り、いい修行になったと思います」
「栄養剤と回復薬を持ってきておいてよかったね。はい、これロルフ君の分」
よろよろしているエルサさんから、瓶に入ったポーションをもらう。
二人で一緒に蓋を開けると、一気に中身を飲み干した。
「ふぅー。生き返るー! まずいポーションも、限界近くまで戦った後だと、不思議と美味しく感じるね」
「まったくです。効果が出るには少し時間かかりますけど、動けるようになったら、精霊樹を破壊しましょう」
「うん、そうしよっか。あと、魔結晶と素材はどうする?」
ベルンハルトさんはできるだけ、軽装で逃げろって言ってたけど、砦に囚われてる人たちの数を考えると、当座の生活費もけっこういると思うんだよなぁ。
周囲を見回し、魔物の姿がないことを確認する。
魔物もほとんど討伐したし、持って行った方がいいよな。
「回収します。それくらいの時間はあると思うんで。荷物は僕が持ちますんで大丈夫です」
「ううん、半分ずつにしよ。逃げる時、荷物の負担で体力の消費が違ってくるしね」
「分かりました。半分ずつにしましょう」
少し休憩すると、ポーションの効果が出てきて疲労や傷が回復し、動けるようになった。
僕たちは急いで散乱した魔結晶や素材、精霊樹の葉や枝も重量過多にならない程度に、背嚢に詰めていく。
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