第四話 雑用仕事も全力でやる
居室へ入る扉の鍵が締まったままなので、預かっている合い鍵を使い、扉を開ける。
ベルンハルトさんたちは、まだ戻ってない感じか。
ギルドマスターさんとの会談が長引いてるのかな?
「まだ2人とも戻ってきてないね」
「みたいですね。いちおう、夕食までには戻るって言われてましたし、そろそろ戻ってくるのと思いますけど」
「じゃあ、あたしは食事の準備しておくね。ロルフ君は休憩しとく?」
ベルンハルトさんたちが戻ってくるまでに、いろいろとやるべきことを片付けておいた方がいいよね。
「僕は馬たちに餌と水を与えて、運んでもらってある荷物を受け取ってきますね」
「うん、分かった。何か手伝うことあったら遠慮なく呼んで」
「大丈夫ですよ。休養したんで元気は余ってます!」
僕は腕まくりしてみせると、エルサさんが微笑んだ。
「じゃあ、頑張ってね。リズィー、あなたは休憩かしら?」
疲れた様子を見せたリズィーは、エルサさんに抱えられると、綺麗に足を拭いてもらった。
そして、そのまま居室に上がると、テーブルの近くで床に寝そべった。
「リズィー、お疲れ。夕食までゆっくりしてていいよ」
僕はリズィーにそう声をかけると、エルサさんに任せて、やっておいた方がいい仕事を始めた。
えっと、まずは厩舎にいる馬たちに飼い葉をあげないと。
貨物用の荷馬車の後部にまわると扉を開け、中に積まれた飼い葉が丸められた塊を引っ張り出す。
意外と重いんだけど、まぁ、持てないほどじゃない。
地面に降ろした飼い葉の丸い塊を転がしながら、借りている停車場に備え付けられた厩舎に向かう。
厩舎の中には、紅炎の散策号を引いてくれる名馬10頭が繋がれていた。
持ってきた飼い葉の塊を解くと、それぞれの飼い葉桶に、飼い葉を入れていく。
「みんなもお腹空いたろ。いっぱい食べてくれよ」
馬たちの背中を順番にさすってやると、みんな嬉しそうないななきを返してくる。
紅炎の散策号を引く馬たちは、みんな賢く気性の大人しい馬だよな。
長距離移動も疲れた様子を見せずに、走り抜ける健脚揃いの名馬たちだ。
ベルンハルトさんは、僕が自分用に荷馬車を持つ時、移動速度を合わせるために数頭譲ってくれると言ってくれたけど、1頭2000万ガルドするんだよね。この子たち。
とてもじゃないけど、今の僕の稼ぎじゃ、買えない値段なんだけど、ベルンハルトさんは『冒険商人』で白金等級の依頼を受けたり、高級武具を販売したりすれば、すぐにでも持てると言ってくれている。
とりあえず、依頼料は頭割りしてくれるという話だし、武具の販売金の8割は、僕たちの懐に入れていいと言われてるけど、さすがに何千万ガルドを一括購入は厳しいよね。
分割とかで購入できるか、今度聞いておこうっと。
僕たちも、いつまでもベルンハルトさんの馬車に居候ってわけにもいかないし、頑張ってお金も貯めていかないと!
「よーし、飼い葉は終わった。あとは水だ!」
厩舎に備え付けられている水樽から、木桶に水を汲むと、馬たちの水桶に補充をしていった。
馬の世話を終えたところで、次の仕事である購入した物品を受け取るため、馬を1頭だけ連れて、停車場の管理宿舎に向かった。
「すみませーん。『冒険商人』宛の荷物来てますか?」
管理宿舎の奥から、おじいさんが出てくる。
急いで、ベルンハルトさんから預かってる書類を見せた。
「あー、ベルンハルトさんところの坊主か。たんまり来てるぞ。たくさん買い込んだみたいだな」
「ええ、掘り出し物がいっぱいありました」
「そうか、それはよかったな。ベルンハルトさんが買ったものとなると、さぞかし高級品だろうな」
「まぁ、それは内緒ですよ」
「すまねぇ、すまねぇ。人の荷物を詮索しちゃいけねえな」
荷物はベルンハルトさんが冒険者ギルドで購入したクズ魔結晶と、僕らが買い付けた中古の武具と食糧だけどね。
この街にも冒険者はそれなりにいるため、武具屋には中古の武具が山のように置いてあった。
それらを、ベルンハルトさんの知り合いの貴族が私兵に装備させるため、数を欲していると理由を付け、買い集めてきたものだった。
多くは破損品に近い物だが、僕とエルサさんの力を使えば、新品同様に作り直せるので、ミーンズに着くまでに、もう少し高品質の武具を増やすつもりだ。
「5番の倉庫に入れてあるから、持って行ってくれ。終わったら鍵は返してくれよ」
「はーい! 分かりました!」
管理者のおじいさんから、差し出された鍵を受け取ると、管理宿舎の裏手にある倉庫へ向かう。
えっと、5番、5番、5番の倉庫っと。あった! ここだ!
施錠された扉の鍵を開ける。中には、荷馬車に積まれた中古の武具と、クズ魔結晶が入った布袋と、買い込んだ食料品が積まれていた。
購入した品が、ちゃんと全部あるか、確認しないと。
運搬する間に品物がコッソリ抜かれたりすることもあるってベルンハルトさんが言ってたしな。
荷台に積まれた木箱の中身や、袋の中を納品書とにらめっこして調べていく。
よし、問題なし。全部あった。あとは、積み込むだけだ。
馬を繋ぐと、倉庫から出て、紅炎の散策号に戻る。
さて、積み込みして、荷馬車を倉庫に戻したら終わりだ。日も落ちてきてるし、急がないと。
僕は急いで貨物用の荷馬車の後部扉を開け、持ってきた荷物を次々に中に収めていく。
最後の木箱を積み込み終えると、きちんと施錠して、倉庫へ荷馬車を返しに行った。
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