第22話 カレー味のカレー
学校が終わって、未華と当番の決め方を決める会議が始まった。当番内容は、ご飯作り、お弁当作り、土日限定で掃除、洗濯となった。とりあえず思いついた事がこの四つしか思いつかなかったので、しばらくはこれで回すことにした。
時々、当番を無視して二人でご飯を作ったりしたが、お互い当番を忘れることなく、しばらくそんな生活が続いた。
気づけばゴールデンウィーク前日で、帰り支度中に先生がゴールデンウィーク中の諸注意のプリントを配り放課後に突入した。
周りはそれぞれ連休中の予定を話し合っていたりした。未華は今日学校を休んでて、鉋は部活に行ってしまったから、話し相手もいないためそそくさと準備をして教室を出た。
家に帰ると、家の中が子供なら誰しもが好きであろう匂いで充満していた。
「おかえり、今日のご飯はカレーだよ」
玄関の開く音に気づいてリビングから未華がひょっこり顔を出した。
俺は玄関に鞄を置いて、未華を抱きしめた。
「ただいま」
最近、正確に言うと未華が入院した辺りから俺は一人が寂しくなっていた。それは日に日に増して行ってる気がする。
「どうしたの?学校でなんかあったの?」
「なんもないよ。ただ未華にハグしたくなっただけ」
「なんか光希甘えんぼさんになった?」
「なってないよ、未華の事が好きだっていう愛情表現だ」
「本当は寂しかったりして」
意地悪っぽく未華はそう言ってきて、抱いていた手を解いた。
「もう抱きしめてあげないよ。」
「ごめんごめん。それより、着替えてきなよ。」
「そうだな。」
部屋に戻って着替え終えて、リビングのドアを開けると目の前に未華が居た。
「おお、どうした?」
「えっと、カレーを火にかければは完成だから、当番と違くなっちゃうけど付け合せのサラダを一緒に作りたいなって思って、聞きに行こうとしたの」
なるほど。そしたら俺がドアを開けたということか。
「そういうことならいいよ。それはそうと、明日からゴールデンウィークだけどどっか行きたいところとかない?」
二人で席に着いてから未華が答えた
「行きたいところはあんまりないかな。私の心臓のことがあるし、それに一番は光希と一緒にいられればそれでいいから」
「心臓のことは気にしなくてもいいよ。いざとなれば俺が未華を車椅子に乗せて色々見せてあげる」
「車椅子は嫌かな。自分の足で歩ける時は自分で歩いてたい。光希と手を繋いで歩きたいから。」
「そっか。でも行きたいところがあったら行って。そうすれば俺が絶対に連れてってあげるから。約束する」
未華は約束という言葉に反応し、小指だけ立てた手を俺の前に出した。俺はその指に自分の小指を合わせて指切りげんまんをした。
「絶対約束だからね」
「で、結局どこに行こうか。明日ゆっくり考えることにしない?」
「うん、明日色んなの見て、どこ行くか決めよ」
「まだ飯食う時間には早いし何しようか」
「私、レースゲームやりたい」
未華がゲームをやりたいって言うなんて珍しいな。昔は俺がやってるのを横から見てただけどったのに。
もしかして俺が気づかなかっただけで未華もやりたかったのかもな。
「いいよ。最近は全然やってないから動くかわかんないけど持ってくるよ。」
しまって置いたゲーム機をリビングにあるテレビに繋ぎ電源をつけると、昔見た映像か変わらず流れた
「動いた!」
ゲームがちゃんと起動したことにテンションが上がった未華は早く早くと急かしてきた
「もうそのコントローラーで動かせるぞ」
「どうやるの?」
未華に一連の操作の流れを教えて、一緒にゲームをスタートさせた。
「箱とったらキノコでたけどどうするの?」
「それ使うと、瞬間的にスピードが速くなる。さっき教えたボタン押してみな」
一度止まってCPUに抜かされていくなか、未華がどのボタンだったか思い出そうとしてたので教えた。
すると、「おぉぉ!」と嬉しそうな声をだして、はしゃいだ。
なんかちょっと子供っぽいな、と思い未華の顔を微笑ましく見てた
「光希、早く動かさないと一周差になっちゃうよ」
すっかりゲームに夢中になった未華はテレビ画面に釘付けになりながら俺に教えてくれた
「俺にはこれくらいのハンデがちょうどいいよ。昔やってきたからな、経験の差を見せてやる」
未華の可愛い姿を見れて元気になり、未華の初レースで本気を出し、一周差ありそうな距離を一気に詰めて見事に一位をとった。
その後も未華と何レースがやっていき、未華も操作に慣れてきたのか、
最初は最下位だったが徐々に順位を上げて行った。
「私上達したでしょ?」
「そうだね、でも俺にはだまだかな」
「えぇ、いい線いってると思うんだけどなぁ」
時計を見ると1時間半時間が経過していた。
「そろそろサラダ作るか」
「もうこんな時間なの、早いね。じゃあ作り始めよっか」
すぐにゲームをやめてサラダ作り、カレーと一緒にテーブルに置いて食べた。
「前食べた時も思ったけど俺の思ってるカレーの味だ」
前はただ美味しいとしか言ってなかった気がしたからほかの感想を考えたが率直に出できた感想がそれしか出てこなかった。自分の思うカレーそのものの味がした。人によって甘いカレーや辛いカレーがあるけど、未華のはそのどちらでもなく、想像するような味だった。
「なにそれ、カレーを作ったんだから、カレーの味に決まってるじゃん」
「なんか人によって変わってくるじゃん、でも未華のはカレーを食べてない時に想像するカレーの味そのもの、って感じ。俺が玄関に入って香ってきたカレーの匂いで想像した味が今のこのカレー」
自分でも言いたいことが上手く伝わってないことがわかったがそうとしか言えなかった
「ふーん。でも、大体の人が市販のルーを使うから変わんないと思うけどなぁ」
「そうなんだろうけど、小学校で作ったカレーは今日使ってたルーと同じだった気がするんだ。だけどちょっと味が甘かった気がする」
「甘口のルーだったとか?今日使ったルーは中辛だけど。」
「そうかもしれないな。小学校で使ったルーは多分甘口だったと思うから。」
うんうん、と未華が頷いて引き続きカレーを食べていき、残ったカレーは明日の朝食べることにした。
夜の二十三時ごろ未華とベットの上でどこに行こうかスマホで検索をしていた。明日の予定だったがお互い眠れなかったから、眠気が来るまで調べることにした。
「ここいいと思う。最近ライオンの赤ちゃんが生まれてフワッフワで可愛いいみたいだよ」
「フワッフワのライオンか、見てみたいな。でもゴールデンウィークとなると客も多いし早めに行かないと後からだと後ろの方でライオン見ることになりそうだし、大変じゃないか」
「ライオンだけ見て、しばらく休憩してから動物園回れば問題なくない?それに園内に遊園地もあるみたいだし、遊べて動物も見れて一石二鳥だよ」
「帰りまで体力持つのか心配」
「歩けなかったら、光希がお姫様抱っこしてってよ」
「未華がそれでいいならいいけど、明日行くには急すぎるから、他の場所も検討してからにしないか?」
「うん、私眠くなってきたからそろそろ寝るね」
「じゃあ俺も寝ようかな」
布団をかけて、向かい合って寝転がり、未華の顔がすごく近い。一緒に寝てそろそろ3週間が経つが未だ心臓がドキドキする。
「光希も眠くなったの?」
「眠くはないけど、未華の寝顔見たら俺も眠くなるかなって」
「私の寝顔を見ても眠くならないと思うけど、まぁいっか。」
おやすみと言って背を向けて眠ってしまった。これじゃ未華の寝顔が見れないじゃないか。でも、後ろ姿でもいいかもな。
何十分か、未華の背中をぼーっと眺めてるとウトウトし始め、気づけば夢の中だった。
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