第21話 人生の友達
両手を繋ぎベットの上で未華と目を合わせ向かい合っていた。
「ごめんね、まだ夕方の事が怖くて。ちょっとだけこのままで居させて。」
夕方の怖かった事とは多分、歩けなくなるかもしれないという話のことだろう。身体の疲れで足がもつれて上手く動かなくなった。バス停で慰めたがやっぱりまだ怖いのだろう。慰めるのが下手くそな俺じゃ未華の抱える恐怖を拭いきることはできないのかもしれない。
「何時間でもそうしてていいよ。怖がらなくて大丈夫。歩けなくなんてならない。心配しなくていい。」
俺のかける言葉に頷いて、安心したように眠った。
握っていた手は、するりと解け未華の手は俺の服の裾を強く握った。
離れないで。寝言で未華はそう言っていた。
寝言に対して俺は、離れないよと、頭を撫でた。
「おわっ…」
翌朝目を覚ますと、目の前に未華の顔があった。
びっくりして後ろに少し体を引くと、朝まで握っていたらしい服の裾の指が解けた。
すると、未華の手が動き目を擦った。
「おはよう」
「おはよう」
お互い時計を見ると、いつもより30分遅い起床で未華は慌ただしく起き上がり、自分の部屋に入っていった。
制服に着替えて洗面所に向かうと、周りに水が飛び散っていた。
顔を洗い、少し周りを拭いて、リビングに行くと、未華は米を研いでいた。
「ごめんね、いつもより遅く起きたから洗面器の周りに水が飛んでたでしょ」
「大丈夫だよ。さっき拭いたから」
「ありがとう。あんまり急がなくてもいいんだけど、いつもより遅く起きて焦っちゃって、慌ただしくなっちゃって」
台所に向かい、俺がやると言って米研ぎを変わる
「そんなにいつも、やってくれなくても大丈夫だからね。あんまり無理しないで、たまには俺にも家事をやらせてよ」
すると、動きを止めて未華が少し考え、すぐに動き始めた
「じゃあ今度当番でも決めてみる?私が掃除と料理担当とか」
「そうしてみるか。」
朝ごはんを作り終えて、席に着いた
「当番って言っても、どういうふうに決めるんだ?」
「あと、何を当番にするかも考えないとね」
もぐもぐと食べ進めながら案を出していき、大体のことは決まってきた。当番表は未華が作ってくれるらしいから任せることにした
二人で行ってきますを言い、手を繋いで学校に向かった。
教室に入るくといつもの朝のとうり鉋がいて、俺たちに気づいた
「おはよう。荒良々木さん、昨日は無理させちゃってごめんね」
「こっちこそ、心配させちゃってごめんね。また今度誘ってくれたら嬉しいな」
「また部活がなかったら誘うよ。そんときは光希に奢ってもらおうぜ」
ニヤリと俺の方を見てくる
「奢らないからな。てかなんで奢ってくれると思ったんだよ」
「荒良々木さんが心配じゃないのか?それに男だったら彼女にケーキぐらい奢ってやれよ」
「未華のはともかくお前にはなんで奢らないといけないんだよ」
「友達だろ?」
友達だからか。いままで友達を多く持ったことの無い俺からすると魔法の言葉に思えた
「はぁ、わかったよ。でも今回だけだからな」
「まじ?よっしゃぁ」
鉋は冗談で言ったんだろうけど、俺は押しに弱いんだろうな。それに冗談ですら鵜呑みにするタイプだ。
金はまぁ、何とかなるからいいか
「お金大丈夫なの?」
コソッと未華が聞いてきたが、大丈夫といっておいた。
チャイムがなってそれぞれ席に着いて、担任の話を聞き流して、一限目が始まった。
古文の授業でおじいちゃんと呼ばれるぐらいの見た目の先生が担当で、授業スピードがゆったりとした感じで、ウトウトし始めた。
周りを見てみると何人か寝てる人もいた。未華も寝てた。当然鉋も。周りが寝てるなら俺も寝ても問題ないだろうと思い目を閉じるとすぐに眠れた。
気づくと一限目の終わりのチャイムがなっていて、すぐに起立し礼をした。
「やっぱり林竹先生の授業は相変わらず眠くなるね」
言いながらまだ眠い目を擦っていた
「去年も何回も寝てたよな」
「そんなこと言ったら光希だってそうでしょ」
「俺は寝ててもノートはちゃんと取ってたよ」
去年何度も未華にノートを見せてとせがまれてたことを思い出した
「わ、私だって今日はちゃんとノート書いたよ」
そう言って自分の机からノートを出して見せてきた
ヒョロっとした弱々しい文字で書かれていた
「こんなヒョロヒョロで読めるのかよ」
「大丈夫だよ。頑張って読むから」
読むことに頑張りが必要なのは問題だろと内心でつぶやくと鉋も俺の方にきた
「なぁ、光希古文のノート貸してくない?」
鉋はノートすらとってないのか
「はぁ、わかったよ。いい加減ノートはとれよ」
「はは、難しいこと言うじゃん、光希だって寝てたくせに」
「お前よりは寝てないし、ノートだってちゃんと書いてるよ。そんなこと言ってると次貸さないぞ」
「わりぃわりぃ、それは勘弁だし素直に礼を言っておくよ。ありがとう」
たく、からかいやがって。
「鉋君、なんだかんだ言って光希のこと頼りにしてるんだね」
「そうだな。前までの俺はそんなことすらなかったからな」
少し中学校までの自分を思い出した。
クラスに浮いている訳では無いが、話しかけずらくて誰にも話しかけられずにいた自分。話しかけられてもキョドってしまい上手く返事が返せない自分。それでも俺に付き合ってくれるやつはいたがすぐに別の友達のところに行ってしまった奴らの顔を思い出す。
「高校も中学までと変わらないと思ってたのに、鉋みたいな物好きが俺の話し相手になってくれてるだけでもありがたいのかもしれないな」
「なんでそんなに、後ろ向きに言うの?鉋君だって光希と話したいから話に行ってるんだと思うよ」
「そうかな?」
「そうだよ。じゃないと毎朝光希ところになんて来ないでしょ?」
確かにあいつは俺と出会ってからいつも朝は俺と話してくれてる気がする。
「鉋君は、光希の立派な友達だと思うよ。だから光希も鉋君の事は友達だと思った方がいいよ。それ以上に親友でもいいかも」
さすがにそれは言い過ぎだろ。でも…
「鉋は俺の中で、一番誇れる友達だから。友達だとは思ってるよ」
「ふーん。そっか、それなら良かった。」
話に一段落が着くと二限目のチャイムがなり、ワチャワチャと授業の準備をする人や席に着く人で少し賑わい、全員席に着いたタイミングで次の教科の先生がきた
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